異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#191 The Inferno Tentacle 5 (The unthink soldier)

哲郎の全身全霊の力を込めた掌底が植物の魔物の腹へと炸裂した。魔物の口から苦しそうに歪み、全身が小刻みに震える。

身体中の水分に衝撃が駆け巡っている。

 

ドパァン!!!! 「うっ!!?」

 

魔物の上半身が黄緑色の体液を吹き出しながら破裂した。その体液が毒である可能性を考慮した哲郎は咄嗟に後ろに跳んで距離を取る。

 

「………………!!!」

 

人間とはかけ離れた魔物とはいえ人の姿をした生物を殺してしまったことに多少の罪悪感を覚えるが、すぐに体液や残った身体に集中する。

体液がかかった石造りの床は溶けておらず、残った身体も動きは無い。完全に命を絶った。

 

(………こいつも恐らく《転生者》に操られて僕を足止めに来たんだろう。

一体一体は大した事ないけどあと何体居るか分からない以上、徒に時間を稼がれるのは避けたいな……………)

「!!!?」

 

背後から襲ってきた攻撃の気配を察知し、上方向に跳んで躱す。その攻撃は二本(・・)の蔓だった。

 

(……………!!

後ろのヤツが追い付いて来たか!!!)

 

背後には公式戦で見たヘルヘイム、そして前方に数体の人型のヘルヘイムが居るこの状況で哲郎が選んだのは空中に浮いて怪物達から距離を取る。空中戦を選んだ。

 

(空中に浮かんだは良いけどここからどうする?

このまま空を飛んで逃げたとしても蔓に足を掴まれたら終わりだ。やっぱり個々で確実に倒すしかない!!)

 

翼を持つヘルヘイム達は無論の事 空中の哲郎に向かって飛んでくる。その中の最前列の魔物が哲郎に向けて拳を突き出す。それも哲郎は予測して天井のすぐ近くまで飛び上がっていた。

 

「フンッ!!!!」 「!!!?」

 

向かってきた拳を半身で躱し、その手首を掴んで身体を捻り、そのまま投げ飛ばして天井へと叩き付ける。植物の魔物は人間とは違って腕に骨や関節は無かったが、敵の速度を利用した投げが上手く決まった。

そしてそのまま魔物の手首を掴んで振り抜き、魔物の身体を次に向かってくる人型とウツボカズラ型のヘルヘイムに纏めて叩き付ける。

哲郎の遠心力と魔物の体重、そして当人達の速度が全て乗った衝撃は凄まじく、二体を一気に床へと激突させた。

 

「!!」

 

哲郎の手首が違和感のある動きを訴えた。視線を向けると息を吹き返した魔物が哲郎に向けて拳を構えている。その拳が発射させるまで一秒と掛からなかったが、哲郎の脳はその一秒未満の間に最適な行動を導き出した。

 

「フンッ!!!!!」 「!!!!!」

 

自分の顔面目掛けて飛んで来た拳を身を屈めて躱し、その攻撃に合わせて渾身の掌底をカウンターで叩き込む。植物の魔物の身体中に衝撃が流れ込む。

 

ドパァンッ!!!!

 

というけたたましい音と共に魔物の身体は体液を吹き出して腹の部分から破裂した。残った首と両腕、そして下半身が力無く床へと落ちる。

 

「……………………」

 

たった今床に落ちた魔物の残骸はもちろんの事、先に落ちた人型とウツボカズラ型も動きを見せない。命は絶っていないが意識はもう無い。

息を吹き返すかどうか見極める為に時間を浪費するよりは先を急ぐ方が懸命だと判断し、後ろに注意しながら廊下を進む。

 

(また足止めさせる前に、エクスさんに連絡しとくか…………)

 

懐から水晶を取り出してエクスに通信を繋ぐ。

 

「エクスさん、聞こえますか!?

今の状況を報告します!!!」

『テ ツロウ か。大丈 夫だ 。何 と か聞こえ ている ぞ 。』

「(大分通信が悪くなってきたな…………!!!)

たった今 三体のヘルヘイムに遭遇し、全員を撃退しました。恐らくこの宗教団体に潜む《転生者》の差し金だと思います。」

『そ うか 。 分 かっ た。

俺 はど うすれ ば良 い ?』

「とりあえず彩奈さんにこの事を伝えて欲しいのと、セリナさんの身の安全の確保をお願いします。彼女を襲った蔓がまたいつ襲ってくるか分かりませんから。」

『分 かっ た。

任 せ て お━━━━━━━━━』

 

そこでエクスとの通信が完全に途切れた。

 

 

***

 

 

《エクスの屋敷の一室》

 

「!!」

(完全に通信が途切れた。距離の関係からして通信に影響する妨害魔法があの部屋に仕掛けてあったか!!)

 

哲郎の事が気にはなるが、言われた通りに彩奈に通信を繋いだ。

 

 

 

***

 

 

《ジェイル フィローネの屋敷》

 

屋敷では依然として事件の捜査が続いていた。

 

「!」

 

彩奈の水晶が淡く光った。アリナの目を盗んで応答する。

 

『アヤナ、聞こえるか。

そこにアリナが居るだろうから返事はしなくて良い。黙ったまま聞け。

テツロウからの知らせでは、転生者は植物の魔物を従えている可能性が非常に高い。いつまたセリナを襲ったという蔓が出てくるか分からない。お前も気をつけろ。』

「…………!!!」

 

彩奈は『はい。』と答える代わりに水晶を軽く一回 叩いた。

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