異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#261 THE KUNOICHI 5 [SHOOTINGSTAR]

透桃は左腕を後ろに向けて庇う構えを取りながらも、哲郎に勝つ気は全く落ちないでいた。寧ろ 投げ倒されるという窮地を脱した事で闘争心が刺激され、勝利が更に遠のいた感じさえ哲郎の頭の片隅には浮かんでいた。

 

(………さぁ、どうやって左腕を庇いながら闘う?

それとも、庇わなくても良いようにするか?)

 

哲郎はもし 自分の左腕が使えない状況、つまり今の透桃の心情を想像しながら彼女の次の一手を予測していた。その結果 浮かんだのは左腕の回復を待つ耐久の一手、そして左腕の回復を待たずに一気に勝負を決める攻めの一手だ。

 

闘技場に立っていた二人はそこから数秒間 全く動きを見せなかった。そして実況の男も自分の役目を忘れ、固唾を飲んで見守っていた。

そんな彼等が唯一確信している事は、決着の時が迫っているという事だ。

 

(!!! 来た!!!)

『透桃選手が動いたァ!!!!』

 

哲郎の目は透桃の行動を目視した。

身体を前方に傾けて右手を地面に付き、下半身を空中に浮かせる。哲郎は瞬時に透桃のやろうとしている事を理解した。

 

(頭に蹴りか!!! なら!!!)

 

哲郎の頭は瞬時に透桃の攻撃に対する有効打を弾き出した。透桃と同様に身体を前方に傾け、地を這うように両手両足を地面に設置させて透桃の蹴りを躱す。透桃が自分の蹴りが躱された事を認識するより早く、哲郎は迎撃の為の策を実行に移す。

 

バシッ!!! 「!!!」

 

哲郎は地面につけた腕を軸にして身体を地面スレスレで独楽のように回転させ、地面についた透桃の右腕を蹴って払った。地面との接地点を失った透桃の身体は空中に放り出され、自由を失う。それは致命的な状態と言える。

 

「終わりです!!!!」

「!!!!」

『哲哉選手が行ったァ!!!!』

 

実況の男の言う通り、哲郎は最後の行動に出た。空中で身体の自由を失っている透桃の右腕を掴み、上に跳んで身体を入れ替え、全体重を掛けた。

 

『こ、これは━━━━━━━!!!!』

 

次の瞬間、闘技場に居た全員の目が捉えたのは透桃を抑え込んでいる哲郎の姿だった。武道会において相手の行動を完全に封じ、生殺与奪の権利を手にする事は勝利の条件として認められる。

すなわちこの瞬間に哲郎の勝利は確約された。

 

「し、勝負あり!!! 勝者、哲哉選手!!!!」

『き、決まったァーーーーー!!!!!

初出場にして膨大な存在感を放つ二人が、己の身一つでぶつかり合ったこの大一番、制したのは哲哉選手!!!!

正に現代に忍が蘇ったかのような流れるような技の応酬は、今日 この場に居る我々の記憶に深く刻まれる事でしょう!!!!』

 

突然の決着に観客席は理解が追いつかずに居たが、それは透桃も同じだった。またしても蹴りが外れた事も認識出来ない間に組み伏せられ、そこで漸く自分が負けた事を理解した。

 

「……………………!!!!」

「勝ったのは僕です。」

 

口ではそう言って勝ちを認めさせながらも哲郎の心中は穏やかでは無かった。勝つ事が出来た安心感と彼女の成長を肌で実感した。

もし自分と灘馳の試合の順番が違っていたらここまで苦戦する事は無かっただろう。とそう考えていた。

 

(ま、負けた………………!!!!

折角 妖術まで使えるようになったのに…………!!! あと一歩が届かなかった……………!!!)

「透桃さん、僕は…………」

「止めてください!! 同情なんかしないでください!!!」

「!!!

………そんなつもりじゃありませんよ。お姉さんを助けるのは透桃さんの為じゃなくて僕の意志です。それに、僕はもうあいつらの怒りを━━━━」

 

 

ズドォーン!!!!!

『!!!!?』

『な、なんだァ!!!!?』

 

試合が決し、観客達がその事を認識しかけた瞬間、上空から巨大な何かが飛来し、闘技場全体を震わせた。大量の土煙が舞い上がり、奇しくもその姿を隠す。

そして煙が晴れた瞬間、会場全体は驚愕の感情 一色に染った。そしてそれは哲郎も例外では無かった。それはその人物(・・・・)の顔を哲郎も知っていたからだ。

 

『あ、あれはまさか……………!!!!

まさかそんな…………………!!!!!』

 

その人物が土煙の中から姿を現した瞬間、観客席は大混乱に陥り、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。その理由はその人物(・・・・)がそれ程までに危険な人間だったからだ。

 

その人物(・・・・)は哲郎の倍以上とも取れる巨体を濃い赤色の衣で包み、その顔は刻み込まれたように彫りが深く、身体中に傷が刻まれていた。哲郎がその顔を見たのは虎徹に写真を見せられた時だ。

 

(ほ、鳳巌………………!!!!?)

「…………懐かしい(・・・・)な。時代が移り代わっても、此の場だけは変わる事が無い。

………して、貴様だな。我等を出し抜いた度し難い愚者は………………!!!!」

「………………………!!!!!」

 

この時、哲郎にとって予想外にして最悪の事態が起こった。そしてそれはこの武道会を観ていた《転生者》も同じである。

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