異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#266 OUTSIDERS UNDERGROUND

彩奈が呑宮の支部で事情聴取を受けている頃、哲郎は鳳巌の手によって連れ去られていた。

目を開けても視界に入ってくるのは麻袋の裏地のくすんだ茶色だけだったが、他の感覚から得られる情報を必死にかき集めていた。

 

 

***

 

 

(…………結構息苦しくなって来たな。かなり高い所を飛んでいるのか。

音は………、羽撃く音と風を切る音以外は特に聞こえないな。 時間は、もうすぐ三十分くらいか。

この鳥(みたいな魔物)がどれくらい速く飛んでるのかは分からないから、距離は分からないけど、かなり離れてるみたいだ。)

 

哲郎の予想が正しければ、鳳巌は今 麻袋に詰めた自分を魔物の身体に括り付け、その上に乗って上空を飛んでいる筈だ。そしてその時間は不意に終わりを告げる。

 

「!!」

 

その瞬間、哲郎、延いては鳳巌と鳥の魔物の身体が急に傾いた。さらに速度を上げ、地面へ向かっているのが分かる。

鳳巌の目的値が近くなっている。

 

 

***

 

 

それから起こった出来事は、単純な連行だった。

光源のない空間で麻袋から出され、目と口を布で塞がれ、腰と手首に縄を括り付けられて鳳巌の手によって歩かされている。

 

(………結構じめじめしてるな。ここは地下なのか?)

「目隠しを外してやるぞ。」

「!?」

 

鳳巌の口から意外な言葉が出たかと思いきや、次の瞬間には哲郎の網膜を光が刺激していた。

 

「━━━━━!!!」

 

哲郎の目に飛び込んで来たのは、自分の予想以上に広い空間、そしてその中で騒いでいる男達だった。哲郎は今高台に立ち、その高台を囲うように空間が広がっている。

彼等は山盛りの料理を囲み、酒を浴びるように飲んでいる。その顔は真っ赤に染まり陽気な笑みを浮かべていた。

 

「…………おい、戻ったぞ。」

『!!!』

「おお!! 大親分!!!」

 

一人の男が鳳巌をそう呼んだ事がきっかけとなって広間は更に湧いた。そしてその騒ぎに乗じて一人の男が階段を駆け上がって鳳巌の元へと近付いてきた。

 

「大親分、もしかしてそいつが黎井の兄貴達を縄にかけやがった糞ガキですかい?」

「そうだが?」

「分かりやした。

………おい糞ガキ!!! この荒河山賊団様に随分と舐めたマネしてくれたな!!!

死んで償えや」

「おい。」

「!!!!!」

 

その男は哲郎に拳を振り上げたが、それが最悪の手だった事を鳳巌の表情で理解した。

 

「じ、冗談ですよ!!!

黎井の兄貴をやられちまったから、一言文句を言いたくて━━━━!!」

「………肝に銘じておけ。此奴の処遇は我が決める。

貴様等も聞け!! 我以外誰にも此奴に手を出す事は断じて許さん!!! 違えた者は其の魂を失うものと心得よ!!!!」

『!!!』

 

鳳巌の一言によって広間に一気に緊張が走った。それを見届けた鳳巌は持っている縄を引き、哲郎に歩くように促す。

そして高台を歩き、広間を超えて奥の通路に入る時、哲郎の耳に微かな声が入った。

 

『━━流石は大親分だ。自分に逆らう奴は自分の手で始末する気なんだ。』

『━━そうだそうだ。俺達を怒らせる奴ァ死んで当然なんだよ。』

『━━にしてもあの糞ガキ ひでぇ目に遭うぞ。黎井の百倍は苦しんで死ぬな。』

「…………………」

 

しかし、哲郎はその言葉を本気にはしなかった。それに足る根拠があったからだ。

 

 

***

 

 

「貴様は此処に入れ。」

「…………………」

 

哲郎が連れてこられたのは小さな牢屋だった。赤い錆に覆われた鉄格子を隔てて小さな部屋が広がっている。

 

「此処が貴様の墓となるのだ。

此の場で貴様の残りの時間でも数えているが良い。」

「………下手なお芝居はもういいんじゃないですか?」

「何?」

「理由はまだ分かりませんが、貴方は僕を殺す気なんか無いでしょ? 違いますか?」

 

絶望的な状況にも関わらず気丈な表情を見せ続ける哲郎を鳳巌はしばらく見詰めていた。

 

「………唯の小生意気な餓鬼では無かったか。

何時それ(・・)に気付いた。」

「最初からですよ。本当に僕を殺したいならすぐにやっているはずですから。平気で無関係な人間を斬り殺す人間なら、尚更です。」

「…………………」

 

鳳巌は口を閉じて哲郎の問の意味する所を探していた。心当たりが沢山ありすぎて答えが見つからないのだろう と哲郎は考察した。

 

「…………確かに貴様を殺す気は毛頭無い。

だが、温情などでは無い。貴様には生きて()になって貰う。」

「餌!?」

「そうだ。この場に鬼門組を誘い込む為の餌にな。」

「誘い込む。つまり、鬼門組を潰そうと考えてる訳ですか。」

「…………喋り過ぎだぞ小僧。

何れにしろ、貴様はこの檻の中から一歩も出れはしないのだからな。」

「………………」

 

鳳巌は哲郎を牢屋に押し込み、檻を閉めて鍵を掛けた。そして通路の奥へと姿を消した。牢屋の中に窓は無いが、手首や腰の縄は解かれた。

 

(…………縄を解くなんて油断もいい所だな。だけどなんで『潰す』と答えなかったんだ?

まぁそれはおいおい考えるか。まず僕がやらなきゃいけないのは……………、)

 

檻に監禁されてなお、哲郎の心は全く折れていなかった。偽ラドラ(姫塚里香)達に拉致監禁された経験が大きく活きている。

心の中で言ったやらなきゃいけない事とは、檻からの脱出、そして彩奈達との通信だ。そして哲郎は既にその手段を持っている。

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