異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#214 Girl in the bottle

「…………エ、エクス様………………………

私、やっぱり行かなくちゃダメなんですか……………?」

「当然だ。哲郎にはお前の力が必要なんだ。」

 

日にちが経って哲郎が鬼ヶ帝国に行く時、彩奈は哲郎と同様に胸にカフスボタン(変装の魔法具)を着けて轟鬼族の町娘の《杏珠(あんず)》として帝国に潜入する事になった。

 

 

 

***

 

 

「何、彩奈を連れて行きたい?」

「そうです。サラさんのお陰で僕の今の力の程を知る事が出来ました。

あの施設の件でも彩奈さんの力が無かったらトレラに負けていたかもしれませんし、勝てたとしても被害が大きくなってた事は否定出来ません。

帝国で国王様に言われた事をやる為には彩奈さんの協力が必要だと思うんです。」

「………そうか。 なんとか俺が説得しよう。」

 

エクスに帝国の事を聞かされた彩奈は驚き、そしてもうあんな大役はこなしたくないと反発した。哲郎も宗教団体への潜入を終えた彩奈の心中は考慮していたがそれでも譲歩する訳にはいなかった。

そして数時間を掛けて彼女をなだめ、どうにか潜入に協力してもらうという条件を飲んでもらった。

 

国王にも事情を話し、彩奈用にもう一つ魔法具を作ってもらった所で出発の時間になった。

 

 

 

***

 

 

 

「というか、そもそもその帝国に住んでいる鬼の種族の姿って これで合ってるんですか?」

「それは間違い無い。文献に書いてあった情報を頼りに作った姿だからな。」

 

彩奈扮する轟鬼族 杏珠(あんず)の姿は哲郎扮する哲哉(てつや)と同様に和服に身を包んで黒髪の頭から二本の角を生やしたものである。ノアがかつて帝国で見た轟鬼族の姿と遜色無く同じだ。

 

「………それと、本当なんですか?

帝国に行く為に私を魔法具に詰め込んで行くっていうのは。」

「残念だがそれも本当だ。

確かに魔法具ではあるが詰め込むという大層なものじゃない。本来 罪人を連行する為に作られた物だがお前に使うのは広さを十分に確保した改良型だ。不自由はさせない。」

「……………………… (そういう話じゃないんだけどな……………………)」

 

彩奈は前世でいじめを受けていた時に一度だけトイレに閉じ込められた経験があり、それ以来一人で狭い所に入る事を恐れるようになった。

広さを確保してくれると言うが、そもそも彩奈にとっては閉じ込められる事自体が苦痛になり得るのだ。

 

「それがこいつだ。

長旅になるだろうから中に横になれる設備も整えてある。少なくとも便所のような思いはさせないのは確かだ。」

「は、はい…………………。

(その帝国に行ったことさえあれば哲郎さんと一緒にすぐに行けるのにな…………………。)」

 

エクスは小瓶の形をした魔法具を手に取って彩奈に見せた。

彩奈の《転送》は目に見えている範囲か行ったことのある場所にしか移動出来ない。いつもは正当な条件に感じるこれが今は厄介な足枷に感じられた。

 

「エクスさん、僕も準備 終わりました。」

「! て、哲郎さん その姿は……………!」

「いや、今は哲哉(てつや)って呼んでください。」

 

轟鬼族に変装した哲郎がエクス達の前に姿を現した。既に心身共に鬼ヶ帝国に行く準備は整っている。肩から下げている鞄には数日分の食料と着替えが入っている。

 

「彩奈さんも準備は出来てるみたいですね。

本当にすみません。事件終わりで疲れてるのに無理を言わせてしまって。」

 

流石に『本当ですよ』とは言えず、彩奈はただ黙って頷いた。受け入れたのは帝国に行くのはこの世界にとって非常に重要という部分も大きかった。

 

「テツロウ、お前にこれを渡しておく。使い方は昨日説明した通りだ。

後はお前に全て任せる。」

「はい。任せて下さい。」

 

帝国に行く方法は既に整えてあった。

まず 彩奈が魔法具の中に入ってもらって哲郎の鞄の中に魔法具を収納する。そして哲郎が空を飛ぶ事で帝国を囲む海流という問題を解決しようという手筈となった。

 

「……それじゃあ行きますよ 彩奈さん。

安心して下さい。絶対に落としたりしないって約束しますから。」

「……はい。 気持ちの整理はついてます。」

 

哲郎は小瓶の魔法具に『しまう』という意志を込めて魔法を発動し、彩奈は小さくなって魔法具の中に吸い込まれた。

 

「……この中ってお部屋みたいになってるんですよね?」

「ああ。彩奈の声は聞こえないがこちらから話し掛ける事は出来るはずだ。」

「分かりました。

彩奈さん、中に不満な点はありませんか?『はい』なら一回、『いいえ』なら二回 魔法具の壁を叩いて下さい。」

 

哲郎がそう言うと、中から『コンっ』という軽い音が一回鳴った。

 

「これは大丈夫 って事ですよね?」

「そうだな。その鞄の中には二重ポケットを拵えてある。魔法具はその中に入れろ。」

「分かりました。」

 

それで 哲郎のエクス達への出発の挨拶は完了した。国王への連絡を終え次第 帝国に向かう。

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