異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#253 Tiger Triple Stinger 4 [Shotgun of Drop]

魚人波掌

それは鎖国国家に住まう轟鬼族は磯凪という唯一の例外を除いてその存在すら知らない代物であり、何故哲哉(哲郎)がそれを使えるのかと聞かれれば『ラミエルに教えられたから』と答える他に無いだろう。彼女はこれこそが哲郎の乏しい筋力を補う唯一の方法だと考え、哲郎にそれを教えた。事実、哲郎の魚人武術の熟練度自体(・・)は全世界で見ても下から数えた方が早い程度に留まっている。

 

そして哲郎が寅虎との試合の場で使った技 《瀑渦》は相手の身体を傷付けることよりも身体を吹き飛ばす事に特化している技である。

そしてそれが寅虎の身体に当たった時、彼女の身体は浮いていた(・・・・・)。この事は重要な意味を持つ。

 

 

 

***

 

 

 

━━━━━━━バチィン!!!!! 「!!!!?」

『ふ、吹っ飛んだァーーーーーーーーーー!!!!!

聞いた事の無い爆音と共に寅虎選手の身体が飛んで、そして、そして観客席の反対側まで飛んで行きました!!!!!』

 

引っぱたく(・・・・・)轟音が聞こえた瞬間に観客達は蜘蛛の子を散らしたようにその場から離れ、寅虎の落下地点を作った。そこに激突した事により、再び危険行為による失格という憂き結末は免れた。

 

 

(━━━━━何が起こったの? また吹っ飛ばされたの………?

もしここが今まで居た場所の反対側だってんなら今度こそすぐには来られないはず。

…………いや、あいつの事だ。また何か変な事して)

「ッ!!!!?」

『な、何だ!!!?

哲哉選手が━━━━━━━!!!!!』

 

その瞬間、寅虎は三つの感覚と行動を同時に行った。

一つ目は耳が弾けるような軽い音を感じ取った事。二つ目は目が哲哉の姿が消える光景を捉えた事。三つ目は上半身を前に倒した事だ。

寅虎は自分が何故その行動を取ったのか瞬時に理解出来なかった。上を向いた目が空中で足を伸ばした哲哉の姿を捉えて漸く自分の行動の意味を理解した。

 

(そうか。私は避けたんだ(・・・・・)

これって前の試合で見た変な蹴りと同じ……………)

(す、凄い!!! これを躱すのか!!!

僕が思ってたよりこのやり方は万能じゃないのか……………)

 

哲郎が取った行動は寅虎の推理通り、観客席の反対側に飛んで行った寅虎に向かって指を鳴らし、その音に追い付けない(・・・・・・)状態に《適応》して自分の速度を音速にまで引き上げ、その勢いのままに蹴りを放つというものだ。

しかし寅虎はその蹴りを躱して見せた。

無意識の内に相手の力量を人間族(自分)の尺度で計ってしまっていた哲郎の予測を寅虎、延いては轟鬼族の反応速度が上回った形だ。

 

(避けられたから隙だらけになっちゃったね。

悪いけど逃がす訳にはいかないよ!!)

(避けれた(・・・・)なら撃って来るでしょ。

だけど、避けられたなら避けられたなりの対策は考えてますよ!!!)

「!!?」

『あーーーッ!!!

こ、これは━━━━━━!!!』

 

寅虎は上半身を倒した体勢を利用して上の哲郎に向けてかち上げる蹴りを放った。それを哲郎は躱して足首を掴み、身体を捻って寅虎の身体を宙に浮かせた。

 

「うりゃあっ!!!!」 「!!!!」

『な、投げたァーーーーーーー!!!!

寅虎選手の身体が一直線に地面に飛んで行く!!!!』

 

哲郎は寅虎を投げ飛ばし、彼女の身体を闘技場に向かわせた。強制的に闘いの場を観客席から闘技場に戻す。しかしそれに利点がある事を寅虎は投げられる最中にも見抜いていた。

それは武器が使えるという事だ。

 

(ありがたいね。わざわざこっちがやりやすい所に投げてくれるなんて。

こっちに来たと同時にママの刃で沈めてあげる!!!!)

 

寅虎は投げられて落下している最中にも背中から武器を取り出し、哲哉(哲郎)を迎え撃つ準備を整えていた。

しかし哲郎はそれを予測した上で寅虎を闘技場へと投げたのだ。この時に哲郎は既に寅虎を出し抜く策を講じていたのだ。

 

(地面に着いたら武器を抜くでしょう。それは僕も織り込み済みですよ!!! だから!!)

「それ貰います!!!」

「えっ!!?」

 

哲郎は寅虎を投げた瞬間に観客席に居た男が持っていた水筒を半ば強引にひったくった。心の中で申し訳ないと思いながらと水筒を一瞬傾け、出てきた数滴の飲み物で掌を濡らす。

哲郎が求めていたのは自分の掌が濡れるという状況だ。

 

(さぁどう来る?

どこから突っ込んで来ても対応してみせるよ!!!!)

魚人武術 《水切り》!!!!!

「!!!!?」

『な、何だ!!!?

哲哉選手の掌から━━━━━━━!!!!』

 

哲郎は手を振って掌を濡らしていた水滴を飛ばした。脱力した動きは速く、速さはそのまま威力となって水滴を弾丸という武器へと変えた。

 

(水を引っ掛けて目潰しでも?

甘いよ!!!)

ズバババババッ!!!!

『!!!

い、寅虎選手 水滴を弾いたァ!!!!』

 

寅虎は持っていた三節棍を振り回して盾を作り、哲郎が飛ばした水滴を弾いて防いだ。

しかし、哲郎はそれも予測していたのだ。

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