異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#176 Shelling Ford 9 (Disturbance)

哲郎が今持っているこの水晶は彩奈から借りた物であり、彩奈の周囲で起きていることは今 ノアには分からないはずだが、その事を質問している時間は無かった。

哲郎の耳にも扉の向こうから複数の足音が近付いてくるのが聞こえて来る。

 

「!」

哲郎はズボンのポケットの中に入っていたノアから借りたある物(・・・)の存在を思い出し、そして咄嗟に一つの作戦を立てた。

 

『とにかくその場を動け!! 今度見つかったら一巻の終わりだぞ!!!』

「いえ。助かるかもしれません。

良い作戦を思いつきました。 一か八かやってみます。」『!?』

 

 

***

 

 

「どうやら今の震動は地震とは違うようだ!!

恐らく、二階で何かがあったんだ!!二階に何か異常か無いかくまなく探せ!!!」

 

一階から上がってきたと思われるギルドの職員達がこぞって二階へと上がり、そして部屋を虱潰しに探している。

 

哲郎が今いるマリナの部屋は二階の突き当たりにある為定石通りに行けば彼らがここに入ってくるのは少し先になるはずである。しめた と思った哲郎はたんすの奥にあった水晶を元の角度に戻した。

すると後ろにあった絵が元の角度へと回転してがっちりとはまった。しかも幸運な事に戻る際にはあの震動は起こらなかった。

 

更に素早い手付きでリストを探す為に引き出しから出した荷物を元通りに戻し、引き出しを入れて部屋を荒らした痕跡を完全に消す。

 

「!」

 

部屋を元通りにした直後、扉からギルドの男を中心にした話し声が聞こえて来た。

 

「残るはこの部屋だけです。ここの幹部のマリナさんの部屋です。」

「うむ。幹部の部屋か。どうも匂うな。

良いか。俺が合図したら一斉に飛び込むぞ。」

(よし! 行くぞ!!)

 

マリナの部屋の窓ははめ殺しになっていて開かない。つまり、ギルドの職員達からの視点ではこの部屋は完全に袋小路になっている。哲郎はそれを逆手に取って作戦を立てたのだ。

 

(そうらっ!!!)

バリンッ!!! 『!!!!』

 

哲郎は武器になると思って庭で拾っておいた石を投げて窓を割った。そしてすかさずある物(・・・)を胸に着けて素早く扉の側に移動する。

 

「い、今の音はまさか!!」

「何をしている急げ!! 早く突入するぞ!!!」

 

信者の誰かから貰ったと思われる鍵を使って入ってきた職員達の視線は真っ先に目の前の割れた窓に集中した。

 

「ま、窓が!! まさか…………」

「逃げられたんだ!! ここに潜んでいたけど追い詰められて、窓を破って逃げたんだ!!!」

「くそう!!!」

(…………よし!! ひとまずやり過ごせた!!!)

 

『窓を破って逃げた』と発言したのは哲郎だ。

ノアから貰っていた かつてマキムに成りすました変装の道具を使ってギルドの職員に姿を変えたのだ。

 

 

 

***

 

 

『良い作戦!? なんだそれは!?』

「ノアさんから貰ったあれを使うんですよ。」

『!? まさか変装する気か!!?』

「はい。それと同時に水晶の数を元に戻す方法も思いつきました!!!」

 

 

***

 

 

「外部班に連絡しろ!! 何者かが外に逃げた!!!

警備を固めて、絶対に逃がすな!!!!」

『はっ!!!!』

 

ギルドの男が指示を飛ばすために背を向けたその一瞬を狙って哲郎は彼の背中に付いた水晶を回収した。これで再び水晶の数が元に戻った。

 

ギルドの職員達が外へと出て行くのを最後列から付いて行くふりをしてさりげなく外へ出る。

彼らが二階から降りて行ったのを見計らって、胸に付けた変装道具を取り、哲郎の姿に戻って再び通気口に身を隠す。

 

全てが上手くいった と心の中で喝采を上げて再びノアへと繋ぐ。

 

「ノアさんやりましたよ!!

ギルドの人達をやり過ごして水晶も回収出来ました!! これで元通りですよ!!!」

『落ち着け。お前の気持ちは分かる。

だがこれは最善策とは言い難いぞ。今ので奴らの中に外部犯の可能性も出てきた。一階で起きてる事件の犯人を更に探しにくくなったぞ。』

「………はい。それはちゃんと分かってます。

ギルドの人達から情報を集める事はもう出来ないでしょうね。」

『それで、その部屋には本当にリストは無かったんだな?隅々まで探したんだろ。』

「はい。一応 床下とか天井とかに隠してるかもと思いましたが、そんな物はありませんでした。」

『…………そうか。

よし。リストは後回しだ。まずは一階の事を片付けて、それからまた探す。

それからそいつの動機次第では俺達に協力させる事も出来るかもしれない。積極的に近付いて行け。』

「分かりました。

ちなみに《転生者》の事は話した方が良いでしょうか?」

『そいつが次第だな。

どこまで知っているかによってお前の判断で決めろ。』

「分かりました!!」

 

哲郎は再び一階に戻る為に階段を目指す。

行きとは違ってレオルの協力を頼めないのが少しだけ心細かった。

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