「さぁさぁ皆様、大変長らくお待たせしました!!! 只今より、《刹喇武道会》の開催をここに宣言致します!!!!
全国各地から我こそはと集まった腕に自信を持つ者達、その数なんと六十四名!!! 今日この日、彼等は己が誇りを掛けてぶつかり合うのです!!!
その目的は様々、賞金を狙う者、成り上がりを狙う者、それ以前に自身の腕を見せ付ける者も居るでしょう!!!!
しかしその目的は問題ではありません!!! 勝ち抜いた者だけが目的を実現できる!! それのみがこの武道会の掟なのです!!!
ただ一つ確信している事は、今日この日が帝国のこの一年で最高の一日になるという事です!!!!!」
拡声器を持ってその歯の浮くような口上を叫んだ男に誘発されるかのようにその場に居た者達、観客席に座っていた者も武道場に立っている者も、
そして例外は他にも居る。観客席の一番上にある玉座のような椅子に座っている
(…………あの人達が
その九人とは、哲郎が先程見た皇帝に仕える八人の男達と虎徹の九人だ。この武道会において、特別扱いの人間としてあの椅子に座っているのだ。そしてその場に居た全員が拡声器を持つ男を見ている中、哲郎だけがその九人を見ていた。本来なら目立つ行為のはずだがこれから始まる武道会の盛り上がりに当てられたのかそれを指摘する者は一人もいない。
(…………僕の番はしばらく後だよな。
少し轟鬼族同士の試合を見たら、少しだけ寝ようかな…………………)
欠伸を出す事こそ無かったが帝国に入ってからの哲郎はずっと緊張続きで睡眠の
だからこそ哲郎は轟鬼族の情報をある程度仕入れたら残りの時間は全て
***
武道会の開催から数十分後、最初の試合が始まろうとしていた。
『さぁさぁ皆様、遂にこの刹喇武道会の最初の試合を始めたいと思います!!! 武道会の一の集、第一試合から目が肥えるような組み合わせが揃っております!!!』
武道会の闘技場で二人の筋骨隆々の男が相対している。
観客席に座った哲郎もその様子をまじまじと見つめている。闘って負ける事はまず無いだろうが、闘い方を見て得られる物はあるという事も確信している。それが来たる《転生者》との一戦に役立つ情報ならば尚更だ。
『さぁ東の方角にはこの男!!!
片や西の方角にはこの男が立っている!!!
両名共にこの大会で優秀な成績を収めている実力者です!!! その実力は皆様も知る事でしょう!!
しかし彼等が拳を交える事は今日までありませんでした!! どちらが勝つのかは誰にも分かりません!!!!!』
二人の間に体格差は無く、彼等の身体の筋肉も見せかけのそれではなく闘う事の為に鍛えられたものであると哲郎も理解した。
この武道会で優秀な成績を収めてもなお 皇帝の近辺で働いていないのは偏に彼等が生粋の格闘家だからだろう。
『さて皆様、この武道会の唯一絶対の掟はご存知ですね?
そう。殺害。それ以外の全てが肯定されます。今日の試合での負傷は勲章として誇るべきであると、ある高名な武道家も残しています。』
この《殺害以外の全てを認める》というルールは哲郎が経験した魔界コロシアムと全く同じだった。この鬼ヶ帝国では格闘術だけでなく武器術も武道として認められているのだ。
『さぁ遂に闘いの火蓋が切って落とされようとしております!!!』
「殺害以外の全てを認めます。
両者 構えて!!」
審判の男の口上は奇しくも魔界コロシアムのそれと全く同じだった。それに従うように二人が各々の構えを取った瞬間、会場に張り詰めたような緊張が走る。
「始めぇ!!!!」
「おりゃあああああああああぁぁぁ!!!!!」
「でりゃあああああああああぁぁぁ!!!!!」
ドゴォン!!!!! 『!!!!!』
始めの合図と共に二人は地面を蹴って距離を詰め、彌槌の正拳突きと弥剱の回し蹴りが激突した。攻撃がぶつかり合う炸裂音と爆風が観客席まで届き、先程まで熱狂に包まれていた観客を、哲郎を含めて全員を黙らせた。
観客達の感情は一瞬にして熱狂という興奮から緊張へと変わったのだ。そしてそれは哲郎も例外では無い。魔法の才が無い分、轟鬼族という種族の筋力や格闘術の水準の高さを実体験として理解させられた。
***
哲郎が最初の試合を見ている時と同時刻、
「…………………………!!!!
す、凄い…………!!! これが(轟鬼族の)試合……………!!!!」
「んだ!!! おら、こんな所に出ようとしてたんだなぁ…………!!」