異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#205 The Inferno Tentacle 19 (The Origin)

「………杖!? 魔法の杖の事か!?」

「そうです。説明の前に聞いておきたいんですが、コロシアムでレオルさんが使ったあの黒い雷、あれは全力でしたか?」

「……いや、私の腕が何とか形を保っていられる寸前の所で止めた。私の全魔力ならあんなものでは無い(それでも意識を保って耐えられたのには心底驚いたがな)。」

「そうですか。それを聞いて安心しました。

僕の作戦はこうです。『僕の体を介してレオルさんの全力の《皇之黒雷(ジオ・エルダ)》を撃って欲しい』んです!!!」

「!!!?」

 

レオルは頭の中では哲郎の立てた作戦は理に適っていると認めていた。本来 発動者にとてつもない反動を伴う根源魔法は何かを触媒にして放つ事で反動を最小限に抑えようとするのが通例である。コロシアムでレオルがそれをやらなかったのは自分に相性の良い杖がまだ見つかっていない事、そして杖を用意する必要など無いと過信していたからだ。

かつて《炎鳥の騎士》の二つ名で呼ばれた戦士であった国王 ディルドーグも炎の根源魔法《皇之焔鳥(ジオ・フェザード)》を剣を介して撃っている。それを見たからこそ哲郎はこの作戦を立てることが出来たのだ。

しかしレオルの頭の中には同様にその作戦に対する懸念があった事も確かだ。

 

「………残念だがテツロウ、その作戦には大きな穴が二つあるぞ。

まずお前の身体だ! いくら私の攻撃に耐えたからといって私の全力、しかもそれを身体に直接受けて五体満足でいられる保証など無いだろう!!!」

「…………………」

「それにお前は《人を殺さない事》を信条にしていたんじゃ無いのか!!? この私にあんな不遜な口を聞いてまで!!!

それともあいつが私の全力を受けて耐えられるという確信でもあるというのか!!!」

 

哲郎はレオルの言いたい事を全て理解していた。

本来ならばただの子供に過ぎない自分が人の家庭の事情、ましてや権力者に啖呵を切るなどあってはならない事態だ。それでもその彼と曲がりなりにも関係が築けているのは自分が勝負に勝って信念を貫き通したからに他ならない。自分が今やろうとしている事はその信念を曲げることだと、少なくともレオルの耳にはそう聞こえたのだ。

哲郎はレオルの全力を持ってしても目の前のトレラの命を完全に絶つことはどうあがいても出来ないだろうと考えていたが、彼の自尊心に傷を付ける事になるだろうと思って声には出さないでおいた。そしてこれから彼が言うこともまた本心である。

 

「………それでもやるしかないんですよ!!

もし今から撃つ攻撃で彼女(多分)が死んでしまったら、その時は僕が責任を取ります!!!」

「……戯け。魔界侯爵の後取りが子供一人に全責任を被せたとなったら末代までの恥だろうが。

最早私とお前は一蓮托生!!! この件には最後まで付き合ってやるぞ!!!!」

「…………!! ありがとうございます!!!」

 

二人が話していた時間を使ってトレラは再び二人を仕留める為の攻撃の準備に出た。彼らの話の内容は理解出来たが、それは不可能だという結論に至った。

里香から仕入れた情報ではレオルは自分の身体が壊れる以上の攻撃は出来ないし、仮に出来たとしても自分の力を持ってすれば耐えられるという算段だ。

 

「作戦は纏まったんか?

まぁ何をやろうが無駄やけどな。こいつで蜂の巣にしたるからな!!!」

 

トレラが用意した最後の攻撃は、全身から捻り出した何本もの鋭い幹の槍でめった刺しにするという単純明快なものだ。目の前の二人は策を弄すれば弄するほどその上を行く人間だと分かっているからだ。

 

『………テツロウ、あの辺はどうだ?

準備に当たるには最適だと思うが。』

『………そうですね。』

 

レオルが提案したのは崩壊した屋敷の屋根の平坦になっている部分だ。哲郎は徐にそこに降り立ち、レオルを下ろした。

振り返るものの トレラに動く様子は無い。

 

『………あいつ、全然動きませんね。』

『先手を打っても無駄だと分かっているんだろう。私達が攻撃してきた所を狙っているんだ。

………じゃあ行くぞ。覚悟はいいな!?』

『はい。』

 

レオルは哲郎の後ろに回り、両手で哲郎の二の腕を掴んだ。その両手の裏に魔法陣が浮かび上がる。

哲郎は両腕を伸ばし、両手を合わせて攻撃を撃つ体勢に入った。

 

「やるぞテツロウ!!!!!」

「はいっ!!!!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!!!

「!!!!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」

 

レオルの黒い雷が哲郎の両腕を覆い尽くし、その全てが哲郎の身体に溜まっていく。その様子は傍から見ればとてつもない暴挙に見えただろう。それはトレラも同じだった。

 

「ハハハハハハハハハハァ!!!!

このアホ共 最後の最後で頭イカれよった!!! ガキを電気責めにするのがワレ等の作戦かい!!!」

 

トレラの嘲笑に耳を傾ける事は無かった。

今の二人の頭にあるのはトレラに勝つ事だけだ。

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