異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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学園潜入 編
#31 The transfer student


「初めまして!!

3ヶ月の間 ここに通うことになったマキム・ナーダです!!

よろしくお願いします!!!」

 

それは、田中哲郎が学園で言った言葉である。

 

 

 

 

***

 

 

昨夜

哲郎はノアの家に泊まり、そしてとある提案をされた。

 

「……いじめの依頼?

これがギルドに来てたんですか?」

「そうだ。」

「……こんなもの、わざわざギルドに依頼しなくても、教師に相談すればどうにでもなるんじゃないんですか?」

 

依頼の書かれた紙を突っぱねようとした哲郎にノアは話を続ける。

 

「……そうなら苦労はないんだがな。」

「…すると、その加害者に問題があるんですか?

例えば、親が大物で 悪行がもみ消されてる とか。」

「俺も詳しくは知らないが そんなところだろう。

ちなみにそれが受注されてないのは、おそらく割が合わないからだろうな。

だから、ギルドを始めようとしているお前にはいい 依頼だと思ったんだがな。」

 

ノアの話を聞いて哲郎は考えを変える。

 

「……依頼自体はやるべきだと思うんですが、どうやってその学園に入ったら良いんですか?

ラグナロク(ここ)には僕の身内はいないし、それに僕はこの前のコロシアム 準優勝で顔が割れているし。」

 

まさか魔界コロシアム 準優勝という喜ぶべき称号がこんな形で枷になるとは思ってもいなかった。

 

「そういうことなら、俺が協力してやろう。」

 

 

「……ていうかそもそも ノアさんが動けば万事解決なんじゃないんですか?」

「悪いが俺は正義のヒーローとは違うからな。その依頼もギルドのいずれ連中が受けてくれるとふんで手をつけていなかったんだ。」

 

 

***

 

 

「……ここがその学園か…………。」

 

パリム学園 人間 亜人科

それがこの学園の名前だった。

 

亜人族とは、ラグナロクに存在する種族の一種だ。

 

ついさっき知ったことだが、このパリム学園は学科によって校舎も建っている場所も違い、哲郎がこれから潜入するこの人間 亜人科もノアやサラ達が通っている学科とは違う。

 

「この変装でバレないかな………」

 

ノアがしてくれた協力というのは、変装と推薦だ。

 

「このボタンを襟につけていれば大丈夫って言ってたけど………」

 

ノアはボタンに偽装魔法をかけ、身につけている間は容姿が別人になり、他の人には自分が魔界コロシアム 準優勝者であることはバレないだろう ということだった。

 

それから彼は哲郎の短期入学の推薦状を書いてくれた。

 

これで哲郎は気兼ねなく学園のいじめ問題の解決に尽力出来る筈だ。

 

「そうそう。 これも付けてろって言われたんだった。」

 

そう言って哲郎が胸に付けたのはノアのものとは違うカフスボタンだった。

依頼の受注者である目印として依頼書に同封されていたものだ。

 

 

 

***

 

 

 

「と言うわけで彼がこの3ヶ月の間 諸君と共に学ぶことになったマキム君だ。

みんな 仲良くするようにな。」

 

ここの担任教師、見た目からして4、50代の男がそう言った。

 

その日は短縮だったらしく、授業は直ぐに終わった。

 

 

***

 

 

「ここで待ってればいいのか………」

 

依頼書には学園内の講堂の裏で待てという指示だった。

ここにいれば依頼主が来てくれる手筈になっていた。

 

そして、それは直ぐにやって来た。

「「お待たせしました!!」」

 

哲郎は最初に違和感を感じた。

そして、それは直ぐに驚きに変わることになる。

 

やって来たのは2人だったのだ。

金髪 ポニーテールの少女とボブカットの少年だった。

 

少女と少年と言っても哲郎よりは年上だという印象だった。

 

 

***

 

 

「……では、あなた達は依頼を別々にしたということでよろしいですね?」

「はい、そうです。」

「お互い 依頼してることはさっきまで知りませんでした。」

 

哲郎は依頼主の2人と向かい合って 食堂の隅の机に座っていた。

 

少女は名前をアリス・インセンス と言い、少年は名前をファン・レイン と言った。

2人とも今年 入学したばかりなのだと言う。

 

 

「僕がいじめ問題の依頼を請け負ったテツロウ・タナカ といいます。」

「テ、テツロウ!!?」

「それって、この前の魔界コロシアムで準優勝した人間族の………!!!?」

 

案の定の反応だった。

まさかあの大会で成績を残すことがここまで目立つことだとは思ってもいなかった。

 

「……早速 本題に入りますが、いじめはあなた達が受けているんですか?」

「いいえ。今はまだ受けてませんが、いつ火の粉がかかるか分からないし、それに放っておけなくて ギルドに依頼したんです。」

 

「そうですか。では、そのいじめ問題の概要を教えてください。」

「それなんですけど、主犯は女性なんです。」

「女性? と言いますと、いじめは集団での無視 とかそういう類のものですか?」

 

哲郎の問いかけに2人は首を横に振った。

 

「その逆で、いじめの内容は単独で暴力を振るうものなんです。」


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