新聞とは今の哲郎にとっては唯一と言っても過言では無い程重要な情報源であり、それは鬼ヶ帝国に居る今も例外では無かった。
そして今 哲郎は今までで一番とも言えるほど重要な情報を新聞から得ようとしている。
『帝国全体の脅威!! 新たな犯罪組織の発足か』
それが、寅虎が持つ新聞記事の裏面に載っていた記事の見出しだった。山賊はそれ以前からも山奥に拠点を構えて様々な悪事に手を染めていたが、十五年前から不自然なまでにその動きに組織性が出た事や被害の規模の拡大が取り上げられていた。
山賊団の名前はまだ不明だと書かれていたが、前後の内容から考えてそれが《荒河山賊団》についての内容である事は容易に想像出来た。
「…………これって多分荒河山賊団ってヤツの話だよね?
確か君がトラブったって言う。」
「はい。成り行きとはいえ構成員を三人 捕まえてしまいました。言うまでもなく奴等は僕を
「そうかな? そんな下っ端の為にわざわざ戦力を減らすような危険を犯す?
こんな事言ったらあれだけど下っ端ならちょくちょく捕まってるよ?」
「かもしれません。ですが楽観的な考えはあまりしたくないんです。もしかしたら僕以外の人にも危険が及ぶかも知れないでしょう。」
「危険 ねぇ。
━━━━━私に言わせりゃ人間生きてるだけで危険に晒されてるようなものだけどね。」
「!!」
寅虎の暗い表情を見て哲郎は彼女の言葉の意味する所を理解した。寅虎の両親も哲郎の友達も予想だにしない所でこの世を去ったのだ。
「……話を戻しますけど、僕と
「予定? どういう事?」
「はい。 実は━━━━━━━」
哲郎は透桃の姉 李苑が山賊団に連れていかれた事、そして姉を助ける事を彼女と約束した事を説明した。
「透桃ってアイツだよね?
ついさっきドンパチやってた忍者の末裔だってあいつ。」
「そうです。まぁ、忍者の子孫って事は試合の時まで知りませんでしたけど。」
「約束したのは良いけどさ、どうやってお姉さんを助けるつもりなの? アイツらゲスいから何言っても聞かないと思うけど?」
「それはあなたと同じ考えですよ。
この大会で勝ち上がって《上》に目をつけて貰うんです。」
「………そう。じゃあ私と君は相手が違うだけで目的はほぼ同じだったって訳ね。」
「……………いや、強ち違うとも限らないかも知れませんよ。」
「え?」
寅虎との話が山場を迎え、哲郎は口にするかどうか迷っていた
「これは僕の予感なんですけど、荒河山賊団の上には更に強い組織が居るかもしれないと考えています。結論から言うと、そのトップは《
「!!!!」
鳳巌
その名前を聞いて寅虎の表情は目に見えて豹変した。帝国の最悪の犯罪者としてその首に二十万艮(=二十億円)もの大金を懸けられるような男の名前を国民が知らない筈は無い。
両親を理不尽に奪われている寅虎ともなれば尚更だ。
それまでの膝に手を当てて覗き込む体勢から座り込み、険しい顔付きで口を開く。
「…………一応聞いておくけど、その根拠はあるの?」
「根拠 と呼べる程のものではありませんがそう考えた理由はあります。僕が捕まえたあいつらの慌てようです。」
「どういう事?」
「あいつらはまるで是が非でも杏珠さんを連れて行こうと必死な様子でした。言い方が悪いですがあいつらにとって彼女にそこまでの魅力があるとも思えません。それで思ったんです。
あいつらは次にミスをしたら何かしらの罰を受けるのでは無いか とね。」
「……………………………」
寅虎は口を押えて考え込んでいた。
根拠としては薄いが可能性は十分にあると考えているのだろう。
「━━━もし、もし君の言う通りだったとしてだよ、君はそいつと戦えるの?」
「それはあなたも同じでしょう。」
「!!」
寅虎は両親を殺された恨み故に、そして哲郎も同様に帝国を救う為に鳳巌(そして《転生者》)と戦う意志を固めていた。
「私はそれこそ《陸華仙》の力を借りた上でだよ? 君も鬼門組に入るつもりなの?」
「いや、僕は勝ち上がったら皇帝の所に入り込むつもりです。後、賞金の使い道も決まってますね。」
「賞金 か。
ちなみに何に使うつもりなの?」
「それは言えません。
一つ言えるとすれば僕
「…………そう。」
今日だけでラミエルとの会話や透桃との約束、寅虎との激闘などの出来事が立て続けに起こっているが、哲郎はこの大会に出る事になったそもそもの理由を忘れてはいない。
金埜は哲郎を信頼して託してくれているのだ。