異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#270 The Illegal Teacher 1 [MUZZLE]

鬼ヶ帝国の法律において、殺人罪は最も重い罪として扱われている。それは轟鬼族が他の種族に比べてその絶対数が少ないが故であり、種族の保護を目的としたものである。

それが故意であろうと過失によるものであろうと、その後の対応によって差はあれど厳しい処分が下る。

 

鴻琴という男は音楽学校の講師であったが、暴力的な苛烈な指導で生徒達からは恐れと反感の感情を買っていた。そして遂に被害が出る。生徒の一人が耐え兼ねて自らの命を絶ってしまった。鬼門組はこれを断固として許さず、鴻琴を起訴。そして厳しい取り調べを掛けた。しかしそれを断行した理由は他にもある。

鴻琴には鳳巌の仕切る賭博場に入り浸っていたという疑惑があるのだ。

 

 

***

 

 

「………無論、賭博行為自体が重罪ですが、私達が注目しているのは鳳巌との関係です。

鳳巌との関わりがあるのならば、是が非でもそれを聞き出す必要があります。

まぁ、こんな事を皆さんに言っても意味はありませんけどね。」

 

凰蓮は貼り付けたような笑みを浮かべながら彩奈達に鴻琴の事を説明した。

 

「………じゃが、情報をべらべらと喋って良いのか。」

「構う事はありません。皆さんにはそれを知る権利があります。それに無意味な同情をされたらいけませんからね。」

「無意味?」

「総監の仰る通りだ。」

『!!』

 

凰蓮の後ろから苺媧が口を開いた。近付いて分かるが彼女の身長は彩奈と同じ程しかない。

 

「無知だったのならば先の言葉は聞き逃してやるが、それでも同じ事を宣うならば貴様はあの男に殺された者の命を嘲る事になる。それでも同じ事を言うか?」

「……………!!!」

「苺媧さん。その辺にしておいて下さい。彼女達は大切な参考人です。これ以上の愚弄こそ見過ごせません。

とはいえ、彼に口を割ってもらわねばならないのもまた事実。ここは強めに行きますか。菰里さん、あれ(・・)の用意は出来ていますか?」

「はい! 出来てます!!」

「そうですか。では、行くとしましょう。」

 

手で彩奈達に待っているように指示し、凰蓮は菰里を連れて取調室へと入って行った。

 

 

***

 

 

「━━お初にお目にかかります。鴻琴被告(・・)。」

「!!! き、貴様は━━━━!!!」

「勿論、この鬼門組の総監です。私がここに来た理由は分かりますね?」

「~~~~~!!! わ、分からん!!!」

 

鴻琴は苦し紛れに顔を背けたが、凰蓮は調子を崩さずに話を続ける。

 

「分かりませんか。ならば貴方の罪状を逐一話す必要がありそうですね。

まず、罪の無い生徒の命を奪った《自殺教唆罪》。次に指導の過程で生徒の頬を幾度も張った《暴行罪》。そしてその時に生徒に椅子を投げつけた《殺人未遂罪》。

証拠も証言も揃っています。言い逃れは出来ませんよ。」

「で、出鱈目だ!!!! 私はただ仕事をしていただけだ!!!!!」

「いいえ。話はまだ終わっていませんよ。これは飽くまで表面上(・・・)の罪状です。最も重い罪は他にあります。

菰里さん、あれを。」

「はいっ!」

「!!!!!」

 

凰蓮の横から菰里が懐から写真を複数枚取り出して机の上に並べた。それを見た鴻琴は顔を更に青くさせた。

その写真には鴻琴と太った大男が会っている様子が写っていた。

 

「この男性は鳳巌の配下の一人、《珂豚(かとん)》です。彼には違法賭博を仕切っている容疑が掛かっています。

つまり、この写真は彼が切り盛りしている賭博場に貴方が入り浸っているという証拠です。」

「~~~~~~~~!!!!」

「貴方が頑なに口を割ろうとしなかったのはこの事を連中に知られたくなかったから。恐らく珂豚は賭博場をやって小遣い稼ぎをしている事を鳳巌には隠している。貴方から情報が漏れるのを恐れて口を封じる可能性は十分にある。

だから貴方はどれだけ締められても何も言わないのですね。」

「~~~~~~~~~!!!!!」

「ですがそんな事は関係ありません。

絶対に喋ってもらいますよ。その賭博場で何があったのかを、包み隠さず全てね。」

「……………!!!!」

 

凰蓮は貼り付けたような笑みのままに鴻琴に凄んだ視線を向けた。

 

 

***

 

 

「~~~~~~~!!!!

まずいまずい!!! まずいでぇ!!!!」

 

凰蓮が鴻琴を取り調べている頃、とある場所で一人の男が青い顔で頭を抱えていた。彼こそが違法賭博場を仕切っている珂豚である。

彼が頭を抱えている理由は一つ。鬼門組に自分の情報を持っている人間が居るからだ。この事が鳳巌に知られたら容赦なく粛清される。鳳巌の人間性は彼も良く知っている。

 

「クソォ!!!!

あいつが口を割りおったらワシは破滅や!!!

………こうなったら殺るしか無いか。あいつには死んでもらうしか……………!!!」

 

珂豚は立ち上がり、とある場所へ通信を行った。鴻琴の口を封じる為の準備が進んでいた。

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