異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#204 The Inferno Tentacle 18 (Muscle-building Electro)

彩奈が今 やらなければならない事は言うまでもなく一刻も早い避難の完了であり、それは哲郎とレオルが自分を信じて身を削る思いでトレラを引き止めているからだ。

それ故にたとえ相手が自分の能力(・・)を信じなかったとしても構っている暇はなく、それこそ機械のように人々に触れて避難させる事だけが求められる。

 

僅かな時間とは言っても寝食を共にした少女達との間には決して浅くない絆があり、皆 彩奈に親切に接してくれていた。そんな彼女達に自分の素性をひた隠し、あまつさえ何も言わずに触って視界が住み慣れた屋敷から一瞬で見た事も無い部屋に変わった彼女達の驚きは計り知れないだろう。いくらエクスが居るとはいっても彼女達の胸中を考えると心に刺さる物がある。

それでも彩奈は心を無にして屋敷中を駆け巡り、逃げ遅れた人がいないかどうか大声で呼びながら探し回った。その間自分が体力の限界をゆうに超えていた事を知るのは後の話である。

 

 

 

***

 

 

彩奈が屋敷に入ってまだ数分程度しか経っていないが、哲郎達にはそれが果てしなく長い時間に感じられた。それは偏に目の前の巨大な植物の怪物を自分達が引き付けていたからである。

 

『テツロウ!! まだなのか!?

このままだと体力を温存する前に殺られてしまうぞ!!!』

『そんな事は分かってますよ!!

彼女の事です!! きっともう避難を始めてますよ!!

だから今は僕を信じて身体を預けてください!!!』

 

レオルは口から『変な言い回しをするな』と言いそうになったが相手が年端もいかない少年だと思い直して喉の奥に押し込んだ。

 

そして何が二人をここまで苦戦させたかと言えば、トレラの注意が自分達に完全には(・・・・)向いていないということだ。

屋敷の安全を確保しようとして距離を取ったとしてもトレラが屋敷の破壊を優先させようものなら状況は一気に悪化する。それを危惧しているからこそ一定の距離を保ってトレラの攻撃を一身に受けて時間を稼ぐ以外に出来ることがないのだ。

 

そして攻撃を一向に当てられない事に業を煮やしたトレラは片手で小技を重ねる裏で確実に二人を仕留める為の攻撃の準備を完了させていた。

 

「テツロウ 後ろだ!!! でかいのが来るぞ!!!」

「!!!」

 

哲郎が後ろに視線を送ると、トレラの背後で蔓が丸くなって固まった巨大な球体が回っていた。速度といい重量といい二人を仕留めるには十分過ぎる威力がそこにはあった。

 

「地平線の向こうまで吹っ飛ばしたらァ!!!!

オルァッ!!!!!」

「!!!!」

 

トレラは身体を振るって全体重を乗せて蔓の塊を投げつけた。それが哲郎に届くまで一秒とかからなかったが 哲郎はその一瞬で最適な行動を導き出して実行する。

 

 

ガッ!!!! 「!!!」

 

一直線に飛んでくる蔓の塊を脚を振り上げて迎え撃った。攻撃を防ぐ為ではなく攻撃の方向を変えて受け流す為だ。

しかし哲郎の脚力ではそれは叶わず、脚の筋肉や骨に振動が響き渡る。

 

(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

重い!!! 攻撃が重い!!!!

やっぱり脚で受け流すなんて無茶だった!!! このままじゃ弾き飛ばされる!!!

彩奈さんも屋敷の皆もやられる!!! 何とかして………………!!!)

ガッ 「!」

 

レオルが哲郎の腰に触った。その手には弱い(・・)電流が走っている。

 

「レ、レオルさん 何を!?」

「やむを得ないだろう!! 私の電流でお前の筋力を一時的に強化する!!!

効果は一瞬だからしくじるんじゃないぞ!!! 失敗したら全滅は必至だ!!!」

「……………!!! はいっ!!!」

 

トレラは依然として執念深く蔓の塊の攻撃に全神経を注いでいる。その振動が上に向いた時に勝機は訪れた。

 

「やるぞ!!!」「はいっ!!!」

 

レオルの電流が哲郎の脚の筋肉を震わせ、一瞬 脚力が爆発的に強くなる。その脚力と哲郎自身の技量を持ってすれば受け流すのは訳ない事だと哲郎は確信していた。

 

「うりゃあッ!!!!!」

バチィン!!!!! 「!!!!?」

 

哲郎の振り上げた脚が蔓の塊を弾き上げ、繋がった蔓は切れて塊は空高くに消えた。確実にしとめられるという自負のあった攻撃を凌がれたトレラは呆然と空を見上げる。

 

『………やりました!! なんとかやりましたよ レオルさん!!』

『ああ。良くやってくれた。

だがあいつの事だ。すぐに追撃を仕掛けてくるぞ。せめて今避難とやらが終わってくれれば…………』

「「!」」

 

哲郎の懐の水晶が光った。通信の相手は言うまでもなく彩奈だ。

 

『哲郎さん!!! 屋敷の人達の避難 今終わりました!!!! これから私もそっちに戻ります!!!』

 

その二言は希望に満ち溢れて聞こえた。そして哲郎は既にトレラにとどめを刺す算段を固めていた。

 

『……レオルさん、今の聞きましたよね?

次の攻撃で終わらせますよ!!!』

『ああ。無論そのつもりだが、どうやって奴に引導を渡す?半端な攻撃では返って逆撫でするだけだぞ。』

『それなら心配は要りません。

レオルさん、僕を()にして下さい。』

『!!?』

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