#265 The Commissioner
「………私、鬼門組の
これより事情聴取を行いますが、襲撃の際に現場に居たのは貴女方で間違いありませんね。」
「そうじゃな。」
鳳巌の襲撃から数時間後
虎徹、彩奈、金埜、透桃、寅虎の五人は呑宮の都内にある鬼門組の署で事情聴取を受ける事になった。
「まず、透桃さん。貴女達の試合が終わった直後に鳳巌が襲撃したという情報がありますが、これは間違いありませんか。」
「は、はい………!!」
透桃は俯きながらもそう答えた。
まだ最悪の犯罪者を目の当たりにした事実を受け止めきれずにいるのだ。
「彼による死者や負傷者は無し。しかし、一人だけ拉致された。それが」
「ワシの連れの哲哉じゃな。下手に抵抗すれば逆に不味いと思って敢えて連れ去られる事を選んだのじゃろう。」
「なるほど……………。
そしてその哲哉さんの姉が杏珠さん、哲哉さんに刹喇武道会を紹介したのが金埜さんですね。」
「はい………」 「んだ。」
彩奈は俯きながら、金埜は額に汗を浮かべながらも堂々と受け答えをした。彩奈も透桃と同様に鳳巌が襲撃した衝撃を受け止めきれずにいる。
「では次に、哲哉さんがこの武道会に出場する事になった経緯を説明していただけますか?」
彩奈と金埜は哲郎が山賊団の男達と交戦して捕らえた事、その後に金埜に出会って介抱したこと、金埜が哲郎の実力を見込み、利害の一致の結果 金埜の代わりに出場する事になった事を順を追って説明した。
「……なるほど。
金埜さんは優勝賞金を故郷に使う為に、哲哉さんは豪羅京に自分の実力を誇示する為に武道会に参加されたという訳ですね。」
「んだ。 別に悪い事じゃねぇだろ?」
「……はい。 まぁそれは良いでしょう。
では次は、鳳巌が襲撃した当時の状況を詳しくお聞かせ願えますか? 透桃さん。そして、寅虎さん。」
透桃は哲郎との試合が終わった直後に空から鳳巌が飛来してきた事、寅虎は(衝動的に)鳳巌に襲い掛かった事を説明した。
「……他の証言とも一致しますね。
そして寅虎さん。勝手ながら貴女の素性を調べさせていただきました。
貴女のご両親、《寅號》さんと《琳虎》さん、この二人は鳳巌が起こした事件の被害者だったそうですね。」
『えっ!!?』
「………………………」
麻棋の口から出た事実に彩奈と金埜、透桃が驚いた声を出した。対称的に寅虎は口を閉ざしている。
「そして貴女は鳳巌の被害者遺族。
だからあんな事を……………」
「だったら何? あたしを捕まえるの?
傷害? 銃刀法違反? 殺人未遂?」
「いえ。貴女の
「………………」
麻棋の判断は寛大と言えるが、寅虎はその判断に満足とも不服とも思っていない様子だった。その時に彩奈は『帝国にも
「では皆さん、これより━━━
!」
言葉の途中で麻棋は自分の懐に目を向けた。
懐の中で通話の水晶が光った。
「失礼します。
━━━━こちら、麻棋です。
はい。 はい。
━━それで、今どちらに? はい。
分かりました。すぐに。」
数十秒 背を向けての受け答えの後、麻棋は再び虎徹達の方を向いた。
「どうかしたのか。」
「皆さん、言うまでもない事ですがこれは鳳巌が関わっている事件です。故に、皆さんには鬼門組の凰蓮総監の聴取を受けて頂きます。
そして総監殿がたった今、この呑宮支部に到着しました。」
『!!』
彩奈以外の全員、即ち話を聞いている帝国民の表情が強ばった。彼等にとってそれほどまでに凰蓮は大きな存在なのだ。
その直後、聴取を行っている部屋に一人の女性が入って来た。濃い茶髪を左耳の側で束ねた弱々しい表情をした、彩奈より少しだけ年上に見える女性だ。
「き、鬼門組陸華仙 一番隊の
「分かりました。入って貰って下さい。」
「はいぃ! こちらです!」
「フフフ。お待たせしましたねぇ。」
『!!!』
菰里と名乗った女性に呼ばれ、鬼門組の最高位に就く男である総監 凰蓮がその姿を表した。その姿を見て、彩奈だけが驚いて身体を震わせた。
その男は顎に長い髭を蓄え、オールバックの頭に兜を被り、そして身体は重厚感のある青色の鎧に覆われていた。
体格は鳳巌と殆ど同格。彩奈が首を持ち上げないとその顔が見れない程だった。
顔つきも鳳巌と遜色無い程に彫りが深い。しかし鳳巌とは違ってその表情は貼り付けたような笑みを浮かべていた。
「初めまして皆さん。私が鬼門組総監 凰蓮です。この度の皆さんの情報提供、誠に感謝しております。」
「…………………!!!!」
凰蓮の圧倒的な迫力に虎徹達も緊張していたが、彩奈は輪をかけて緊張していた。寧ろ精神的に動揺していた鳳巌の時より落ち着いている今の方が緊張が強いと思った。