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本来 片手で加速を付けて打ち出す魚人波掌を両手で撃つ奥義の一つである。同時に体内に響き渡る二つの衝撃はスピードは落ちる分魚人波掌二発分を遥かに上回る威力を誇る。
今までの戦いの中で出会った者達の中にはこれを繰り出せる隙のある者はいなかったが、今回はレオルと彩奈の補助が哲郎の身体にこの技の成功をもたらした。
『…………ど、どうなったんですか…………!?』
『分からん。分からんが、寸分の狂いなく決まったのは確かだ。』
レオルと彩奈はこれから何が起こるのかを固唾を飲んで見守っていたが、哲郎は自分の勝利を確信していた。至近距離でしか分からない事だが、トレラの目が虚ろになり全身が小刻みに震え出している。
そしてその瞬間は訪れた。
「!!!!!」 ドパァン!!!!!
『!!!』
トレラの左肩が空気を入れすぎた風船のように破裂し、左腕が天高く舞い上がった。《
「ウガァッ…………………!!!!
このっ………………!!!!!」
「!!」
トレラは右手で左肩を押さえ、くぐもった声を上げながら周囲に蔓を振り回した。その苦し紛れの攻撃を哲郎は難無く躱す。そして再び二人の側まで距離を置いた。
「━━やっ……………!!
やりましたね 哲郎さん!!!」
彩奈が状況の把握を終え、そして喝采の声を上げた。レオルも『同感だ』と言うように口元を緩ませている。
「二人の補助があったからこそ出来ました!!
この分なら拘束してあの人の後ろにいる人達の事を聞き出すのも━━━━━━━━━━」
「なめんなァ!!!!! クソボケ共がァ!!!!!」
『!!!!?』
トレラの背後、そして両隣に巨大な木が生えてきた。それは不気味に蠢いて哲郎達を狙っている。トレラの表情は屈辱と怒りによって醜く歪み、顔中に血管(葉脈かもしれない)が浮いていた。
「二人共 気をつけて下さい!!
ヤツはまだ戦う気です!!! また僕が攻撃しますから二人はその援護に━━━━━━━━━━━」
「人を舐め腐んのも大概にせぇよこのクソガキィ!!!!!」
「!!」
「下手に出とったら舐め腐った真似 晒しやがってからに!!!!!
もう
『!!!!?』
まるでトレラの感情がそのまま響き渡るかのように地下室の地面全体が激しく振動する。そして同時に二つの事が起こった。
一つはトレラの身体が 植物が急成長するかのように激しく膨張した事。もう一つは三人が立っていた地面が崩壊し、その下から無数の蔓が顔を出した事だ。
***
「な、何だこの凄まじい力は……………!!!」
「ど、どうすればいいんですか これ!!!」
「落ち着いて下さい!! あまり動かない方が良いですよ!!」
地面から無数の蔓が伸び、三人を巻き込みながら上へ向かっている。周囲を蔓に覆われて今何が起こっているのかを確認出来ない。
バゴォン!!!!! 『!!!』
蔓が
「そ、空!!? って事はまさか…………!!!」
「テツロウ、下だ!!」
「!!」
レオルの指差す方に視線を向けると、そこには半壊したジェイルフィローネの屋敷が遥か下にあった。トレラの蔓が地下室や屋敷を破り、地上へと出てきたのだ。
「それでレオルさん、トレラは!!?」
「……奴なら恐らく
「!!!」
再びレオルの指差す方に視線を向けると、一本の巨大な木がそびえ立っていた。茶色い幹と緑色の葉を持った普通の木の筈なのに、哲郎の目にはそれが異常なまでに不気味に映る。
━━━バキバキバキッ!!!!
『!!!?』
木の幹の枝が別れる場所にけたたましい音を立てながら亀裂が入った。その中から十本の指が入り、こじ開けるようにして
『…………………!!!!!』
幹からトレラの上半身が姿を見せた。
その髪は長く伸び、そして額には縦に目が開いている。さらに哲郎が吹き飛ばした左腕は元通りに戻っていた。
「これがワシの本気を出した時の格好や。
……どないしたんや? まさか腕一本持ってっただけで勝ち確信しとったんか?ホンマにおめでたいヤツらやで!!!!」
トレラは哲郎達を指差しながら勝ち誇ったように高笑いを上げている。そんな状況でも哲郎は冷静にレオルに
『………レオルさん、屋敷にいた人達がどうなったか分かりますか?』
『あれで死人が出たかどうかは分からないが、血の匂いや苦しむ声はした。少なからず怪我人が出たのは確かだ。』
『………………そうですか。
ならまず先に全員の避難を済ませましょう!!!』