目の前の
山賊三人を軽々と制圧できる哲郎でもそれが出来るかと聞かれて自信満々に首を縦に振れる自信はない。
「……それで、お金が必要だって言ってましたけど、この地方にお金を稼げる当てがあるってことですか?」
「んだ。もうすぐこの近くで
そこで優勝したらば一気に300艮(300万円分)手にできんだ。その金で村のみんなを言い医者に診てもらうんだよ!!」
「武道会!? それに出るんですか!?」
「そうだ。おらにあんのはこの腕っぷしだけだからな。こいつで一つ村に恩を返してぇんだよ!!」
「………………」
(この国にも《魔界コロシアム》的なものがあるのか。
この人をうまいこと説得して代わりに僕が出場すればこの国のことをもっと深く知れるんじゃないか…………!?
よし!!)
哲郎は金埜に不利益を与えないことを最低条件にしてこの武道会を利用できないかと考えた。
(まずは武道会のことを詳しく聞くことから始めるか………………)
「と言っても、おらの村がこんなに貧しくなっちまったのは
「!!?」
「昔は病気が流行っても医者に見せるくらいは簡単にできたのによ…………!!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!! その話、詳しく教えて下さい!!!」
「?! お、おう。」
不意に金埜の口から無視できない言葉が出てきた。
***
かつてこの国を治めていた皇帝は全ての国民に平等に税金を使って医療などを提供していたが、その皇帝が新しくなると税金が使われる割合は首都である《
それが金埜の話の要約だった。
「んまぁ そういうこった。この辺はまだ恵まれてるみてぇだけどな。」
「……………………!!!!」
『て、哲郎さん!! これって……!!!』
この瞬間に直近の目標の一つである『貧民街の住人から疑惑の真偽を確かめる』ことが達成された。
「ってかそんなこと国に住んでる奴なら皆知ってると思ってたけどな?」
『!!!!』
金埜にとっては何気ない一言だったが哲郎達にとっては小さくても自分達の秘密が明らかになりかねない危険な綻びだ。
「あぁいや、実は僕達 この辺に住んでる訳じゃないんですよ。
僕達も元々は村の出身で、最近出稼ぎのために町に出てきたんですよ。だから僕達もこの辺の勝手はよく分からなくて…………」
「そっか。おらとおんなじか。」
「そうなりますね。
(……疑惑の信憑性もかなり高くなったしこの人ともだいぶ打ち解けたな。ここらで仕掛けるか!!)
あの、それでこれは僕からの提案なんですが、その武道会、僕が代わりに出るという訳にはいきませんか?」
「は??!」
「…戸惑うのも無理はないと思いますけど、話だけでも聞いて下さい。
さっきも言ったように僕達は出稼ぎを考えていて、それこそ長期間 安定した収入が必要なんです。その為には少しでも良い就職先が必要なんです。だけどただの村人に過ぎない僕達じゃそれも難しいじゃないですか。
ですから僕が武道会で優勝すれば有名になっていい所に就職できると思うんです。
もちろん賞金は全てあなたに渡します。別にあなたは試合がしたいわけではないでしょう?こういう言い方は失礼かもしれませんけど悪い話ではないと思いますが……。」
「そりゃおらも願っても無いけどおめぇの腕は確かなのか?
悪ぃけど少なくともおらよか強くねぇと代わりは任せらんねぇぞ。」
「……確かにもっともな疑問ですね。
これは証拠になるかは分かりませんが…………」
「!!!!? お、おめぇ、そりゃ…………!!!!」
哲郎は懐から手持ちの一艮札 三十枚を取り出した。金埜はそれを神聖なものを見るかのような目でまじまじと凝視している。
「す、すげぇ…………!!!
紙の金なんて実在したのか…………!!!」
「じつはここに来る前にちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまいましてね。その過程で山賊を三人、成り行きで取り押さえることになりまして。
これはその三人の首にかかっていた懸賞金なんです。」
「さ、山賊をとっ捕まえて懸賞金を…………!!!
信じらんねぇ…………!! まるで絵物語みてぇだ………………!!!」
(絵物語? マンガみたいなものか。)
哲郎のこの話は何一つ嘘ではないが何も知らない金埜の耳には現実味のない話として聞こえたのだろう。
「それで、どうでしょうか? 別に無理にとは言いませんが………」
「なに戯けたこと言ってやがんだ!! この話ば聞いてやだと言わねぇ奴ぁいねえよ!!!
おめぇになら全部任せられそうだ!! 一緒にお互ぇの村ぁ助けようじゃねえか!!!」
「 はいっ!!」
こうして哲郎が金埜の代わりに武道会に出場することが決まった。
自分がこれからやろうとしている事は金埜にはメリットしかないし帝国やその他の国々を救う事にも繋がるのは間違いないが、その一方で金埜に嘘をついていることに対する罪悪感がないわけでもなかった。