異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#174 Shelling Ford 7 (How to use?)

薙刀の女性は階段の前で哲郎に向かってその切先を向けている。その表情はまるで自分の勝利を確信しているようだ。

 

「どうした? さっさと掛かって来いよ。」

(……………今度もチャンスは一回しか無い。

彩奈さんを信じて全部を掛ける!!!)

 

レーナの時と同様に女性の体勢が屈んだ瞬間を狙って哲郎は一直線に駆け出した。しかし狙いは女性でも薙刀でも無い。

 

(………ガキにしちゃ速ェ!!!

だが一直線に来るならこんな簡単な事はねぇ!!!)

「!!!」

 

一直線に向かって行く哲郎に目掛けて薙刀の刃が迫って来る。女性は刃が完全に哲郎の喉を捉えたという確信があった。

 

 

「今だ!!!!」

ズザッ!!! 「!!?」

 

薙刀の刃が自分の喉を捉える瞬間、哲郎は体勢を屈めて地面を滑り、薙刀の刃を回避した。

再び女性の背後に回り込む事に成功した。

 

「それをやると思ったぜ!!!!」

 

女性は薙刀の刃を前方に出し切った訳ではなかった。背中の筋肉を駆使して振り返り、後方の哲郎に薙刀を繰り出す。

今度こそ 哲郎の背中を捉えた と、女性はそう確信した。

 

「………僕もそれをやると思ってましたよ。

彩奈さん!!!!」 「!?」

 

哲郎が声を出すと、階段の陰から彩奈が姿を現し、哲郎の手を触った(・・・)

 

 

 

***

 

 

哲郎が彩奈が二階に上がって再び下に向かうふり(・・)をするその短い時間である作戦を立て、それを彩奈に伝えた。

 

哲郎の立てた作戦は、合図をしたら彩奈が飛び出して哲郎に触れ、薙刀の女性の背後へ《転送》し、彼女の首を締め上げて落とす という物だ。

 

 

 

***

 

 

「お、お前はさっきの!!!」

 

新入りの信者が再び姿を見せて哲郎(侵入者)の手に触れた。その行動にどんな意味があるか考えるより前に彼女の前方で優先して意識しなければならない事が起こった。

 

ドスッ!! 「!!? なっ!!!?」

 

女性の耳に薙刀の刃が刺さる音が聞こえた。

しかしそれは人体に刺さる時のそれとは全く異なっており、案の定 薙刀の刃が刺さったのは哲郎の背中ではなく廊下の突き当たりの壁だった。

 

女性は侵入者の少年がどこに消えたのか、何故新入りの信者が再び現れたのか、突き刺さった薙刀をどうするべきか など一瞬の内に様々な思考に取り憑かれた。しかし次の瞬間その全てを放棄しなければならない事が起こる。

 

ガシッ!!! 「!!!?」

(よしっ!! 今度は決まった!!!)

 

彩奈の《転送》は成功した。哲郎は彩奈に自分自身を転送させ、女性の背後に回り込んだ。そして両腕を彼女の首に回し、固定して締め上げた。

 

「……………!!!! こ、このガキ………………!!!!!」

(この人はゼースさんやノアさんみたいに魔法で打開する方法は無い!!!

このまま一気に行く!!!!)

 

豊富な筋肉に恵まれなかった哲郎の肉体でも女性の細い首の中にある血管を圧迫できない程では無かった。

首を絞めている間、女性は哲郎の腕を引き剥がそうとしたり壁に刺さった薙刀を抜こうとしたり奮闘したが少しづつ意識が遠のいていき、そしてその腕はだらりと垂れた。

 

「…………ハァハァ…………………

か、勝った……………………!!!」

 

哲郎が腕を解くと女性は膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れ伏した。

 

「て、哲郎さん、 これって殺しちゃったんですか…………!?」

「そんなまさか。首を絞めて気を失わせただけですよ。それより彩奈さん、あなたの能力(転送)のおかげで難を逃れることが出来ました。ありがとうございます。」

「あ、は、はい。」

 

彩奈の神妙な顔付きが少しだけ緩んだ。

咄嗟の事とはいえ自分の能力に少しも自信が持てなかった彼女が人の勝利に貢献出来たのだ。

 

「………で、問題はこの人をどうするかだな…………。」

 

警戒しながら女性の首に触ると、一定の振動が指先に伝わってくる。自分の存在を知られた彼女をこのまま野放しにしておく事は出来ない。

 

「彩奈さん、何か 紐とか縛る物を持ってませんか?」

「紐? 一階に行けば何かしらあると思いますけど…………」

「それなら急いで下さい。

この人を縛ったら、彩奈さんの《転送》でエクスさんの部屋に送り届けたいので。」

「わ、分かりました!」

 

彩奈は踵を返して階段を下りていく。その間に女性が意識を取り戻さないでくれ と願いながら彩奈から渡してもらった水晶に向かって声を出す。

 

「ノアさん、今言った通りです。ですから、」

『言われずとも分かっている。

そいつを調べて素性や教祖との関係を洗い出して欲しいんだろ?』

「そうです。

僕はこれからマリナさんの部屋に入って例のリストがあるか探しますから。」

『分かった。それで、壊された水晶はどうすれば良い?』

「ギルドの人にくっ付けた物がありますのでそれを何とか回収します。」

『そうか。

じゃあ鍵はどうする?また針金で開けるのか?』

「それも大丈夫です。良い方法を思いつきましたから。」

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