異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#178 Shelling Ford 11 (Things to do)

『ギルドの人に事件の事を聞いて欲しい。』と彩奈に伝えると、水晶から彼女の返事の代わりに『コツン』と軽い音が一回鳴った。

今の哲郎にとって最優先すべきはこの一階で起こった事件の解決だ。リストはマリナの部屋には無く、更に彼女の裏の顔を仄めかすような怪しい要素が出てきただけだった。

 

ギルドの職員達は十中八九マリナに『貴女の部屋に何者かが潜んでいた』と報告した筈であり、それを彼女は警戒している筈である。

今の哲郎が再び彼女の部屋に入る事は自殺行為はおろかこの屋敷に居る信者の少女達や偲ぶ会の参列者達の身を危険に晒しかねない行動なのだ。

 

(今ここに居る人の中で僕に協力してくれるのは彩奈さんとレオルさん、エティさん。そして、動機次第ではこの事件の犯人にも協力をお願いできる可能性がある。

今の僕に必要なのは《動きやすさ》だ。協力してくれる人を集めてこの屋敷で動きやすくする。リストを探すのはその後だ。)

 

とは言ったもののこの《動きやすさ》には一つ問題がある。それはレオルとエティが彩奈の存在を知らない事だ。二人にとって彩奈は《リネン》という信者の少女であり、全く気にもしていないだろう。それに今の彩奈はアリナと二人一組の行動を義務付けられている。彩奈の口からそれが打ち明けられる事は考えられない。

 

(………こんな事なら最初に接触した時に彩奈さんの事を話しとけば良かったな…………。

まぁ現状把握はもう十分か。さて………………)

 

哲郎は水晶を取り出して通信をかける。

 

『………テツロウか! 俺だ。 エクスだ。

俺が席を開けている間に随分な騒ぎがあったようだな。』

「エクスさん。 ええ。騒ぎなら既に解決しました。 エクスさんは今までどちらに?」

『ミゲルと一緒に家の用事を片付けていた。

ちなみにだが、ノアなら俺が戻ってきたのと入れ違いに帰って行った。』

「そうですか 分かりました。

それで、頼まれていた卒業者のリストなんですが、彼女の部屋にはありませんでした。

代わりに見つかったのは絵の裏に隠してあった大きな穴だけで………」

『それも全部あいつから聞いた。

恐らくそれは亜空間を作る魔法だろう。マリナという奴は魔法を使って地下室に錠をかける事をやってのけたのだから、それくらいはおかしくない。』

「はい。ちなみに、その亜空間ってどれくらいの広さになるんですか?」

『それは使う者の魔力に依存している。

だがあいつならそれなりの広さの穴は作れるだろう。例えば、死体(・・)を隠せる位の穴は簡単にな。』

「!!!

…………つまりエクスさんは、あの遺体は彼女の部屋の穴に隠してあった と考えているんですか?」

『いや、そうは言ってない。

仮に犯人が前にその屋敷を家捜しして偶然穴に隠してあった遺体を見つけたとして、今日 犯行時刻に遺体をあの部屋から空き部屋に運ぶ余裕は無かった筈だ。

第一、その穴を出す時には物凄い音がしたんだろう?今日お前の前にそれが開けられたのなら、屋敷に居た全員がその音を聞いている筈だ。』

「………………」

 

哲郎はエクスの話を聞きながら考えを巡らせる。

犯行が可能な参列者達が人目を盗んで二階へ上がる余裕があるとは考えにくいし、そもそも遺体があの中に隠してあったという証拠はどこにも無いのだ。

 

『とにかくだ、これからはもっと慎重に事に当たれ。次また誰かに見つかったらそれこそ言い逃れることは出来ないぞ。この部屋が縛られた女で一杯になるのはごめんだ。』

「そ、それは すみません。」

 

ほとんど完全に忘れていたが、今 エクスの部屋には縛り上げられて気を失った女性が居るのだ。

 

「僕は優先して事件の解決に専念します。

そうすればこの屋敷のどこかにある筈のリストを探しやすくなると思いますから。」

『ああ。 だが部屋に無かったとなると考えられるのはその隠し穴に遺体ではなくリストが隠してある可能性、そしてもう一つ幹部のあいつがプライバシーを守れる所、』

「…………教祖が居る地下室しか無い という訳ですか。」

『ああ。もし地下室にあるとなったらかなり厄介だぞ。そこには彩奈の《転送》で行く事はできても、帰る方法が無いからな。』

「僕も同じ事を考えましたよ。だからあそこを探すのは最後にするつもりです。」

『そうだが、リストさえ手に入ればこっちの物だ。そこに書いてある人間とギルドが捜索願いを出している行方不明者が一致すれば あいつの悪巧みが白日の元だからな。』

「はい。そしてもちろん、アリナさんを連れ戻す事も忘れていません。

サラさんとセリナさんに伝えて下さい。

『僕が絶対に妹さんを連れ戻して来る』とね。」

『分かった。だが無茶はするな。

お前には《鬼ヶ帝国》に行くという国王直々の依頼が控えてるんだからな。』

「もちろんそれも忘れてませんよ。」

 

必ず自分の役目を果たす とエクスに誓い、哲郎は通話を切った。

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