異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#233 Prolog of The Colosseum ~Higher Arts~

「《哲哉》選手、

刹喇武道会への出場登録を受け付けました。」

 

時間は経って鬼ヶ帝国の一大行事である武道会が行われる日となった。そして哲郎が昨日 顔を見せに来た受付に昨日の受付嬢(翰廼)とは違う受付嬢の声が響いた。

 

 

***

 

 

虎徹との接触を完了させた哲郎達は残った時間を消費する事になった。

甘味処を出た時に虎徹とは一旦別れ、明日また落ち合う事で話が付いた。その後に虎徹は金埜に書き加えた《文字》を解き、合流した三人は呑宮の町を散策して時間を潰した。その際、金埜は甘味処に入ろうとしなかった事を覚えていたが、その事を気にも留めていなかった。

また、金埜の信用を得るために散策を続ける間も帝国の内情を少しでも把握するために観光客のふりをしてそれとなく聞き込みを続けた。しかし金埜の樫梛村とは違い首都から回ってくる税金の割合が高いのか帝国の現状を肯定する意見が多く、哲郎が期待したような収穫は得られなかった。

 

そして夕方に山賊団を捉えて得た三十艮を再び崩して呑宮の格安の宿に泊まって夜を過ごした。彩奈から無闇に使いすぎでは無いかと言われたが帝国に長居する気は無いし国を出たら艮札など紙切れ同然になってしまうから出し惜しむ意味も無いだろうと言って納得してもらった。尤も哲郎も彩奈の言い分を分からない訳では無かった。故にこの一件を片付けたらお金の使い方を勉強しようと思い、それを謝罪の代わりとした。

 

そしてその部屋で国王と通信をし、明日武道会に出る手筈が整った事、そして例の《転生者》虎徹との接触に成功した事を報告した。国王は虎徹の名を聞いた時は首を傾げていたが『エクスさんに聞けば分かります』とだけ言って多くは語らないでおいた。

 

そして十分な睡眠を取って現在に至る。

 

 

 

***

 

 

 

「哲哉選手、控え室はこの奥になります。

なお、付き添いの方達はこの先には入れませんのでご了承ください。観客席へご案内します。」

 

哲郎は哲哉として何人もいる受付嬢の一人に案内され、付き添いで来た彩奈(杏珠)と金埜は一旦別行動になった。なお、まだ虎徹とは合流出来ていない。

控え室に行くまでの道中で様々な轟鬼族と出会い、その全員が哲郎を訝しむ視線を向けて来た。本来 哲郎扮する哲哉は武道会に出場する条件も正式な手順も踏んでいるので問題は無い。故に彼等は自分を人生逆転を狙って武道会に挑戦したしがない村の子供と思っているのだろうと結論付けた。

 

「━━━━━━━━━━━━━おい、

おいコラ、お前だよお前!!」

「?」

 

控え室に通じる廊下は全くの静寂という訳ではなく多少の話し声は常に聞こえ、それ故に不意に聞こえてきたその声が自分に向けたものであると気付けなかった。

声の方向に視線を向けると筋骨隆々の大男が哲郎に睨みを効かせている。

 

「……失礼ですが、あなたは?」

「俺ァ岱輻(だいや)ってもんだ!! 一矻(いっこつ)地方じゃ少しは名の通った武道家だぜ!!!」

「そうですか。そんな人が僕に何の用ですか?

(確かゼースさんに会った時もこんな感じだったな。だとしたらどうせここはこんな子供が来る場所じゃないって難癖を付けて………………)」

「試合まで待ちきれねぇんだよ!!

少しで良いから俺と手合わせしようぜ! な!」

「?!」

 

予想と正反対の岱輻の申し出に哲郎は面食らった。無論試合時間以外の選手同士の闘いは小規模であっても厳禁となっている。

 

「だ、駄目ですよそんなの! もう少しで大会が始まるんですから━━━━━━━━━━━」

「そうですよ。その子の言う通りです。

大の大人がみっともありませんよ。」

『!?』

 

通路の奥から四十代程と思われる女性が歩いて来た。穏やかな表情に加え、着物に身を包んでいるその風貌は武道会の選手とは一線を画している。

 

「あ? なんだよオバさん。あんたみてぇなひょろひょろの女じゃ遊び相手にもならねぇよ。ケガしたくなかったらさっさと━━━━━━━」

「まぁまぁ そう仰らずに。」

「?

ッッ!!!!?」

「!!!?」

 

着物の女性は徐に岱輻の手首を掴んだ。

すると次の瞬間に岱輻の両足が崩れ、大きな音を立てながら片腕を上げてうつ伏せに倒れた。

 

「痛でででででででででででででで!!!!!」

「…………………………!!!!!」

 

哲郎は目の前で起こる光景に圧倒されていた。

たった今 着物の女性が行った事自体(・・)は哲郎が一番良く知って全幅の信頼を寄せる合気(マーシャルアーツ)そのものだが、彼が圧倒されたのはその精度(・・・・)故である。《適応》を抜きにすれば哲郎のそれをも上回る可能性すらある。

 

「ただのオバさんだと思ったら大間違いですよ。

私は《磯凪(いそな)》。憚りながらもこの武道会で殿堂入りさせて頂いてます。」

「!!!」

「お騒がせして申し訳ありません。こういう場所には血の気の多い人が時々現れるんですよ。哲哉選手、控え室へは私がご案内します。」

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