異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#285 The Near And Far Enemy

場所は鬼門組 陸華仙。その内部にある極秘の会議室内で帝国の歴史上、初めての事態が起こっていた。

その総監である凰蓮は一般市民(に成りすましている)である杏珠に対し、怪訝な表情を浮かべた。

 

「………なんですって? 杏珠さん。今、何と仰いましたか?」

「わ、私を、私もあの病院に連れていって下さい………………!!!!」

「……………!!!」

 

彩奈の話を聞いても尚、凰蓮の表情は険しいまま崩れなかった。

そもそも凰蓮は一回目で彩奈の言葉も、そして彼女の真意も漏らす事無く理解していた。

彼の怪訝な表情は既に彼の頭の中である思考が固まっていたからだ。どうしても彼女の申し出を受ける訳にはいかないという思考が。

 

「………その言葉に首を縦に振る訳にはいきませんが、せめて聞くだけ聞いておくとしましょう。

どうしてそんな事(・・・・)をしたいと思ったのですか?」

「……………!!!」

 

かつていじめにあい、あらゆる角度から圧力を受けていた彩奈にとって、凰蓮の突き刺すような視線は彼女の心に少なからずの負担を掛けた。

その彼女の心中を知ってか知らずか、虎徹が小声で彩奈に話しかけた。

 

『おいおい。何を大それた事を言うておるんじゃ主は!

いくら主が《転生者》じゃというても帝国一のこの組織に加担出来る筈が無かろうが!!』

「…………わ、わ、私、もうこそこそ隠れていたくないんですよ……………!!」

『!!?』

 

彩奈は意を決して凰蓮と、背後に居た虎徹に自分の本心を吐露した。

そして虎徹にだけ聞こえる程の小声で彼女に更なる本心を伝える。

 

『………こ、虎徹さん。この人に哲郎さんの事、話しても良いですか。』

『!!?』

『そうすれば、この人を仲間に出来る(・・・・・・)と思うんですッ…………!!!』

『…………………!!!』

 

背中越しでも伝わる彩奈の気迫に、虎徹は何も答えなかった。

それを肯定と受け取った彩奈は凰蓮に最後の言葉を伝える決意を固める。

 

「一体それはどういう意味ですか 杏珠さん。言いたい事があるのならば確りと言って頂けなければこちらも何も言えませんよ?」

「……………!!!

はい…………………!!!」

 

遂に彩奈は凰蓮に自身の心中を伝える決心を固めた。

それと同時に彩奈は過去を乗り越える為に自分から人に話す事を実行した。それには偏に哲郎の多大な影響があった。

 

 

***

 

 

「………成程。そんな事が。

もしそれが本当なら、確かに有力な情報になりますね。」

「は、はい……………。」

 

彩奈は数十分もの時間を掛けて哲哉(哲郎)が鳳巌に攫われた事、その哲郎が監禁された場所から二回通話してきた事、その通信状態から鳳巌の根城の場所を絞り込んだ事を順を追って話した。

 

「拉致された被害者の少年から通信があったというのは疑いません。

ですが、何故鳳巌の根城の場所が絞り込めたのか。その根拠を教えていただけますか?」

「わ、分かりました。それを説明しますから、この国の地図を持ってきてくれませんか?」

「はい。それならこちらに。」

 

凰蓮は壁にある小さな本棚の中から折り畳まれた紙を取り出した。

広げるとそこには帝国の地図が描かれていた。昨日哲郎が購入したものと同じ地図だ。

その地図が机に置かれ、彩奈は深い呼吸で心を落ち着ける。頭の中にある事を伝える事は彩奈にとっては相当の難題だった。

 

「(……………お、落ち着いて話さなくちゃ。ちゃんとしないとこの人を味方に出来ない……………!!!)

ま、まず、最初に、呑宮にあった待合室で、哲哉さんから通信がありました。

そしてさっき、ここからも通信がありました。」

「……成程。しかしそれでどうして彼の居場所が分かるんですか?」

「それは、その通信が、どっちも途切れ途切れ(・・・・・・)だったからです。」

「途切れ途切れ?」

「はい。私が持っている通信の道具には、話せる距離に限界があります。

通信はどっちも途切れ途切れだったから、通信は話せる限界の距離だったっていう事になります。」

「………成程分かりました。そういう事ですね。」

 

凰蓮は懐から小型の道具を取り出した。

その道具はくの字に折れ曲がり、片方には針が、片方には黒鉛の芯が付けられている。

それを見た瞬間、彩奈はその道具に自分が知っている《ある物》を連想した。

 

「コ、コンパス…………!?」

「こんぱす?」(!!! し、しまった!!!)

「私達はこれを《円規》と呼んでいますが。

それより、さっきあなたが言っていた《限界の距離》がこの地図の上だとどれ位の長さになるか分かりますか?」

「! は、はい………!!」

 

彩奈は地図を見ながら手渡された道具(コンパス)を広げ、地図上での通話可能な限界の距離を再現した。

 

「大体、こんな感じだったと思います……………。」

「分かりました。という事は……………………」

 

凰蓮は彩奈の手で広げられたコンパスを手に取り、その針を呑宮の支部(凰蓮は正確にその地図上での位置を把握していた)に刺し、地図上に黒い円を書いた。その円の端は豪羅京の端に接している。

そしてコンパスの針を陸華仙の位置に刺し、再び地図上に黒い円を書いた。

そして地図上に現れた目印にその場に居た全員は目を丸くした。

 

「……………………!!!」

「ほう。これが……………。」

「やはりこういう事でしたか。」

 

机に置かれた地図には二つの黒い円が書かれ、重なっていた。

そしてその重なりは豪羅京の端、八重宮地方の方向にあった。

 

「そうです。この場所が哲哉さんの居場所です。

つまり鳳巌()のアジトはこの豪羅京の地下にある可能性が高いって事です………………!!!」

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