異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#179 Shelling Ford 12 (Guilt & Responsibility 2)

この宗教団体 ジェイルフィローネにはまず間違いなく裏がある。そしてその鍵を握っているのは幹部であるマリナ、そして何故か地下室で生活している教祖 マリアージュの筈だ。

そしてもう一つ、哲郎は心の中で直感していた。今一階で起きている事件がこの宗教団体と関係しているなら、その謎を解き明かす事が即ちここの裏を暴く事に繋がるのだ。

 

(………彩奈さんからはまだ連絡が来ない。

まだ行けてないのか?それとも断られちゃったのか…………?)

「!」

 

手に持った水晶が彩奈とは違う通信を拾った。

エクスから追加の連絡が来たのだ。

 

「はい。もしもし。」

『テツロウか。たった今アヤナがこっちに送ってきた女の身柄を魔力に掛けて調べてみた。

そうしたら興味深い事が分かったぞ。』

「興味深い事? 何ですかそれは。」

『こいつの記憶の中に、幹部のマリナという奴から支持を受けていた痕跡があった。『二階を見張り、侵入者が居たら迅速に対処しろ』とな。』

「やっぱり彼女が……………

それで、他に何か分かった事はありますか?」

『別にお前が期待してるような物は出てこなかった。そのマリナについてもあいつの本性が分かるような物は何一つな。』

「………つまり、あの人はただマリナさんに命令されて動いていたという訳ですか?」

『多分な。あとこいつの名前や素性も分かったが、聞いておくか?』

「はい。念の為に聞いておきます。」

 

 

薙刀の女の名前は《リーチェ・ピークチャース》、そしてジェイルフィローネでの名前は《フェルナ》という。

彼女は元々孤児で兄との二人暮しだったがある日 その兄が冤罪に問われてしまい、途方に暮れていた所をジェイルフィローネに拾われた のだという。

 

『手短に言うとこんな所だ。 何か質問はあるか?』

「いえ何も。ちなみに━━━━

!」

 

哲郎は話を途中で切った。遠くの方でぞろぞろと足音が聞こえてきたからだ。

 

『? おいどうした?』

「すみません。こっちに動きがありそうです。

また折を見て連絡します。」

 

急ぎ目に通信を切り、通気口を這って大広間へと進んで行く。自分の勘が正しければ大広間に皆が集められているだろうと思ったからだ。

 

 

 

***

 

 

 

(………思った通りだ。)

 

哲郎の予想通り、大広間には信者の少女達、偲ぶ会の参列者達、そしてギルドの職員のほとんどが集められていた。

 

「……一体いつまで待たせるんだ!」

「あの地震が何か関係してるんですか?」

「早く説明してもらいたいですね。」

 

長時間 部屋での待機を命じられ、この大広間でも膠着状態が続き、全員 気が立っている。

ゴスタフ、アリネ、そしてロベルトが口々にギルドの職員達に問い詰める。そして職員の一人がようやく口を開いた。

 

「皆さん落ち着いて聞いて下さい。

まず、先程の震動に関してですが、震源と思われる部屋には魔素が大量に付着していました。つまり、あれは何者かが魔法を使って引き起こした物と考えられます。」

「………………。」

 

男の言う大量に出てきた魔素というのは、哲郎がたんすの中にあった水晶を弄って絵の裏に隠したあった穴が出てきた時に魔法が発動しており、それが部屋に付いたのだろう。

 

「そして、その部屋に我々が突入しようとした瞬間、窓が破られ中には誰もいませんでした。

これについては二つの可能性が考えられます。

一つは、部屋に潜んでいた貴方達以外の誰かが窓を破って逃走した可能性。そしてもう一つは同じく部屋に潜んでいた誰かが石などを投げて窓を破って逃げたと見せかけて我々の捜索をやり過ごした可能性 この二つです。」

 

男の話を聞けば聞くほど哲郎の胸に何とも言えない罪悪感が刻まれていく。ギルドの捜査を混乱させているのは、間違いなく自分自身だからだ。

 

「だったら、この事件の犯人もそいつに決まってますよ!! 僕達には動機が無いんですから!!」

「いえ。結論を出すのは早すぎますよ。

確かにこの屋敷に侵入者が居たのは明白ですが、貴方達の潔白が証明された訳ではありません。もちろん、その侵入者が犯人である可能性も大いにありますが、その侵入者はまだこの屋敷に居る可能性が極めて高いです。」 「!?」

 

男の言葉で 盛んに抗議していたアギジャスの顔が更に険しくなる。

 

「当時、屋敷の周辺にはくまなく捜査員を配置して警備に当たらせていました。彼等の報告では、この屋敷から出た者は誰も居なかったと。

つまり、侵入者はまだこの屋敷のどこかに息を潜めていて、我々の操作を掻い潜ろうとしている訳です!!!」

「………………!!!!」

 

哲郎の罪悪感は最早 限界を迎えようとしていた。もし『アリナを連れ戻す』という責任感が無ければ今すぐに名乗り出てもおかしくはない。

ギルドの男が言った通り、侵入者である自分はこの屋敷の通気口に身を潜めているのだから。

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