当時の二人の耳には《トレラが自分達の事を悪く言う
それでも二人の心が折れる事は無かった。あるのは自分の腹を満たすが為に何人もの少女の命を侮辱した目の前の
「………一体いつまでそうしてるつもりや?
そんなちゃちな電気でワシを倒し切れるとでも思とんかい!?」
全身に雷を溜め続ける二人に痺れを切らしたトレラは軽い挑発に出た。二人のすぐ側の部分を幹の槍で貫く。このままではまずいと焦って不完全な状態で攻撃に出てくれれば儲けものだと考えての事だ。
しかしその予想は完全に外れる。二人はまるで取り憑かれたかのように同じ体勢を保って動こうとしない。その様子を見たトレラは『この屋敷が崩れても動かないのか』とか『今目の前で人を殺せば流石に動いてくれるか』といった事を考えた。
そして、二人に動きがあった。
と言ってもそれは左の方向に目を向けるというだけの物であったが、二人にとって、そしてトレラにとってもその
二人が目を向けた先に彩奈が立っていたからだ。
「てっ、ててっ、哲郎さん!!
わわ、私、 やりましたよ!!! 皆を 避難させることができました!!
だから、だからもう本気で戦っても━━━━」
持って生まれてしまったコミュニケーションの苦手さとこの状況に対する緊張も相まって彩奈の口調はいつにも増してたどたどしかった。しかしその言葉だけでレオルは次に何をすべきかを導き出し、それを実行する。
バチッ!!! 「!?」
彩奈の足元でレオルの雷が光った。そして彼女はその
「あっ はい!分かりました!」
レオルの指示の意味を理解した彩奈は身体に触れて自分自身に《転送》を発動させ、二人のすぐ側へと移動した。そしてその二人の様子をコロシアムや公式戦、そして国王の話を総括してすぐに理解する。二人はこれから撃つ根源魔法に全てを賭けている と。
『哲郎さん、レオルさん、私は一体何をすれば━━━━━』
『僕達がこれから撃とうとしている魔法は下手をすれば全てを吹き飛ばしてしまうかもしれないくらいの威力です!!
それこそ屋敷に直撃すれば欠片すら残らないくらいの凄まじさがあります!! ですからそれを防ぐ為に、彩奈さんは僕が合図したら僕達をヤツの
『!!! わ、分かりました!!!』
全身にレオルの魔力を溜め込む過程で哲郎は何度も電撃とそれによる激痛で意識を持っていかれそうになった。しかしその全てを《適応》によって克服して何とか意識を保つ。全てはこの植物の怪物を倒さなければならないという使命感からだ。
『テツロウ!!
今の私の残る魔力を全てお前に注ぎ込んだ!!!
後は私達でタイミングを合わせて撃つだけだ!!! 分かっているだろうがチャンスは一度だけだ!!!
抜かったら私達全員奴の食い物だぞ!!!!』
『はいっ!!!』
いくら哲郎の身体を媒介にしていると言ってもコロシアムで放った物より何倍もの魔力を溜め続けたレオルの両腕にはコロシアムの時と大差無いくらいの激痛が走っているだろう。それでも弱音一つ吐くこと無く自分の作戦に乗ってくれたレオルに無意識に感謝していた。
そして遂に待ちに待った瞬間が訪れた。トレラが哲郎達に出来た隙を付いて全ての幹の槍を振り上げた。
「今ですッ!!!!!」「はいっ!!!!」
「!!!!?」
彩奈が哲郎達に触れるとその姿が消えて槍は全て何も無い地面に突き刺さった。敵がどこに消えたのか探し、すぐに哲郎達が自分の真下に居ることを確認した。
しかし、そのすぐの時間はトレラの命運を完全に終わらせた。
「テツロウ!!!!! やるぞぉ!!!!!」
「はいっ!!!!!」
「!!!!!」
「行っけェーーーーーーーーーーー!!!!!」
哲郎達の勝利を願い、彩奈も自分でも出した事の無いくらいの大声で叫んだ。
哲郎達の最後の攻撃はそのすぐ後に始まった。突き出した両手に魔法陣が形成された。そしてトレラの身体と同じ位の大きさの黒い雷の塊が形成され、一気に炸裂した。
「「根源魔法 《
「!!!!!」
炸裂した雷は大砲になって上に向かって放たれ、トレラの身体に襲いかかった。周囲には雷が突き進み空気を切り裂く時の轟音が通常の何倍もの大きさになって響き渡った。
しかし最早哲郎には耳に襲いかかる轟音も腕に襲いかかる激痛も感じなかった。心にあるのは必ず勝つという強い思いだけだ。