ノア達の訪問から一夜明け、哲郎は満を持して国王 ディルドーグの城に赴いた。既に城の中に入りそこで国王達を守る活躍を見せた哲郎の顔は城の者達全員に知れ渡っており、顔を見せるだけで門を開けてくれた。
そして以前とは違って哲郎は今 応接室に案内されて国王を待っている。今日ここに来た目的は言うまでもなく
「!」
これから話す事を頭の中で整理していると、唐突に扉を開く音が鳴った。その前にノックが無かったのはその入ってきた人間がここの
「おお、テツロウ君。変わりは無いようだな。
何やらまた大変な事件に巻き込まれたらしいな。」
「国王様! オルグさんも、お待ちしてました。」
国王の後ろにはオルグダーグも居た。
表面上は国王の警備として来たのだろうが、彼もまた哲郎の複雑な事情を正確に把握する数少ない人物の一人だ。
「……さて、早速本題に入ろうと思うが、なにか飲み物はいるかね。何でも作らせるが。」
「大丈夫です。喉は乾いていませんから。」
国王は『そうか』と一瞬 拍子抜けしたような顔を浮かべた後、すぐに真剣な表情になった。
その表情を見て哲郎もこの為に持ってきた新聞記事を取り出す。
「これは昨日の新聞ですが、国王様はもう読みましたか。」
「無論だ。新聞会社 モルバーナは十二分に信頼に足る情報を発信しているからな。しかし心底驚かされた。あの穏やかそうな
「……知っていたんですか。」
「名前くらいはな。時々俗に出て花を売るような女達 くらいの認識しか無かったがな。
………して、テツロウ君。その新聞記事に書いてある事は全て真実だと思っていいのだな。」
「はい。それは間違いありません。何しろ僕がこの目で見てますし、他の証言も十分過ぎるくらいありますから。」
「そうか。ならばその前提で質問する。
この一件に《転生者》が絡んでいた事は間違いないのだな。」
「はい。間違いありません。」
哲郎は認めたくはないその事実を声に出してはっきりと認めた。その行動だけで頭の中にトレラのあの下卑た笑みが浮かんでくるように感じられる。
「では教えてくれるかね。その《転生者》について知っている事を全てな。」
「はい。本名はどうかは分かりませんが━━━━━━━━━」
その前置きの後に《トレラ・レパドール》と自分で名乗っていた事、《憑依》の能力を持ちヘルヘイムの人間体の身体を乗っ取っていた事、マリナを唆して自分に《卒業》した少女達を食事として捧げさせていた(であろう)事を話した。
「………それで戦闘になり、レオルさん達の力添えもあって何とか撃退には成功したんですが、逃げる際に里香が現れて そしてマリナも敵の手に渡ってしまったんです。」
「………そうか。それはまた散々な一日になったな。
ところでそのマリナという女だが、ヴィンの言っていた十五年前の事故のデータから
「!? 本当ですか!?」
「うむ。姉の方は《エリアナ・カラデラ》。弟は《バルバト・カラデラ》という名前だった。
両親は早くに亡くなっており、事故の後 姉の消息がぱったりと途切れたという話だ。」
「…………そうですか………………。」
「即ち、マリナことエリアナはそのトレラという者に弟を生き返らせてやるとでも唆され、その口車に乗って(仮死状態となった)弟を教祖にする事で自分の一番近しい所に置き、宗教団体 ジェイル フィローネを創設した。
そしてトレラに言われるがままに《卒業》した信者の少女達を殺害、その生き血を捧げていた。
これが
「…………………!!!」
哲郎は震え、顔からは汗が吹き出していた。それは《怒り》というよりは《恐怖》の占める割合が大きかった。
無論 何人もの罪も無い少女を手にかけた
「……………申し訳ないがテツロウ君、そろそろ次の話に移りたい。
事件に巻き込まれた直後の君にこんな事を頼むのは酷な話だが、《鬼ヶ帝国》について━━」
「もちろん行きますよ。」「!」
「その国にもあいつらのような奴らの手が回っているかもしれないという話なんでしょ。
だったら迷ってる暇なんてありませんよ。それが出来るのは僕だけなんですから。」