異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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鬼ヶ帝国 編
#212 The Empire of Ogre


「………そうか。そう言ってくれて嬉しいよ。

ならばまずは君に行ってもらいたい《鬼ヶ帝国》の詳細を今一度説明するとしよう。」

 

《鬼ヶ帝国》

世界的に見ても極めて希少な種族 《轟鬼(ごうき)族》が暮らす国であり、一つの巨大な島が丸々 国土になっている。島の周りには特殊で複雑な海流があり、空を飛ぶか、あるいは帝国にのみ伝わる特殊な航海術が無ければ島に近付く事すら容易では無い。

帝国は数百年以上前から鎖国体制を続けており、権力者の中には帝国は無法地帯だと決めつける者も少なくない。

 

 

「…………以上で全てだ。

国王の私でも帝国の事を知るのは容易では無くてな。帝国がどれくらいの広さなのか、どれくらいの人々が住んでいるのかは分からん。」

「それは予想出来ていましたが、そもそもなんで僕にその国に行って欲しいんですか?」

「そうだそうだ。大切な事を言い忘れていたな。

…………実は《鬼ヶ帝国》が何者かに乗っ取られようとしているかも知れないという疑惑が浮上したんだ。」

「!!!?」

「疑惑の種はこの一通の手紙だ。

本来 鎖国体制にある帝国は国民が他の国に文書を送る事は厳しく監視されているが、この手紙はその監視さえもすり抜けて私の手元に入って来た。」

「それで、その手紙には何と?」

「それが拙い墨の文字で、『このままだと国が無くなる。助けて下さい。』とだけ書いてあったんだ。

根拠としては薄いかもしれないが万が一これが本当で帝国が滅ぼされた場合、近隣の国々にも何が起こるか分かったものでは無い。

だからテツロウ君、君には帝国に赴いてその疑惑が本当かどうかを確かめて欲しいのだ。」

「それは全然大丈夫ですけど、どうやって潜入するんですか? もし不法入国がばれたりしたらそれこそ国を乗っ取ろうとしている人がどんな事をするか分かりませんよ。」

「安心してくれ。その点なら既に手を打ってある。 オルグ、例の物を。」

「はい。」

 

そう国王はオルグダーグに指示を出した。哲郎は こういう所はやはり良くも悪くも王様らしい と思ったが、その思考は目の前に出された物によって跳ね除けられた。

オルグダーグは懐からカフスボタンを取り出して哲郎に見せた。哲郎は反射的にそれ(・・)を見てある事を連想した。

 

「……これってもしかして…………………」

「そうだ。君が以前使った 着けると任意の姿に変装できる魔法具。これを付けて姿を轟鬼族に見せかけて欲しい。」

「それは全然大丈夫ですけど 肝心の姿はどうなってるんですか?鎖国してる国の人の姿をどうやって再現するんですか?」

「それについては抜かっておらん。

轟鬼族の姿なら古い文献に記録があるからな。」

 

国王の話では、轟鬼族は基本的に背格好は人間と大差は無く、肌は人間のような者も居れば白い者も居り、そして頭には一本から三本の角(基本的には二本らしい)が生えている との事だった。

 

「それから君にこれも渡しておく。」

 

そう言って国王は懐から丸められた紙を取り出した。リボンで結んでありその上には特殊な模様で固められた蝋の塊が貼ってある。

 

「これは君が私の命令で帝国に来た事を証明する物だ。貼ってあるこれは蝋印(シーリングスタンプ)といって、この城以外には出回っておらん。」

「だからこれが証明書になる と…………」

「そういう事だ。だが、これを国に着いて直ぐに見せるのは危険だと考えている。

国王である私に目を付けられたと知られたらその者(・・・)がどんな行動に出るか分かったものでは無いからな。」

「………………………」

 

哲郎は国王の持つ証明書をまじまじと眺めながら漠然とこれからの戦いがジェイルフィローネよりも過酷になるかも知れないと考えていた。

 

「何しろ我々が握っている情報が現状 とても少ないのが難点だ。

分かっているのは帝国である島がどこにあるのかとその島がどれ程の広さなのかという事だけで、信頼出来る情報がほとんど無い。

しかしそれでも」

「『それでもやるしかない』 ですよね。」

「!

無論だ。私が何故ここまであの国を疑うのかの根拠もある。

君には分かり辛いかもしれないが、鬼ヶ帝国(鎖国国家)は連中にとっては非常に好都合なのだ。何かを謀るならあそこ以上に最適な環境はあるまい。

それで無くとも鬼ヶ帝国の周囲には容易に近づけない海流が囲い、天然の要塞と化している。

そんな場所に奴等の手が回っているのであればそれは世界中が危険に晒される由々しき事態だ!!

だからこそテツロウ君、君には━━━━━━」

「分かっていますよ。帝国に行く気はずっと変わっていません。

今日は一日中予定を開けています。ですからもっと作戦を練って、絶対に帝国を助けましょう。」

「………………!!!」

 

国王は哲郎の返答に少年には過剰すぎる程の頼もしさを感じた。そして哲郎の能力を見抜き招待状を送った自分の目は確かだったと再確認した。

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