異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#274 The another one princess of ogre 1 (CRIMSON)

食事を終えた哲郎は次にどうやってこの根城の様子を見るか。その方法を考えていた。

 

(………そもそも僕が見たのはまだあの大広間と檻の中の部屋だけだからな。それがこの根城の何分の一かも分からないし。

移動するならやっぱり人目につかない場所、ならやっぱりあそこしかないか!!)

 

哲郎は天井を見渡し、人目につかない場所(・・・・・・・・・)の出入り口を探した。そして一分も経たない内にそれは見つかった。

それは通気口への入口だった。つい先日 宗教団体の屋敷に潜入した際に移動経路に使ったものだ。蓋となっている鉄格子を奥に押し込んで通路に身体を潜らせる。

 

(………広さは、宗教の時と同じくらいだな。これなら動く事は出来る。 で………………、)

 

通路内は殆ど暗闇だったが、哲郎の目は数秒も経たない内に《適応》し、その内装を視認した。通路は奥まで広がっており、根城の全体に通じている可能性が高い。

 

(さぁここからどこに行こうか。

まずは、あの宴会場みたいな大広間所から!!)

 

 

***

 

 

哲郎は大広間を目指して通路をひたすらに進んでいた。手掛かりとなるのは通路に響く声だ。

あれだけ大騒ぎしていたなら通路まで聞こえる筈だと哲郎は予想していた。

 

「!」

『ギャハハハハハ!!』

(あの方向か!)

 

哲郎の耳は男達の野太い騒ぎ声を捉え、その方向に移動した。しばらくしてその声が一番よく聞こえる地点を見付け、そこに陣取った。

運悪くその地点に覗ける場所は無かったが、哲郎は地面に耳を当てて聞こえてくる音を拾った。

 

(ここに来るまでだいたい十分くらい掛かってる。僕が動く速さから考えて、あの通気口からここまでだいたい数十メートル位か…………)

『━━━おい、あいつ遅くねぇか?』

「!!」

『そういやそうだな。あれからもう十分以上経ってやがる。俺、一度見てくる。』

『なら俺も行くぜ。』

『俺も俺も。』

「………………!!」

 

予測の範疇とはいえ、遂に哲郎にとって不都合な事が起ころうとしていた。

 

(………まずいな。あと何分かしたら僕が脱走した事がバレる。とにかく、ここに居るのは危険だな………!!)

 

 

***

 

 

『━━━ギャアアア!!! 何だこりゃ!!?』

『おい大変だ!!! あの餓鬼が居ねぇぞ!!!!』

『ヤベェぞ!!! 絶対にバレちゃいけねぇ!!!!

早く探すんだ!!!!』

 

 

***

 

 

後方から微かに聞こえてきた男達の絶叫によって哲郎は自分の脱走が明るみになった事を認識した。

 

(………遂にバレたか。分かってはいたけどこれで尚更動きにくくなるな。まぁ、ある程度なら襲ってきても倒せる自信はあるけどな………………)

 

三人の男達が大広間から食事を持ってきた男の様子を見に行くまでの数分間で哲郎は大広間を離れ、別の部屋に通じている出入口の鉄格子の上に来ていた。

 

(………退路はちゃんと用意出来てる。まずはこの部屋から調べてみるか!)

 

明確な根拠は無いが、帝国の危機を救う為には鳳巌の過去を探る事が鍵になると、哲郎はそう確信していた。

 

 

***

 

 

(! ここは…………)

 

鉄格子を開け、哲郎が下に降り立って最初に驚いたのはその部屋の狭さ(・・)だった。その部屋は意外な程狭く、床は六畳程しか無かった。そこには棚と机と椅子だけがあった。

それはさながら子供部屋(・・・・)のようだった。

 

(後ろにドア、前に窓 か。ってかこれじゃ完全に子供部屋じゃないか。なんで悪党の根城にこんな場所があるんだ?)

「!」

 

哲郎は棚にある本に挟まっている写真を見つけた。意を決してそれを引き抜く。その内容を見て哲郎は驚愕した。

 

「!! (な、何だこれは………………!!!)」

 

その写真に写っていたのは赤い髪の一人の少女と大男の後ろ姿だった。そして哲郎は瞬時に後ろ姿の男の正体を見抜いた。

 

(この髪型に服装、間違いなく鳳巌だ!!! じゃあ前に写ってるこの女の子は誰だ………!!!?)

「ねぇ、人の部屋(・・・・)で何やってんの?」

「!!!!? うおわっ!!!!」

 

後ろから声が聞こえた事を認識した瞬間、哲郎を不意の攻撃が襲った。それが刀の突きであると分かったのは視認した後の事だ。

その突きを躱して跳んだ勢いで窓に激突し、硝子を破ってそのまま奥へ落ちてしまった。

 

「………………!!!」

「ねぇ君、一体どういうつもり?

勝手に人の部屋に忍び込んだ挙句窓まで破るなんてどういうつもりだって聞いてるのよ。」

「………あなたこそ背後からそんな物騒なもので襲いかかるなんて穏やかじゃないんじゃないですか………!?」

 

割れた窓に足を掛けて現れた人物の姿を見て哲郎はようやく理解した。その人物は年齢こそ違っているが写真に写っていた少女と同一人物だった。

赤い髪は長く伸び白い和服に身を包んでおり、手には身の丈程もある刀が握られていた。先程哲郎を襲った刀がそれだ。

 

「その写真を見たのね。じゃあもう分かってる筈よ。」

「…………………!!!」

「私は《黐咏(ちよ)》。鳳巌の娘よ。」

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