異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#245 The Silver Darkshadow 1 [Assassin on the Colosseum]

「……………………………

よし!」

 

虎徹が出払った後、哲郎は座り込んでしばらくの間 思考を巡らせていた。しかし意を決して立ち上がる。これ以上考え込んでも埒が明かないと思ったからだ。

 

(とりあえず、外の空気でも吸って来るとしよう。それにそろそろ試合も近づいているでしょ。)

 

 

 

***

 

 

(…………うわぁ、分かってはいたけどやっぱり凄いなぁ………………。)

 

外に出た哲郎を待っていたのは痛々しい負傷した武道家達の姿だった。腕を吊っている者も居れば顔に包帯を巻いている者も居る。

 

(………そう言えばこの国の医療ってどうなってるんだろ? 回復魔法が使える人とか居るのかな?

それとも轟鬼族が頑丈なのかな……………)

 

哲郎はかつて魔界コロシアムの場でレオルの目を潰した経験がある。そんな事が出来たのは偏に回復魔法という存在があったからだ。それが無ければ決意は固まらなかっただろう。

 

「おいおい早く急げ!!」

「さっさとしねぇと見れなくなっちまうぞ!!」

「!?」

 

怪我人達に気を取られている所に前方から慌てる様子の声が聞こえて来た。視線を向けると手当を施された男達が試合会場に向かっている。

 

「すみません。 どうかしたんですか?」

「どうしたもこうしたもねぇよ!! 次の試合は凄ぇぞ!!! 透桃って奴がまた暴れるんだ!!!」

「!!」

 

透桃

彼女はつい先程 大金星を上げて哲郎と接触した少女だ。彼女もまた武道会に勝利する目的があり、同じ三の集に振り分けられた武道家だ。

彼女の試合が見れる事も無論の事だが哲郎は別の事に驚いていた。

もう既に三の集の二回戦が始まろうとしているという事だ。

 

 

 

***

 

 

『さぁ皆様!!! 波乱の展開が続く二回戦もいよいよ折り返しに差し掛かろうとしています!!!

そして、その始まりを飾るに相応しい対戦がここに実現しました!!!

東の方角には彼女、前試合にて優勝候補 崹按選手を華麗な動きで打ち破って見せた若き新星!!

透桃選手!!!!

続いて西の方角!!! 黒い服に身を包み、流れるような動きで勝利を掴んだ、《灘馳(せば)》選手!!!』

 

透桃の前に黒い服に身を包んだ男が立っていた。顔の下半分も黒い布で覆い、前髪も長く片目が隠れている。

 

『そしてこの灘馳選手には驚くべき秘密が隠されていたのです!!! 彼の要望でこれを明かすのは二回戦以降となっておりました!!!』

「!?」

 

実況の男の口から出たのは試合開始の合図ではなく灘馳という男の謎を明かすというものだった。それに触発されたのか観客席からは少しばかりざわめきや野次が起こった。

 

『なんと!!! この灘馳選手、かつて鬼ヶ帝国に栄えた伝説の忍、《灘驍(せぎょう)》の血を引く男にして、妖術使いだと言うのだから驚きです!!! そして事前申請した事により、この武道会の場でも使用が認められております!!!!』

(!!? 忍!? 妖術使い!?

それって確か……………!!)

 

実況の男の口から出た『忍』と『妖術使い』という単語に哲郎は聞き覚えがあった。それは帝国に行く前の事前情報としてノアから聞いた情報だ。

二千年前の帝国には忍という職業があり、彼等は諜報や用心棒などを生業としていた。そしてその第一人者の一人として帝国の歴史には《灘驍》という人物が偉人の一人として語られている。

もう一つの情報である妖術使いは結論から言うと魔法使いと同義である。轟鬼族は魔力が乏しく筋力が優れているのが普通だが、例外的に魔力に恵まれた種族が存在する。帝国では魔法を妖術と呼んで扱い、鎖国体制によってそれは独自の進化を遂げた。そして灘驍も優れた忍であると同時に優れた妖術使いとして名を馳せていた。

 

「殺害以外の、全てを認めます。

両者、構えて!!」

 

透桃と灘馳は構えという構えは取らなかった。

両者共に身体を半身に移動させただけの構えとは呼べないものだったが、臨戦態勢に入った事は明白だ。

 

「始め!!!!」

 

試合開始の銅鑼が鳴ったが、両者は動きを見せなかった。ここまで言葉らしい言葉は全く発していない灘馳だったが、思考を巡らせていた。

 

(………さぁて、どうしたもんか…………………

もう妖術使っても良いんだがな。いかんせん手の内が見えねぇし。やっぱ小手調べから━━━━━━━)

「ッ!!!?」

 

後に灘馳は透桃から目は離していなかったと語っている。しかし透桃は一瞬で灘馳との距離を詰め、懐に飛び込んだのだ。

 

「うおわっ!!!?」

 

武道会の場で初めて灘馳は声を出した。

透桃は灘馳の首を狙って指による攻撃を放った。それを灘馳は上半身を引いて躱す。

 

『い、行ったァーーーーー!!!!

先手を仕掛けたのは透桃選手!!! 一瞬で距離を詰め、強烈な貫手を繰り出しました!!!

しかし灘馳選手はそれを躱す!!! なんという早業!!! 我々の目には何が起こったのか確認できませんでした!!!!』

 

「………………ッ!!」

 

透桃の貫手は急所は外れたが頬に切り傷を与えた。そして灘馳だけが透桃の異常な速さの謎を理解した。

 

(………………!!!

今の、間違いなく忍がやってる動き方だった…………!! ここまでやられちゃ仕方ねぇ。

ちょっと早いけど妖術 解禁するか!!!)

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