異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#272 The double circle

《鳳巌の根城》

 

檻から脱出した哲郎は次にどのような行動を起こすべきか思案に暮れていた。次の行動を決める要素は『何時自分の脱走が明らかになるかが不透明』な事と『この根城で自分一人が孤立している』事だ。

 

(今の僕に起こせる行動は二つ。この根城を観察してどれくらいの広さがあるか調べるか。それか鳳巌が今どうしてるかを調べに行くかのどちらか。

メリットが大きいのは一つ目だけどリスクも大きい。この根城に居るのは僕一人だから下手をすれば逆に自分の首を絞める事になる。だけどこのままほとんど動かずにこの根城の状態を何一つ知らないままなのも危険だ。もし見つかって行き止まりに追い詰められたりしたらそれはそれでまずい。)

 

哲郎の行動を決定する要素はどの行動が有益で安全かだ。

 

(………いや、最初から二つしかないと決めてかかるのがいけないのか。

だったら━━━━━━!)

 

哲郎は懐から通話水晶を取り出し、彩奈との通信を試みた。この行動によって哲郎が得る情報はこの根城と彩奈が居る(であろう)鬼門組 陸華仙との更に具体的な距離だ。

 

(前の通信は辛うじて話が出来る程度だった。つまりこの根城があるのは彩奈さんが居た呑宮の支部を中心に、この水晶の通信が届く最大距離を半径にした円の範囲内のどこか。で、次にこの通信で彩奈さんが僕から離れたのか近づいたのか、つまりこの根城が首都(豪羅京)に近いのかどうかが分かる!!

もし通じればこの根城は最初の通信で分かった呑宮の円と豪羅京の円が重なる範囲にあるって事になるからかなり絞れる。もし通じなくても、通じないって事は豪羅京に行った彩奈さんはこの根城から離れた事になって、それでも範囲は絞れる。)

 

哲郎は祈る気持ちで彩奈の着信を待つ。こうしている間にも自分の脱出が割れる恐れがあるのだ。

 

『━━━━━━━━━━━

ブッ』

「(!!! 繋がった!!!)

彩奈さん!! 聞こえてますか!!? 今どこですか!!?」

『哲 郎さ ん… …!!

私は 今、陸 華仙 の 所に 居ま す… …!!』

「なるほど。そこで安全を確保したまま一夜を明かそうというのが彼等の考えなんですね?」

『は い。

そ れで 、人に 会い ま した 。鬼 門組 で一 番偉 い 人ら しく て…………』

「(凰蓮の事か!!!)

分かりました!! 彩奈さんはそのまま待っていて下さい!! 僕は辛うじて自由に行動できるようになりましたから、出来る限りの情報を集めます!!!」

『は い …… …!! !』

 

彩奈との通話は切れ、哲郎は頭の中に観光地で買った地図とそこに浮かぶ二つの円を思い浮かべていた。

 

(今の通信も声は途切れ途切れだった!!

って事は僕が居るここは最初の通信の時に彩奈さんが居た呑宮の支部を中心にこの水晶が繋がる最大距離を半径にした円と、次の通信の時に彩奈さんが居た陸華仙の所を中心に水晶が繋がる最大距離を半径にした円がぴったり重なる場所にある!!!

つまり、ここは呑宮の支部と陸華仙を結んだ直線の真ん中にある可能性が高い!!!)

 

地図上の呑宮の支部と陸華仙の正確な位置は分からないが、今の情報から絞れた範囲は帝国内の地図全体に比べると一パーセントにも満たない。少なくとも自分が今いる場所は帝国内で豪羅京を中心に北東の方向にある事は揺るぎない事実として確定事項になった。

 

(この情報は大きいぞ!!

━━━だけど、一番の問題はこの情報をどうやって生かすかだな。この情報を生かせるなら、やっぱりあれをやるしかないな!!!)

 

哲郎が次に起こす行動として選んだのはこの根城の正確な広さの把握、そして鳳巌がどこで何をしているかを確認する事の二つだ。

移動手段として人目につかない《適応》を利用した浮遊で天井近くに浮かんで移動する。

 

(重要なのは鳳巌が今どこで何をしてるか だな。さっきみたいにお酒を飲んで騒いでるって事は無さそうだし……………)

 

 

***

 

 

鳳巌は哲郎を監禁した檻から離れた小さな部屋に居た。彼は机に一人の人物と向き合って座っている。そして鳳巌は徐に口を開いた。

 

「…………分かっているな? 凰蓮はいずれ此処を見つけ出し、攻め入ってくるだろう。我にとってはお前以外(・・・・)の人間が捕らわれようがどうなろうが一向に構わない。

我は、明日死ぬ可能性が高いと思っている。お前は十分に育った(・・・)。我が死んだとしてもお前は生きろ。其れが我の最後の望みだ。」

 

凰蓮達は鴻琴から、そして哲郎達は通話の魔法具から鳳巌の根城の手掛かりを掴み始めている。鳳巌の予測通り、この根城が戦場となる時は刻一刻と迫っているのだ。

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