異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#216 Beginning ~Welcome to Empire~

「テツロウ君、君から話す事はそれで全部かね?」

「はい。帝国に転生者が居るという情報を得たので報告したいと思いまして。」

「そうか。 ならばこれを君達に渡しておく。」

 

国王は懐から四つ(・・)の水晶を取り出して二人に手渡した。

 

「君達も良く知る通話用の魔法具だ。

君達の間で連絡を取り合う事も私達に報告する事も出来る。それを使って少なくとも一日おきには私達の所に報告してもらいたい。」

「………………」

「? どうかしたか?」

 

水晶を品定めするようにまじまじと眺める哲郎を不審に思った国王が口を開く。

 

「報告はもちろんしますが、この魔法具に通話以外の機能とかはありますか?」

「一応 君達が使い慣れている物を参考にして照明機能と あと衝撃波を飛ばす機能も付けておいた。他に欲しい機能があるのか?」

「いえ、十分です。これだけあればどうにか出来ると思います。」

 

この言葉は嘘ではなく、実際にこの本来 通話用の魔法具の照明と衝撃波の機能が哲郎達の窮地を何度も救っていた。

 

 

「………じゃあそろそろ帝国に行こうと思います。着いたら直ぐに報告します。」

「ああ。 だがくれぐれも慎重に行動しろ。

着いても数日、少なくとも二日は帝国の現状の把握に尽力し、間違ってもこの証明書を誰かに見せようとはするな。」

「もちろんです。新しい情報は掴め次第 国王様に報告します。」

 

口から出た言葉は嘘では無いが、不法侵入の次は不法入国に手を染めなければならない事に少しだけ不安も感じていた。

 

 

 

***

 

 

 

「…………この方向だよな…………………」

 

哲郎は轟鬼族 哲哉(てつや)の姿で鞄を下げ、手に方位磁石を持って何も無い海の上を飛んでいた。出発して数時間が経ち、周囲には水平線だけで自分の進んでいる方向が正解なのか知る術が無い。

 

(………あの時(・・・)から時々 当たり前みたいに飛んでるけど、これが無かったらどうなってたのかな………………)

 

哲郎が空を飛ぶ事を覚えたのは魔界コロシアムの決勝があったからに他ならず、それが無ければ今頃 船に乗って向かっていたのかと そんな事を考えながら方位磁石が指す方向をひたすらに進んでいる。

 

「━━━━━━━あっ!!」

 

そんな時に哲郎の視界に変化が現れた。

ひたすらに続いていた水平線の一部が不自然な形で揺れ動いているのを目撃した。

 

「見えましたよ 彩奈さん! 帝国はもうすぐです!!」

『コンっ!』

 

出発から数時間ぶりの哲郎の声に安心したのか返事(壁を叩く音)が少しだけ軽快に聞こえた。

 

 

 

***

 

 

 

「……………これは………………………………!!」

 

哲郎の眼下には直径が何十メートルもある巨大な渦潮が大きな音を上げて波を立てていた。その渦潮は一つではなく複数の渦潮が組み合わさって水平線まで続いている。

 

(………これなら船で来れないってのも頷けるな…………。 ってかこんな波を乗り越えられる航海術なんてあるのか………………?)

 

海の上には巻き上げられた砂粒や石が点在しており、その全てが渦潮の中心へと引きずり込まれていく。この渦潮こそが鬼ヶ帝国を何者も寄せ付けない要塞へと変えた所以なのだ。

 

(ノアさんもこんな渦を越えて帝国に入ったのか…………。)

 

哲郎がこの渦潮を越えて帝国に着く事で自分はノアの次に鬼ヶ帝国に入国した人間という事になる。自分と彼の共通点は原理は違えど《空を飛ぶ》方法を持っているという事だ。

 

「彩奈さん。帝国はもうすぐですよ。」

 

彩奈の返事を待ってから哲郎は渦潮を越えて更に空を飛んだ。

 

 

 

***

 

 

 

「……………………!!!!」

「て、哲郎さん、 これって………………!!!」

 

結論から言うと、哲郎達は何の変哲もない海岸に降り立った。青い海と白い砂浜という極めて平凡で平和な光景が広がっていた。

 

「………あの、私達、これから何をすればいいんですかね……………?」

「国王様にも言いましたけど、当分は帝国の状態を把握する必要があるでしょうね。まずはこの国で使えるお金をある程度稼いで、この国の地図とかを手に手に入れる事を優先しましょう。」

「そ、そうですね…………………」

 

そこまで言って哲郎は水晶を取り出し、国王と通信を繋いだ。その様子を彩奈はただ黙って見ている事しか出来ずにいた。

 

(………私、本当に哲郎さんの役に立てるのかな……………? この前の宗教のやつみたいな事が何回も出来るの……………?)

 

彩奈は自分の手を眺めながら不安げに思考を巡らせる。自己評価が低いのは自覚はあるし直さなければならないと分かっているが、自分がこの国を救える光景がどうしても浮かんでこない。

 

「………彩奈さん? 彩奈さん、聞こえてますか?」

「っ!!? あ、な、なんですか!!?」

「国王様に『到着しました』と報告しましたから行きましょう。 お金は……………

そうですね、靴磨きでもしますか。」

「…………… そうですね。」

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