異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#181 Shelling Ford 14 (Fragrance and Hair)

(………手掛かり自体は集まってるんだけど、それを繋ぎ合わせる事はまだ出来ないんだよな……。

それもこれもここの事件を解かないとどうにも…………

? あれっ?!)

 

哲郎はそこまで考えて目の前の大広間の異変に気付いた。偲ぶ会の当事者であるセリナの姿が見当たらないのだ。

 

「エクスさん! エクスさん!」

『何回も言わなくとも聞こえている。どうかしたのか?』

「あの、セインさんの娘のセイナさん どこに行ったか知りませんか!?」

『ん? あぁそうか。お前は上で派手にやってたから知らないのか。』 「?」

 

 

 

***

 

 

エクスの話ではセイナは遺体を見て気分を悪くしてしまい、事件発覚からずっと医務室で横になっていたのだという。そして哲郎が二階でリーチェと戦っていた時にその事が説明されたのだ。

 

「なるほど そうだったんですね。

安心しました。 ちなみに、セリナさんのアリバイは分かりますか? ギルドの人の声をずっと聞いてなかったので。」

『あいつにもちゃんとしたアリバイがある。

大広間でずっと信者たちと午後の部の準備をやっていたんだ。あいつも潔白(シロ)だ。』

「………………。」

 

セイナの無事と身の潔白が証明されて分かったのは、状況は全く変わらず 通気口を出れない事で容疑を逃れる事が出来る五人の中に犯人がいる可能性が高いという事だ。

 

『……聞きたい事は全部か?』

「はい。」

『そうか。 分かっているだろうが、勝ちを急ぐなよ。何度も言うようだが 次見つかったら今度こそ終わるかもしれないからな。』

「もちろんです。これからは慎重に━━━━

 

!」

 

哲郎はエクスとの通話から視線を外した。ギルドの男が口を開いたからだ。

 

「………では、今一度皆さんの事件当時の状況をお聞きしたいと思います。

まずはレオルさん。先程もお聞きしましたが、事件当時はずっと部屋で通話していて真っ先に駆けつけた。それで間違いありませんね?」

 

レオルは首を一回縦に振った。

 

「……その時何か気付いたことはありませんか?

例えば、何かの音を聞いたとか、変な匂いがしたとか。」

「これといって無い。強いて言うならすぐにギルドに連絡を取ったという事くらいだな。

死体を見るのは初めてじゃ無いからな。」

「…………」

 

ギルドの男は一瞬 顔を顰めたが、すぐに二番目に現場に来たアギジャスに話を振る。

 

「アギジャスさん、あなたは?」

マリナ(この人)との話が終わった後はずっと部屋で本を読んでいました。それを証明出来る人は居ないから、アリバイは無いという事になるんでしょうね。」

「まぁそうなります。ちなみにその時気付いた事は?」

「……そういえば、妙な匂いがしましたね。」

「匂い?血の匂いでは無く?」

「はい。もちろん血の匂いも沢山したんですが、それに混じって酸っぱいような匂いがしました。まるで毒々しい花のような。」

「ああ!それなら私も感じたぞ!」

 

二人の話に割って入る形でレオーネが手を挙げた。彼は獣人族であり、鼻が利くのだ。

 

「レオーネさん、あなたも?

それはここの庭に咲いていた花の匂いですか?」

「いや違う。もっと強い、それこそ血にも負けないような強烈な匂いだ。」

「………… 分かりました。匂いがしたんですね?

また詳しくお聞きします。

では次に 三番目に入ったシーフェルさん、あなたは?」

 

哲郎はシーフェルが犯人である可能性はかなり低いと考えている。自分が今ここに居るのは彼からの招待状ゆえだからだ。

 

「私も彼女との話の後は部屋で一人で午後の部で友人代表のスピーチの原稿の仕上げをしていた。」

「なるほど。ですが、その原稿の仕上げを前もってやっておけば、話の後は自由に行動できますよね?」

「………確かにそうかもしれない。

ちなみにだが、匂いとか そういった類の物には気付かなかった。」

 

シーフェルは匂いに気付かなかったというが、アギジャスとレオーネが口を揃えて言っているのだがら事実なのだろう。

 

「レオーネさん、先程も伺いましたが、事件当時は何を?」

「マリナと話した後は昼寝していた。昨日は遅くまで起きてたからな。 あぁ そう言えば、その前にトイレに行ったな。」

「トイレに? その時廊下に人は?」

「いや、誰も居なかったよ。その後は寝入ってしまって、悲鳴に叩き起されてあの部屋に飛び込んだって訳だ。」

(僕と同じだな……………)

 

「仮眠を取っていた と。

その時、匂いの他に気付いた事はありませんか?」

「いや。匂い以外には何も。

仮にあったとしても死体やら匂いやらに気を取られてそれどころじゃ無かった。」

「なるほど………………」

 

ここまでで初めの方に現場に入った四人の聴取が終わった。哲郎の耳には今のところおかしい部分は無いように聞こえた。

そして同時に悔やむ。こんな事ならあの時眠ったりしなければ良かった と。

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