異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#183 Shelling Ford 16 (CHECKMATE)

哲郎は自分の滑らせた口をごまかすのに少しだけ慌てていたが、それも直ぐに終わる事になる。ギルドの男がアリネに質問を始めたからだ。

 

「エクスさん、一旦切ります。

何かあったらまた連絡しますので。」

 

水晶の向こうから小さく自分を不審がる声が聞こえたが、哲郎は構わずに通話を切った。

 

「…では次にアリネさん。あなたはどうですか?」

「私もロベルトさんと同じ様なものですよ。

部屋で作業の仕上げをしていて、あの部屋から悲鳴が聞こえたので急いで駆けつけたんです。

まぁ 私も歳ですから遅れましたがね。」

「そうですか……

その時何か気付きませんでしたか?」

「さぁ………………。これといっては何も…………」

 

アリネの表情もまた暗く沈んでいた。自分よりかなり若い少女がこの世を去った事に心を痛めているのだ。

ギルドの男は既にヴィンに視線を向けている。

そして彼もまた説明する為に口を開いていた。

 

「わしも、彼らと同じじゃ。

実はセインの家族の遺産相続の詳しい事をわしが担当していてな、その時はその作業をしておった。」

「作業を。 その時に気付いた事はありますか?」

「いやぁ 仮にあったとしても気づかんかったのぉ。何せあんな遺体を目の当たりにしたんじゃからな。

まったく酷い事をする女も居たもんじゃ。あんなに優しい娘子の胸を よもや抉ろうとは……………………。」

「………………………」

 

ヴィンも険しい表情で受け答えをした。

アリネが神に仕える立場であるように、ヴィンもまた法律の立場からこの事件を見ているのだ。

 

「では最後にペリーさん」

「だから、それはさっき説明しただろう!

私はあの人と話した後は二階のトイレに行こうとして、階段で足を滑らせて怪我をしてしまった。だから医務室に行ったんだ!!

その私にどうやって犯行ができるというんだ!!!」

 

ペリーはすっかり冷静さを失っていた。それこそギルドの男が面食らってしまう程にだ。

 

「お、落ち着いて下さい。

一応参考までにお聞きしているだけですから。」

「どうだか。私にはどうも あなたらが私を疑ってるような気がしてならんのですよ!」

 

鼻から息を吹き出すことで不満の感情をギルドの男達に見せつける。

 

「それはただの被害妄想ですよ。

犯行時刻に医務室に居たのならあなたは確実に潔白(シロ)なんですから。」

 

ペリーをなだめた後、男は顎に指を当てて考えを巡らせる。

 

「………話をまとめると、レオルさんとエティさん、そしてペリーさんには完璧なアリバイがあり、アリバイの無い人たちの中でシーフェルさん、レオーネさん、ゴスタフさんは体格的にあの通気口を通る事は出来ない。

さらにヴィンさんとアリネさんも年齢、体力から同様の事が言える。

 

という事はやはりアギジャスさんとロベルトさん、あなた達二人の中に この事件の犯人が居るようですね!!!」

「!!!」

 

ギルドの男に視線を向けられ、二人は再び顔をしかめた。髪の毛や花の匂いなどの手掛かりは出てきたが状況はまるで変わっていない。

 

「待ってください!さっきも言ったでしょう!

私にも、そしてこの人にもここの信者の女性を殺す動機なんてありませんよ!」

「そうですよ。第一、犯人がその通気口を通ったっていう証拠がどこにあるんですか!?

もしかしたら通れない人が、僕達に罪をなすり付ける為にやったかもしれないじゃないですか!!」

 

ロベルトもアギジャスも口々に抗議するが、ギルドの男達は涼しい顔で聞いている。それに足る根拠があるからだ。

 

「いいえ。人が通ったという証拠ならちゃんとありますよ。先程調べた結果、あの部屋の上の箇所だけ不自然に埃が無くなっていました。

これこそが犯人が通気口を通って脱出したという動かぬ証拠です!!」

(………………!!!

それは僕なんだよ……………!!!)

「それに、あれが偽造だとは考えられません。あの部屋には鍵が掛かっていませんでしたし、仮に鍵をかけて犯行に及んだとしても、誰かが部屋に鍵が掛かっている事に気付いてしまえば一巻の終わり。つまり、この犯行は時間との勝負。

そんな偽造をするくらいならさっさと終わらせて部屋を後にした方が安全だと思いませんか?」

「………………!!!」

 

二人は黙り込んでしまった。二人の間に共通しているのは通気口を通ったのは自分ではないと考えているという事だ。

 

(………僕のせいだ…………!!!

僕のせいで、せめてあの部屋の上に居なければもっと早く解決できたかもしれないのに………!!

こうなったら僕が責任を持って事件を解くしかない………!!)

 

哲郎は必死に考えを巡らせる。唯一分かっているのは犯人は通気口を通って出ていないという事だけだ。

 

(………とはいえ、怪しい人なんて居ないぞ………。

みんなアリバイは無いし、これといっておかしな事も言ってないし………………

!!!!!)

 

その瞬間、哲郎の頭に閃光が光った。

ある人物の異様な発言に気が付いたからだ。

すぐさま水晶を取り出してエクスへと繋ぐ。

 

『………テツロウ、どうした?

何かあったか?』

「………エクスさん、落ち着いて聞いて下さい。

僕、犯人が分かりました。」 『!!!!?』

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