かつて鬼ヶ帝国に栄えた忍という職業。
彼等が使用する失われた基本技術が存在する。それを身に付ければ武術において圧倒的な有利を獲得する事が出来る。
そして哲郎もそれを視認し、そして理解する事が出来た。それが忍特有の技術である事は知る由もないが、透桃の移動の謎を解く事が出来た。
(…………さ、《
今の透桃さんの動き、漣にそっくりだ…………!!!)
漣
それは哲郎が身に付けている魚人武術の技の一つであり、その正体は精度の高い《膝抜き》である。身体の力を抜いて一瞬浮かぶ事で全身の関節を自由にし、移動したい方向に身体を傾ける。そうする事で筋力で動くよりも素早い移動を可能にする。
魚人武術によって高められたそれは更なる速度を獲得した。そして帝国、延いては忍も同様に独自の移動方法を可能たらしめたのである。
***
(す、凄い…………!!! 首に当たったと思ったのに……………!!)
(すっげえな。絶対に躱したと思ったのによ。忍の特訓をサボったつもりは無いんだがな……………
にしても今の動き、こいつまさか…………………)
「なぁ、あんた……………、」
「っ!?」
灘馳は先程 武道会の場で初めて声を出し、この時に初めて言葉を発した。
「もしかしなくてもあんたの先祖様、《
「!!? と、とうぜん…………!!?」
「だったらそんな名前を聞いた事が無いか? その界隈じゃ結構有名な名前だと思うんだが。」
透臶
その名前が灘馳の口から出ると観客席から再びざわめきが起こった。帝国の歴史に詳しい者にとって有名な名前だからだ。
彼は灘驍と同年代に活動した忍であり、歴史上の偉人の一人として語られている。歴史愛好家の間では灘驍と透臶のどちらが優れた忍かというのが格好の議題となっている。
「そ、そういう名前なら一回だけ聞いた事ありますけど……………
一回 ご先祖さまにどんな人が居るか調べた時に……………」
「……………………
(やっぱりそうかよ……………)」
試合が突如として中断し、そして明らかになった(本人も知らなかった)透桃の秘密に観客席からは更なるざわめきが起こった。その事が事実ならば時を超えて帝国に名を馳せた二人の忍の血を引く者の対戦が実現した事になるからだ。
そして灘馳は今のやり取りで全てを確信した。目の前の少女は透臶の血を引く者であり、現代に復活したくノ一と呼べる存在であるという事を。そして自分の全力を以て迎え撃って然るべき相手であるという事をだ。
『なんと!! まだ可能性の範疇ではありますがなんと!! 透桃選手にあの透臶の血が流れている可能性が浮上しました!!!
現代に復活した二人の忍が相対するこの対戦は、ここからどのような展開を見せるのでしょうか!!!』
「………あの、すみません。」
『!?』
緊迫した試合の最中、灘馳は徐に手を挙げた。
声を掛けながら審判の男が灘馳に駆け寄る。
「灘馳選手、どうかしましたか?」
「ちょっと早いとは思うんですけど、もう妖術を使っても良いですよね?」
「はい。事前申請は完了しておりますので問題はありません。」
「はい。」
その言葉を聞いて透桃は身構えた。灘馳が妖術を解禁する、即ち全力を出すと宣言したからだ。
灘馳は懐から紫色の巻物を取り出し、広げた状態で空中に留まった。鬼ヶ帝国では
「…………透桃さん だったか?
あんたは俺が思ってた以上に強そうだから、こっからは加減は無しで行くぞ。」
「…………………!!!」
数秒の間、息を飲むような緊迫した時間が流れた。透桃自身
そしてそれは突然に訪れた。
金属創成妖術
《
「!!!! うわっ!!!!?」
(!!! これを躱すのかよ!!!)
灘馳の
そして透桃は上半身を引いて手裏剣を躱した。手裏剣は反動で闘技場端の壁に突き刺さった。その事が示していたのは灘馳の
『しゅ、手裏剣だァーーーーー!!!!!
なんと灘馳選手、妖術で手裏剣を作り出した!!! なんという妖術の精度!! これが灘驍の血を引く者の実力なのか!!!!』
透桃は背後に広がる光景に愕然としていた。自分の妖術の威力に驚愕する透桃に灘馳は追い討ちと言わんばかりの言葉を掛ける。
「………………!!!!」
「悪いけどこれくらいの事は簡単に出来るぞ?
武器術も武術の内なら妖術だって忍が持つ立派な技だ!!!」