異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#269 The Prison Breaker

檻からの脱走

哲郎はその方法をすでに三つ 思い付いていた。しかし最優先で使いたい、そして上手くいって欲しい(・・・・・・・・・)と思っているのは一つだけだ。残りの二つは別々の意味でリクスが大き過ぎるからだ。

 

(………ここから出る方法は三つ。

まずは一つ目から試してみるか。出来れば上手くいって欲しいけどな!!)

 

哲郎は檻の格子に近寄り、屈んで根元に水晶を近付けた。そして作戦を実行に移す前に唾を飲み込み、精神を落ち着ける。

 

(……………さぁ、行くぞ!!!)

『ガキィン!!!!!』 「!!!」

 

水晶から放たれた衝撃波が錆び付いた鉄格子に直撃した。甲高い衝撃音が鼓膜を震わせ、その余韻が頭から消えると哲郎は自分の運の良さに喝采した。

自分の作戦が滞りなく成功したからだ。

 

(よし!!! 根元からポッキリ折れてる!!!

これなら抜け出せる!!!)

 

哲郎は鉄格子の切断された部分を掴み、斜め上方向に思い切り引っ張った。すると錆び付いて脆くなった鉄格子は少しづつ曲がり、哲郎が抜け出せるだけの空間が出来た。

 

(縦の方はこれで十分。そして横は格子一つ分隙間が空いたから子供の僕ならギリギリ抜け出せる!!!)

 

心の中では喜んでいたが、時間が無い事も理解していた。鉄格子を切断する程の大きな音を広間にいた男達が聞いていないとも限らない。

曲がった格子をすり抜けて檻の向こう側に手を伸ばし、四苦八苦しながらも外へ脱出した。

 

「………………よし!!!」

 

檻からの脱出を最善の方法(・・・・・)で実行出来た事を、小声ながらも喝采した。頭に浮かんでいたもう二つのやり方は非常に危険だったからだ。

 

(………今だから言えるけど、残りの二つをやる事にならなくて本当に良かったな。)

 

二つ目の方法は水晶から出る衝撃波で身体を細かく切断し、講師の隙間を通して脱出するという離れ業。

そして三つ目の方法は水晶から出る光で組織の人間を誘き出し、自分は天井近くに浮かんで檻の中に誰もいないように見せかけ、入ってきた所を攻撃し、空いた檻から脱出するというリスクの大きい方法だ。

 

(二つ目のは出来るならやりたくなかったし、三つ目のも失敗したら脱出の可能性が無くなる賭けだったからな。

このやり方が上手くいって本当に良かった。

さて!!)

 

檻からの脱出に成功した事を喝采した哲郎は気持ちを切り替え、新たな行動を起こす。敵地の中心に居るこの状況は危険が伴いながらも立ち回り次第で大きな成果を生み出せると分かっているからだ。

 

 

***

 

 

鬼門組最高機関 《陸華仙》

豪羅京に本部を構え、その建物は皇居に次いで最高峰の規模と堅牢さを兼ね備える。その中に入る事が出来るのは本来、鬼門組で高い実力を持つ者か、凶悪な犯罪を犯した者かのどちらかだ。しかし今ここに例外が居る。

鳳巌という最悪の犯罪者の襲撃を受け、彼の脅威から保護される存在が五人居る。

 

「…………………!!!」

「驚いていますか? これが《陸華仙》です。

………して菰里さん。彼女(・・)は今どこで何をしていますか?」

「はい!! 今の時間ならあの仕事(・・・・)をしている筈ですが………!!」

「そうですか。 では行きましょう。」

「?」

 

凰蓮は彩奈達を連れて階段を登った。

 

 

 

***

 

 

凰蓮に連れられて彩奈達がやって来たのは堅牢な鋼鉄の扉の前だった。

 

「…………ここって、取調室ですよね?」

「その通りです。彼女はここに?」

「はい。その筈です。」

 

菰里が扉を開けると、そこはやはり取調室だった。三畳ほどの広さの部屋の中心に机があり、犯罪者らしき初老の男と黒髪の小柄な女性が向き合っている。しかし彩奈はその光景に目を見開いた。

その理由は犯罪者らしき男の顔が血にまみれて居たからだ。

 

「こ、この糞餓鬼が…………!!!!!

この私を一体誰だと━━━━━━

ッ!!!!!」

「貴様こそ今の立場を弁えろ。それに私は餓鬼ではないわ。戯けが。」

 

鬼門組の女性が犯罪者らしき男の頭を掴み、机に叩き付けた。その光景、そして鼻が潰れ血が吹き出す音が彩奈の背筋を凍りつかせた。

 

「い、苺媧(いちか)隊長!!」

「む? 菰里か。」

「はい!! 凰蓮総監と重要参考人の人達を連れて参りました!!」

「分かった。直ぐに行く。お前は此奴の取り調べを代われ。」

「はいっ!!」

 

苺媧という小柄な女性は菰里と交代するように取調室を後にした。

 

 

***

 

 

「苺媧隊長 お疲れ様です。何か分かった事はありましたか?」

「いいえ。あの愚図 頑として知らぬ存ぜぬを通しておりまして。」

「……そうですか。彼は凶悪犯であると同時に極めて重要な情報を持っている男です。是が非でも情報を引き出すのですよ。」

「分かっております。

して、彼女達ですね。あの(・・)鳳巌の襲撃を受けた者達というのは。」

「そうです。彼女達の身の安全を必ず確保するのです。」

「あ、あの…………!!」

『?』

 

話し込んでいる凰蓮と苺媧の二人に彩奈が声を掛けた。

 

「どうかしましたか?」

「さ、さっきの……!! なんであんなひどい事(・・・・)を……………!!!」

「!? ひどい事だと? 貴様、あの男が何をしたか分かっていないのか?」

「え!?」

「その通りじゃ。此奴は俗世に疎くての。

彼奴、《鴻琴(ぐきん)》じゃろ?なんでも音楽学校の講師じゃったが、行き過ぎた指導が原因で生徒を一人自殺に追い込んでしまったとか。」

「!!?」

 

虎徹の口から語られた鴻琴の情報に彩奈は再び目を丸くさせた。

 

「その通りです。いかなる理由があれど、そのつもりが無くとも、人の命を奪う事は決して許されません。ですが、私達が彼を締め上げている理由は他にもあるんです。」

「!?」

「これは極秘情報ですので他言無用にお願いします。

あの鴻琴被告、鳳巌と繋がっている疑惑があるのです。」

「!!!?」

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