虎徹に帝国の救済への協力を承諾してもらい、話は次の段階に入る。哲郎がこの場でどうしても知っておきたいのは彼女の《能力》だ。
「虎徹さん。そんな写真で良いならいくらでも用意出来ます。ですから教えて下さい。
虎徹さんの《
「!
……良かろう。じゃがそれならば主らからも明かして貰わねば困る。それを知らねば彼奴を倒す術も考えつかんじゃろうて。」
「!! 分かりました。
彩奈さん、聞いた通りですが良いですね。」
「………はい。ですけど私の口からは…………
哲郎さん、代わりにお願いします。」
「…………………
分かりました。」
俯く彩奈を見て哲郎は彼女の申し出を快諾した。哲郎にとって《いじめ》とは人伝に聞いただけの縁の無い存在だが、彼女がそれを経験している以上 無闇に口に出させる訳にはいかない。
***
「……………成程。
中々に見込みのある《能力》のようじゃな。」
「はい。僕もこの能力に何度助けられたか分かりません。もちろん彩奈にもね。」
十分以上をかけて哲郎は自分と彩奈の能力と過去を簡潔にではあるが説明し終えた。全てを事細かに話してしまうとゆうに数十分は超えてしまいそうだからだ。
「次は虎徹さんの番ですよ。
ちゃんと教えて貰いますからね。貴女の《能力》を。」
「逸るで無いわ。物事には順序というものがあるじゃろう。
それにじゃ、ワシはそれを既に主らの前で使っておる。」
『!!!!?』
その言葉を聞いた瞬間、哲郎の頭の中では虎徹と出会った時点から今までの情報が物凄い速さで再生されていた。彼女が
しかし一つだけ哲郎の頭の中で一つだけ引っかかっていた事が候補として浮上した。
「………………もしかして、
「お、気付いたのか?」
「はい。ここに入る前に金埜さんが見せたあのおかしな動き。可能性があるとしたらそれ以外にありません。 そうでしょう!?」
哲郎の推測を聞き終えた虎徹はしばらくの間 目を閉じて沈黙を続けた。
そして徐に口を開く。
「正解じゃ。こうして
『!!?』
その瞬間、虎徹の指先に変化が訪れた。
彼女の指の爪が黒く変色し、そこから黒い液体が染み出す。
「そ、それは…………!!?」
「何の事は無い。これは《
無論じゃがただの墨汁とは訳が違う。こんな風にな。」
「!!?」
虎徹は指を弾いて指先に溜まっていた《墨汁》を哲郎の目に向けて飛ばした。墨汁が眼球に当たった瞬間、彼の視界の半分が黒く染まった。
「!!!!?
こ、これは………………!!!!」
「そうじゃ。主の眼を
まぁそう案ずるでない。ワシの一存で解除は出来るしそも主の《能力》ならば━━━━━」
「言われなくてももう《適応》しましたよ。」
「そうか。流石 使い慣れているだけあるな。」
虎徹の能力は《墨汁》。
その墨で塗り潰された物はその機能を失い、そして彼女の支配下に置かれるのだ。
「でも、それでどうやって金埜さんを操ったんですか?」
「逸るで無いと言っとるじゃろうが。ワシの能力にはもう一つ効果があるのじゃ。
先刻ではあの小僧を少しだけ塗り、そこに墨で
『!!!?』
虎徹の能力は大きく分けて二つあり、金埜に使った能力が大きな役割を果たす。
彼女は墨で塗り潰し支配下に置いた物に新しい性質を《書き加える》事が出来るのだ(この時に支配下に置く事は出来なくなる)。
「尤も後者は多用は禁物じゃがな。先刻は他愛も無い事じゃったから少なく済んだが下手な性質を書き加えようものなら多量に体力を持って行く。そもこの《
『………………………!!!!』
虎徹は謙虚そうな表情で能力の弱点を口にするが二人の耳には最早それも弱点にすら聞こえなかった。仮にそれが弱点であったとしても、能力自体がそれを補って有り余る
こと攻撃力が弱点の哲郎と自分の能力にまだ自信が持てない彩奈の耳には尚更の事である。
「して、そこまでの強さを持ちながら何故 この国を救う為に動いていないのかと疑問に思っておるじゃろう。
実を言うとじゃな、主らが来るより前から行動自体は起こしておるのじゃ。彼奴が来てからは毎日のように身体から《
再び指先に墨汁を溜めながら虎徹は徒にそう呟いた。