「………………………!!!!!」
レオルが放った黒い雷がトレラの身体を被う木を真っ二つに切り裂いた。それがトレラの
「ッ!!!!
こんの クソ共がァ!!!!!」
「甘い!!!」
トレラは怒りに任せて空中で身体を回転させてしなる木の鞭を哲郎達に向けて振りつけるが、空中で踏ん張りの効かない状態で二人を正確に狙うのは至難の業だ。
「テツロウ、やれ!!!」
「はいっ!!!」 「!!!?」
哲郎は空中であらぬ方向に空を切る鞭を掴み、そして全力で振り上げた後 振り下ろした。その振動はトレラの身体にも完全に伝わり、身体を天高く持ち上げる。
「おりゃあッ!!!!!」
蔓を掴む両腕を下に振り下ろし、重りと化したトレラの巨体は地面へと急降下する━━━━━━━━━━
ビタッ!!! 「!!!?」
トレラの身体は地面に落下する事は無く、まるで空中に
「テツロウ!!! 上だ!!!」
「!!! なっ…………!!!!」
上に視線を送った哲郎の目に飛び込んできたのは背中に
(あ、あれは《ヘルヘイム》の翼!!!?
それを巨大化させて………………!!!!)
「ッ!!!」
下にいる哲郎の腹を目掛けて鋭い木の槍の突きが飛んでくるが、間一髪躱してレオルの方に合流する。
『………どうやらあれがあいつの本気のようだな。』
『はい。まるで公式戦で見たヘルヘイムがそのまま木になったみたいです。』
哲郎の抱いた感想に偽りは無かった。
目の前にいるトレラの姿はそれまでに驚異となっていたヘルヘイムの特殊な生態、人間体の頭脳と戦略、そして巨木の身体から繰り出される攻撃の凄まじさ のそれら全てを兼ね備えているように見えた。
「…………おどれ等、ワシを本気でブチ切れさせたからには楽に死ねると思うんちゃうぞ…………!!!
その身体中に管ぶっ刺してワシのメシにしたろやないかい!!!!」
トレラはそう絶叫したが、哲郎達の注意はトレラの発言には向かなかった。その最中に巨木の両側から二本の茶色の巨大な豪腕が顔を出したからだ。
ピシッ 「!!」
哲郎の耳が微かに捉えたその音は自分が立っているレオルの魔法陣の足場にヒビが入った音だった。先程のトレラの身体を切断した攻撃で著しく魔力を消耗したのだ。
それでも全く容赦無くトレラの拳が飛んでくる。回避出来たとしてもこれ以上レオルに魔法陣を出させるのは避けねばならない事態だ。そう考えた哲郎が取った行動は一つだった。
「!!!」
「なっ!!?? お、お前何を!!!?」
「動かないで下さい!! レオルさんはこれ以上魔力を消耗しちゃいけません!! 確実にヤツを仕留める為にはなるべく動かないで!!
それと危ないですからしっかり掴まって下さい!!」
哲郎はレオルを
「…………!!!
こんな様を誰かに見られたら末代までの恥だぞ…………!!!」
「ただのお葬式に出たら戦いに巻き込まれて死んじゃいましたってなったらそっちの方のが恥でしょ!」
「それはまぁ良い!
それよりあの娘はまだ避難を終えていないのか!!? あいつが終わらない限りこっちはずっと下手な手出しが出来ないんだぞ!!」
「そんな事は分かってますよ!
彩奈さんだって頑張ってるんですよ!あの屋敷の壊れ方を見たら分かるでしょ!」
「おい!!!!」『!!』
二人の世界に入りかけていた哲郎とレオルをトレラの一喝が呼び戻した。
「何をごちゃごちゃ言うとんねや このハエ共ォ!!!!」
「!!! 来るぞ!!!」 「はいっ!!!」
トレラが身体を振るって飛ばしてくる縦横無尽の蔓の鞭を空中を飛び回って全て躱す。哲郎は既にレオルの体重にもそれを抱えて飛び回る疲労にも《適応》していた。
「彩奈さんは今も頑張って避難をさせている筈です!! それが終わるまでは動かないで魔力を温存して下さい!!!
避難が終わったら一気に終わらせますよ!!!」
「おう!!!」
***
《ジェイルフィローネの半壊した屋敷》
彩奈はトレラの巨大化によって様変わりした屋敷の中を苦労しながらもけが人達を《転送》させて避難させていた。彼女を苦しめたものは通りにくくなった内部だけでなく、パニックに陥っている信者や参列者一人一人を宥める事だった。
(逃げ遅れた人はもう何人もいないはず!
哲郎さん、待ってて下さい。あなたが『使える』と言ってくれたこの力でみんな助けますから!!!)