哲郎は部屋の中で寅虎から受け取った記事の裏面を読んで得た情報を反芻していた。
そして哲郎は心のどこかで近々 鳳巌とも相見える事を確信していた。帝国を狙っている《転生者》が最悪の犯罪者である鳳巌に目をつけない道理は無い。或いは既に二人が癒着している可能性すらある。
(もし仮に《転生者》と鳳巌、そして荒河達が繋がってるとしたら敵勢力はかなりの規模になるよな。
そして、こっちの戦力は━━━━━━━━)
哲郎は握った指を広げながらこの国に居る味方の数を数え始めた。差し当たって思い付くのは自分と彩奈、虎徹、透桃、そして寅虎程度だ。
味方の数を数え終わって視界に入ったのは開いた手の平だけだった。これは即ち味方の数の乏しさを意味している。
(たったの五人か………………。
いや、場合によったら透桃さんや寅虎さんは当てに出来ない可能性もある。そうなったら頼れるのは《転生者》の三人だけか。)
哲郎は手の平を握りしめて深い息を吐いた。
気が付けば自分は《転生者》だけでなく一つの国を舞台にした大きな戦いに巻き込まれている。そしてその台風の目に居るのは紛れも無く自分だ。
既に荒河山賊団に大きな損失をもたらし、自分が異国の人間である事も知られている。更に《転生者》は帝国の重役になりすまして堂々と武道会を観覧している。即ち自分の存在は完全に知られているのだ。
(………彩奈さんも虎徹さんも《転生者》がどこに居るかまでは分かってない。だけど向こうは完全に把握されている。
僕達もこう、《転生者》かどうかバレないようにする方法が必要なのかもな。
━━━━いや、もう無駄か。)
途中で自分の考えが間違っている事を認めた。
里香とトレラがそうであるように敵の《転生者》同士は互いに接触している。既に自分の存在や情報は共有されているだろう。
そこまで考えて哲郎は思考を切り替えた。
これからどうするべきか をだ。
(━━━まずは透桃さんとの戦いに勝って、そして武道会で優勝する。そしたら次は皇帝の所に潜入して少しでも情報を身に付ける。
問題は《転生者》がいつ行動を起こすかだな。こっちの準備が不完全な時に動かれたらかなりまずくなる。せめて《転生者》が誰でいつ動こうとしているかが分かれば良いんだけどな。)
「哲哉選手!」
「!」
《転生者》への対策を練っている最中、扉の向こうから自分を呼ぶ声が聞こえた。
「哲哉選手、透桃選手との試合の時間が近付いております。
準備をお願い致します。」
「はい! 分かりました。」
哲郎は立ち上がって控え室を出て扉を開けた。
その最中にも思考を巡らせる。どうすればこの状況を少しでも好転させられるか。この国を救う鍵はそこにこそあると考えていた。
(…………敵が
でもどうやって………………)
哲郎の思考は透桃ではなくその先の対《転生者》に占められていた。しかし、これから《転生者》が自分の意思とは関係無く
***
『さあ、いよいよこの刹羅武道会 三回戦も後半戦に差し掛かろうとしております!!! そしてこの節目に相応しい対戦がここに実現しました!!!』
実況の男が高らかに宣言し、観客席の熱狂は最高潮に達した。会場の中心には哲郎と透桃が立っている。お互いに手には何も持っていない。
哲郎は透桃は自分と同じ系統のものを感じていた。
「殺害以外の、全てを認めます。
両者、構えて!! 始め!!!」
試合の火蓋が切って落とされたが、二人の足が前に出る事は無かった。代わりに透桃の手が動く。
三つの形を高速で組み、
『出ました!!! 《羅刹の術》です!!!!
かつての忍の一人、透臶が遺した至宝が再びこの武道会の場で火を吹きました!!!!』
出し惜しみをする気配のない透桃に対し、観客席は更に湧き上がった。その中で透桃だけが冷静だった。姉を助け出すという決意と灘馳との試合が彼女の中に眠っていた何かを呼び起こしたのだ。
「…………………………!!」
「哲哉さん、言ってましたよね? 私と全力で闘いたいって。
なら、なら私も全力でお相手しますよ!!!!!」
「!!!!」
透桃は地面を陥没するほどの脚力で蹴り飛ばし、一瞬の内に哲郎との距離を詰めた。試合の初手は透桃の攻撃で始まった。
***
哲郎と透桃の試合が始まった頃、
その行動にこれといった理由も目的も無かった。更に言えば