武道会といえば自分の能力を最大限に発揮できる場所である事はほとんど間違いなく、帝国の要人達の注目を集める可能性もある。(違法)入国した哲郎達にとって最短距離と呼んで差し支えない程の方法だ。
「金埜さん、まずはその武道会の事を詳しく教えていただけますか?」
「おう。この八重宮地方のな━━━━━━━」
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それが金埜が出場しようとしていた武道会の名前である。その開催地は八重宮地方の《
鬼ヶ帝国では魔法よりも武術の方が発達しており、武道会は数年に一度 国中から選りすぐりの武道家が集まってその腕を競い合う場所である。
そして武道会で優秀な成績を修めた者は帝国の権力者の目に留まり、警護や奉仕などの職に就ける可能性もある。金埜のような人間にとっては正しく一発逆転も狙える魅力的な場所だ。
それが金埜が知っている武道会の情報だった。
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「呑宮……
聞いたことない場所ですね。ここから近いんですか?」
「さぁな。おらもここに着いたばっかだからどこにあるかなんて分からねぇ。
お前ぇは知らねぇのか?」
「この国の地図ならさっき買ったんですけど、これに載ってるかどうか……」
そう言って哲郎は懐から地図を取り出した。ついさっき購入して金埜を見つける直前まで見ていたものだ。
帝国の全体像が書いてあるページを開いて八重宮地方の紹介を見るが蕐朶の事も呑宮の事も名前は書いてあるが詳しい場所は分からない。
分かったのは今いる蕐朶と呑宮とがそう遠くないという事だけだ。
「……やっぱりこの地図じゃ詳しいことは分かりませんね。せめてここまでの行き方くらいは分からないと……
(そもそもこの国の交通がどれくらい発達してるかも知らないし……………… せめて鉄道くらいあればいいんだけど……………)」
「んだ。おらも呑宮の事ぁほとんど知らねぇからな。」
「………………」
自信満々にそう言う金埜の姿を見て哲郎は村に危険が迫っているとはいえ流石に無鉄砲すぎるだろう。自分ならもっと準備を整えてから出発する と思った。
尤もここまでの冷静さはこの世界で潜り抜けた経験によるところが大きいが。
「それでもうすぐ夕方ですけど、今日はどこで寝るんですか?」
「そうさな。最初はあそこでごろ寝してやろうと思ってたんだがな。」
「(やっぱりか…………)
分かりました。僕も今日はこの辺の宿に泊まる予定ですからあなたの部屋も一緒に取りますよ。」
「!!? ほんとか!!?
ああいや 出来ねぇよそんなこと!!ただでさえもう粥を一杯ご馳走になっちまってんだから!!」
「そしたら野宿するんでしょ?
夜の寒さに当てられたり魔物に襲われたりしたらどうするんですか?それこそさっきのお粥が無駄になりますよ。」
「………それもそっか。じゃあ言葉に甘えさせて貰うか。」
首を縦に振った金埜を見て何で自分は腹を空かせて行き倒れていた子供を相手にこんなに不機嫌な気持ちになっているんだろうか と自分に問いかけた。
***
満臣の店を出て数時間後、しばらく歩いて哲郎達は蕐朶の町の外れにあった格安の旅館に着き、そこの二部屋を取った。
金埜の身体状態を考慮して寝巻や洗面具が予め用意されていることは確認済みだ。
そして今は三人で机を囲んで夕食を口に運んでいる。宿泊費には不揃いなほどしっかりとした御膳料理だ。
「済まねぇなぁ。寝床や食事まで世話になっちまってよ。
おら人にこんなに親切にしてもらったのなんて村の奴以外じゃ初めてだ。」
「(…僕もあんな大金を手に入れたのも人に奢ったのも生まれて初めてだよ。)
いいんですよ。あなたのおかげで僕達の予定もスムーズに進みそうですから。」
「? すむうず?なんだそのすむうずってのは。」
「!(あそっか。この国にはスムーズって言葉がないんだ。)
スムーズっていうのは僕たちの住んでるところの方言みたいなもので、物事が順調に進むことですよ。」
「そっか。まだまだおらの知らねぇ事があるんだなぁ。」
(うん。主にアウトドア関係がね。)
金埜の能天気ぶりに疲れつつもまだまだ帝国民の振りをする努力が足りていないと自省した。このままでは自分達がよそ者である事が見抜かれてしまうかもしれない。
「しかしよ、部屋は二つだったわけだけど、お前ら二人で寝んのか?
ってかそもそもお前らってどんな関係なんだ?もしかして家族か?」
「そうなんです。実は僕達
「へぇ。そうには見えねぇなあ。」
「はい。よく言われます。」
「………………。」
武道会の話題から一言も話せずにいた彩奈はこの時料理を口に運びながら『絶対にこの人にも