異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#186 The Repentance

「……まず、わしは確かに以前この屋敷に忍び込んだ事がある。 そう その日はたまたまあの娘が《卒業》した日で皆 それに集中しておった。」

「なるほど。それで信者の人達の話を聞いて あの女性の人柄が分かったんですね?

しかしどうしてそこに? それにどうやって?」

「忍び込んだ方法はこれじゃよ。」 「!」

 

ヴィンは懐から奇妙な形をしたブローチのような物を取り出した。

 

「それって、もしかして魔法具ですか?」

「ああ。身に付けると姿を隠す事の出来る魔法具じゃ。これをつけて門が開いた瞬間に忍び込んだんじゃ。わしの知り合いにも魔法に詳しい者が居て、その伝手を頼って手にしたんじゃよ。

今日の犯行もこれを付けて行った。」

「という事は、今あなたの身体には………」

「もちろん付いとるじゃろうな。胸の所にに魔素が。」

「………………」

 

ヴィンはまるで憑き物が落ちたような表情で話を続ける。

 

「それで、どうして忍び込んだりしたのか だったね。

実はわしの孫娘も変な宗教にのめり込んでしまってね。それがどこか分からなくて、心当たりがありそうな宗教を片っ端から探してたんじゃよ。ギルドははぐらかすだけだったからね。

尤も、ここには孫娘は居らんかったが。」

「……それならあなたはこことは無関係じゃないですか。なのにどうしてこんなに大それた事を…………?」

「……到底見逃せん事が起こったんじゃよ。」

「!?

それは、今日ここであなたがやった事よりですか?」

 

ヴィンの表情が先程とは打って変わって険しくなる。その豹変ぶりがその事(・・・)の酷さを物語っていた。

 

「………『お前が言うな』と言われても仕方ないじゃろうが、少なくともわしの目にはそう見えたよ。

………そうじゃ。あの女は血も涙も無い外道じゃ!! 卒業した少女を何故か殺してたんじゃからな!!!」

「!!!? それってまさか!!!!」

「そうじゃ。あの遺体をあの部屋に置いたのがわしなら、あの《マリナ》という女はあの娘を殺したのじゃ…………!!!」

「……………!!!!」

 

先程まで余裕のある態度でヴィンを問い詰めていた哲郎の頬に一筋の汗が流れた。

今まででも十二分にマリナを疑う材料は揃っていたが、いざその事実が明らかになると受け止め切れない物がある。

 

「…………失礼ですが、その証拠は?」

「証拠になるかは分からんが、わしが見た物を包み隠さず話そう。」

 

 

 

***

 

 

ヴィンの話を要約するとこうだ。

パルナの卒業パーティーが終わった後は信者達は解散し、マリナはパルナを連れて地下室(彩奈が案内された教祖のいる場所とは別の場所)に入り、孫娘が居ないと分かり用の無くなったヴィンも興味本位でそこに忍び込んだ。

 

そこでヴィンは 暗くて良くは見えなかったが地下深くの一室で巨大な何かが背中を突き刺す音、大量の血と庭とは違う花の強烈な匂いを感じた。

それ以上は詮索出来ないと判断したヴィンはマリナが出て行くのと同時に地下室から出てそのまま逃げるように屋敷を後にしたのだと言う。

 

「それならどうして その時点でギルドに報告しなかったんです?」

「わしの証言だけでは信じて貰えんと判断したからじゃ。何よりわしのやった事は紛れも無い《不法侵入》。

強くは出られんよ。」 「!!」

 

哲郎もまた大義名分はあれど《不法侵入》、更には《公務執行妨害》 同然の事をやってしまったのであまり強い事が言えない。

 

「………それで、遺体はどうやって手元に?」

「昨夜 ここに再び忍び込んだ時に見つけたんじゃ。なにかに利用するつもりだったのかは知らんがすぐに開けられる場所に隠してあった。」

「!!? 来たんですか!?

昨夜、ここに!!?」

「そうじゃ。その前にシーフェルから偲ぶ会の場所がここに変わったと手紙が来たんじゃ。

その時に今回の計画を思い立ったのだよ。」

「その時、マリナさんは何をしていましたか!!?」

「!!? いやぁ、彼女には会わんかったよ。

その時は遺体の場所を把握してすぐに戻ったからな。」

 

哲郎はマリナが昨夜 どこかに料理を運んでいた事を伝えるべきかどうか一瞬悩んだが、止めることにした。

 

「………そうですか。

じゃあ、マリナさんがどこの誰かは調べなかったんですか?」

「それはもちろん調べたが、大した事は分からんかった。

とある事故の被害者遺族 としかな。」

「被害者遺族!!? どういう事ですか!!!?」

「じ、十五年前に起こった コントロールを失った馬車が姉弟に衝突した事故じゃよ。

亡くなったのは弟の方で、その姉が彼女だったらしい。だがまだ子供で名前は分からんかった。」

 

そこまで言ってヴィンは再び神妙な表情になった。

 

「………まぁ兎にも角にもわしのやった事は到底許されん事 それは分かっておる。

何を隠そう 恩人のセインの最後の別れをあんな形で穢してしまったんじゃからな。

最早セイナだけでなく あの九人にも合わせる顔がないわ。」

「!!!」

 

《セイナ》

その言葉を聞いた哲郎の頭の中にとある懸念がかなりの現実味を帯びて浮かんだ。

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