異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#190 The Inferno Tentacle 4 (Creature Of Plant)

マリナの持つ蝋燭の淡い火がその植物の魔物の醜悪な姿を照らしていた。口から無数の牙を生やし、濃い紫色の悪臭を伴った唾液を垂れ流す様はかつて公式戦でロイドフが繰り出した個体の比ではない。

 

「こ、子供!!??

一体どうやって!!? あそこにはちゃんと魔力で鍵を━━━━━━━!!!」

 

以前までの落ち着きはどこかへ消え、突然現れた哲郎に慌てふためく。哲郎も同様にヘルヘイム(であろう魔物)に内心穏やかではなかったが、その感情を隅に追いやってマリナに口を開く。

 

「………ジェイル・フィローネの幹部 マリナさんですね? あなたにエレナ ことパルナ・ミューズさん 殺害の疑いがあります。失礼ですが、あなたを拘束させて━━━━━━━━━

!!!!?」

 

発言を途中で遮って哲郎は身体を横に捻って跳んだ。巨大な蔓がまるで鉄球のような勢いで迫ってきた。

 

(ま、魔物が攻撃してきた!!? 僕は今 あれ(・・)に攻撃しようとはしてないのに!!!

公式戦で見たのとは種類が違うのか!!!)

 

公式戦でロイドフが繰り出した個体は自分への《敵意》に反応して攻撃してきた。しかし今目の前にいる個体は明らかに哲郎に向けて先制攻撃(・・・・)を仕掛けてきた。

 

(それに今 明らかに僕の足を狙って蔓を伸ばしてきた………!! 僕を捕まえて口に放り込むつもりだったのか……!?

さっきのマリナの発言といい、こいつまさか、人の血を栄養にしているのか!!?)

 

最初に伸ばした蔓が魔物の身体へと戻った瞬間には次の攻撃が哲郎に向けて伸びていた。

既に攻撃を見切った哲郎は身体を半身にして避け、身体の横で伸びている蔓を両腕でしっかりと掴む。

 

「フンっ!!!」

 

そのまま全力で身体を捻り、蔓を支点にしてヘルヘイムを投げ飛ばそうとする。

 

『スポンッ!』 「!?!」

 

軽い音が鳴った直後、哲郎の目に映ったのは一本の太い蔓だった。

 

(ち、千切れた!?!

……いや、今の音と感触は千切れたというよりは…………!!)

 

哲郎が自分の身体で感じたのは、蔓が千切れた(・・・・)というよりは蔓が抜けた(・・・)感覚だった。

 

「!!」

 

勢い余って投げ飛ばした蔓は魔物から離れた瞬間、くすんだ茶色に染ってあっという間に朽ち果ててしまった。

 

 

「!?」

 

哲郎が振り向いた時には既にマリナの姿は無く、一本の蔓を構えた植物の魔物が佇んでいた。

 

(居ない!? 奥の方に行ったのか!?

まさか転生者はこいつじゃなくて……………!!!)

 

目の前のヘルヘイムの上部に付いた教祖 マリアージュは依然として生気の無い表情を浮かべている。そしてその胸は異常なまでに平ら(・・)だった。

 

(この教祖の人は男だな…………。

やっぱりヴィンさんの言ってた事故の被害者がこの人なんだ!!

つまり転生者はこの人を利用して……………!!!)

 

哲郎はこの宗教団体の全貌の殆ど(・・)、そして転生者は他に居るという事を理解する。

 

(となれば、こいつは公式戦の時と同じようにヘルヘイムの幼体!転生者がそれをどこかで操ってるんだ!!)

 

転生者との戦いが控えている以上、徒に体力を消耗する事はできない。目の前のヘルヘイムは攻撃を掻い潜ってやり過ごし、一刻も早くマリナの元へと急ぐべきだと判断する。

 

(今 あいつの蔓は右側しか無い!!

左側をダッシュすればやり過ごせるかも…………!!

 

行くぞ!!!)

 

哲郎は身体を前方に傾けて一気に地面を蹴る。狙いはヘルヘイムの左側。一度は飛んでくるであろう攻撃もいなす事は出来ると踏んだ。

 

 

ズドォン!!!! 「!!!!?」

 

哲郎の目の前に巨大な人型(・・)何か(・・)が落ちて来た。

 

「な、何だ……………!?

!!!?」

 

哲郎の前に立っていたのは全身濃い緑色で花が変形したような顔を持つ人型の魔物だった。

背中からは二対の翼と大量の蔓が蠢いている。

そしてそれは一体だけではなく、通路の奥の闇からどんどんと出て来る。

 

(こ、こいつまさか ヘルヘイムの上位種か……!!?

完全に僕を足止めする気だな……………!!

 

だけど植物なら身体中に水分が詰まってる筈!!

あれをやるしかないか…………!!!)

 

人型の植物の魔物は喉を鳴らして(眼らしきものは見当たらないが)哲郎を凝視している。その爪や蔓が自分の命を狙っている。

 

(仕掛けるのはヤツが攻撃しようと動いた時!!

いつもやってるようにそこにカウンターを合わせる!!!)

 

急がなければならないと分かりつつも下手に動くことは出来ず、少しの間 魔物の動きを伺う。

そしてその時は訪れた。

 

「今だ!!!!」

 

魔物の動きに合わせて《(さざなみ)》を使って地面を蹴り、一気に距離を詰める。その手は魚人波掌を発射する構えで魔物の腹部を狙う。

 

バチィン!!!!! 「!!!!?」

 

哲郎の渾身の掌底が魔物の腹に炸裂した。

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