異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#20 Straight!!!

「もう止めときなさい。

そんなになってまで続ける意味はないでしょ?

これ以上続けたらホントに死ぬわよ!?」

 

サラは本心で、そして哲郎の体を気遣って言った。

しかし、哲郎は聞く耳を持たず、サラに闘争心だけを剥き出しにしている。

 

「……ならしょうがないわね。

もっとキツいのやって、降参させるしか。」

 

サラはおもむろに両の手を向け、そこに巨大な魔法陣を形成した。

形成された魔法陣に大量の魔力が溜まっていく。

 

(………今までもあんまり成功したことはないけど、それでもやるっきゃない!!!

 

成功率 二割……いや、そんなこと考えてる場合じゃない

 

こいつを倒して私は進むのよ!!!!!)

 

「これでトドメよ!!!!!」

『こ、この魔力はまさか━━━━━』

 

 

 

サラは魔法を構成することに全てを集中させた。たとえ哲郎がこれから何をやろうとも。

今の自分に出来るのは、この魔法を成功させる事だけだ。

 

 

 

「《煉獄之豪砲(フラマ・グレイズ)》!!!!!」

「!!!!!」

 

 

サラの魔法陣から巨大な、それこそ太陽に例えて差し支えないほどの火球が哲郎に向かって放たれた。

 

『で、出ました!!!!! 《煉獄之豪砲(フラマ・グレイズ)》!!!!!

炎の魔法において、最上級の威力を持ち、極限までの魔法精度を求められるラグナロクの歴史上においても秘技中の秘技 究極奥義!!!!

 

その真髄が今、テツロウ選手を襲うゥゥゥゥゥ!!!!!』

 

(よし!成功した!!!!)

 

 

しかし、哲郎が動揺を見せたのは一瞬だけだった。次の瞬間には再び『スイッチング・ウィンバック』を使用し、己を奮い立たせる。

あの時の修行の時、彼女から言われた言葉がこれだ。

 

『ピンチをチャンスに変えれば、道は開ける』と。

一見 当たり障りのない薄っぺらい言葉かもしれないが、今の哲郎にはこれ以上に勇気を出させてくれる言葉はなかった。

 

行ける!!!!!

 

そう確信して哲郎がとった行動は━━━━━

 

ダッ!!!! 『「!!!!?」』

 

 

『テ、テツロウ選手走り出した!!!!

ここから何を見せる!!!?』

 

両腕を交差させ、ガードを固める。しかし、それだけだった(・・・・・・・)

 

 

ズボッ!!!!!

 

 

『な、な、な、な、何と飛び込んだァァァーーーーーーーーーーー!!!!!

これは無謀!!!!! テツロウ選手、最上級魔法をその身一つで迎え撃つのか!!!!?』

 

 

 

煉獄の中で、高熱に身を灼かれながら哲郎は極限まで集中していた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━耐えろ。

そして走り続けろ!!!!!

 

少しでも気を緩めたらこの炎に殺られる!!!!

出来る 耐えれる やれる 走り続けろ!!!!!

 

ここで決めなければこっちが負ける!!!!!

 

 

熱さなんて気にするな!!!!!

あとどれくらいなかんて考えない!!!!!

僕は向かっている!!!! まっすぐ!!!!!

 

 

ここで負けたら あの苦労が水の泡だ!!!!!

そんなのは嫌だ だからやる!!!!

走って走って 走り続ける!!!!!

 

 

少しでも足を止めたら根負けする

ここまで来たなら絶対 勝ちたい!!!!!

大丈夫だ 僕には【適応(無敵の力)】がある!!!!

 

 

だから走れ!!!!! まっすぐに!!!!!

 

 

自らを鼓舞し続け、遂にその時が来た。

炎を抜け、サラと合間見えた。

 

 

「!!!!?」 サラは驚愕の表情を見せた。しかし、哲郎には最早それすらも問題ではない。

 

残る力全てを振り絞り、正真正銘 最後の攻撃の準備に入った。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!」

「!!!!! マズっ━━━━━━━━━━」

 

 

「倒

 

 

ろォォォォォォオォォおォォオォォォッッッ!!!!!」

 

 

スパァンッッッ

 

 

攻撃は掌底

箇所は顎。

 

 

力は極限まで抜き、そして最速で彼女の顎をはたいた(・・・・)

その瞬間、サラの意識は遠くなり、地面にバッタリと倒れ、完全に昏倒した。哲郎も体力の限界を迎え、四つん這いに倒れ込んだ。

 

一瞬の内に色々なことが起こり、場内は戸惑いの色を見せた。

 

『テ、テツロウ選手が炎魔法を抜け…………サラ選手に……………

 

こ、これは………………』

 

「し、勝負あり!!!!!」

 

レフェリーが決着を宣言した後、哲郎に駆け寄った。その手には一着の下着(・・・・・)が握られていた。

 

「テツロウ選手、これを。」

「え? ……あっ。」

 

そこまで言って哲郎は気がついた。

衣服が完全に燃え尽きて火傷まみれの全裸体であることに。それでも場内から悲鳴の類が聞こえなかったのは幸いだった。

 

素早く渡された下着を履き、仕切り直す。

レフェリーの肩を借りて立ち上がり、そして高々に腕を上げた。

 

 

その時、我に返ったように観客席から大歓声が巻き起こった。

 

サラの力を信じていた者も、哲郎の勝利に賭けていた者も一様に哲郎の勝利に惜しみない歓声を送った。


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