異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#268 Ogre Priority Agents

『ですか ら、彩 奈さ んはそ のま ま鬼門 組の言 う通り にして じっ として て下さ い。』

「は、はいっ!!」

 

彩奈がそう答えると、哲郎との通信は切れた。

一見 状況は何も変わっていないように見えるが、この通信から得られた情報はあった。

 

(………確かこの前宗教の所で通信してた時、その地下とエクス様のお屋敷の距離で話したらさっきと同じくらい声が飛んでたって言ってたよね。

って事は、あの悪い人の居場所はここからお屋敷と宗教の場所と同じ距離を半径にした円の中にあるって事だよね。哲郎さんはああ言ってたけど、この事は虎徹さんに伝えなきゃ……………)

『━━━━コンコンッ』

「ひゃんっ!!!?」

 

彩奈は不意に聞こえた(トイレ)の扉を叩く音に跳び上がった。

 

「杏珠さんですか? 先程の菰里です。

随分長く厠に入ってますが、大丈夫ですか?」

「あ、は、は、はい!!

もう出ますから心配しないで━━━!!」

 

彩奈は慌て気味に水晶を懐にしまい、覚束無い手で(トイレ)の扉を開けた。

 

 

***

 

 

彩奈が鉄郎との通信を終えてから五十分が経ち、彼女達は呑宮支部の門の前に集められた。

凰蓮が彩奈達の前に立ち、その後ろには巨大な馬車が用意されている。車は鋼鉄製で外部からの干渉を一切許さないという気概が見て取れる。

 

「………皆さんお揃いですね?

ではこれより私の車で陸華仙の本部へ護送します。皆さんの身の安全はこの菰里が守りますからご安心を。」

「なんじゃ。主は乗らんのか。」

「私には馬を操るという役目があります。

この呑宮から豪羅京の中央までですから、時間は二、三時間といった所でしょうね。

他に質問のある方はいらっしゃいますか?」

 

誰も手を挙げないのを見て、凰蓮は振り返って馬車の扉を開けた。

 

 

***

 

 

しばらくの間 振動に揺られた彩奈が最初に理解したのは、この馬車は帝国民にとってパトカーのようなものだという事だった。

窓の外から見える、馬車を見た帝国民が迷わずに道を開けるのがその根拠だ。

 

(………二、三時間って、その間ずっとこんな事してじっとしてなきゃいけないの?

こうしてる間にも哲郎さんは今すぐにでも殺されてもおかしくないっていうのに?)

 

馬車に乗って護送されている面々は皆 心中穏やかでは無いだろうが、彩奈の精神状態は輪をかけて揺れ動いていた。さながら今の自分の状態を《護送》ではなく《連行》だと錯覚してしまいそうになる程だ。

 

(やっぱり、やっぱりあの時無理をしてでも《転送(能力)》で哲郎さんを助けておけば良かったかな? そもそも、わざわざ敵の中に潜り込まなくても良かったんじゃ…………………)

「━━━━珠さん? 杏珠さん?」

「っ!?」

「見えましたよ。あれが《陸華仙》の本部です。」

「!!!」

 

菰里が指さす方向に視線を向け、彩奈は窓の外から見える光景に目を見張った。

そこに建っていたのは巨大な要塞だった。歴史の教科書でしか見なかった《城》が聳え建っていた。

 

「すっげぇ城だなぁ!!!」

「こいつが《陸華仙》か。実物を見るのは初めてじゃな。」

 

金埜と虎徹は初めて見る巨大な建造物に目を見張り、透桃と寅虎は言葉を失っている。彩奈もその威圧感に圧倒されていた。

 

「あと何分かで着きますから、降りる準備をしておいて下さい。」

「は、はい!! 分かりました!!」

 

『…………彩奈よ。締めてかかれ。

哲郎の奴がそうであるように、ワシ等の手にも帝国の命運が握られておるぞ。』

『……………はい!!』

 

既に哲郎の現状と心中を知っている虎徹は彩奈に激励の言葉を掛けた。

 

 

***

 

 

《鳳巌の根城の檻の中》

 

哲郎は檻の中に備え付けられたベッドの上に腰を下ろし、これから何をするべきかを思案していた。

 

(…………今は、閉じ込められてからだいたい二時間くらい経った頃か。彩奈さんは今 どうしてるか。鬼門組に居るって言ってたけど、もしかしたら凰蓮(トップ)が動いてるかもしれないな。なんだか凰蓮と鳳巌の二人、因縁があるみたいだったし…………)

 

哲郎は虎徹から聞いた九年前の話を思い起こしていた。そして根拠も無く鳳巌の過去を知る事が帝国を救う手掛かりの一つになると感じていた。

 

(どうやら僕を殺す気は無いって考えは当たってたみたいだな。檻の外に監視すら置いてない。万一 脱走しても支障は無いって事か。

なら、思い通りにやってやろう!!)

 

哲郎のその思考は即ち 檻から脱走する事を実行する意思があるという事だ。そして哲郎はすでにその方法を思い付いていた。

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