異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#310 Nightingale Elegy Part2 ~Oath in the Sunset~

彩奈は一瞬、自分が何を聞いたのかを理解出来なかった。聞き取れなかったのではなく、自分が聞いた言葉の意味を理解出来なかったのだ。

しかし、凰蓮の発言をそのまま飲み込むのならば、凰蓮は自分が鳳巌と関係があると言ったように聞こえた。

 

発言に対し不用意に聞き返すのは失礼にあたると分かっているが、彩奈は聞かずにはいられなかった。或いは凰蓮の発言が本意ではないと信じたかったが故の行動だった。

 

「そ、そ、それって、どういう意味ですか!!? まるで鳳巌と関係があるみたいな……………!!」

みたいな(・・・・)ではありません。これは誰にも他言していない事ですが、私は彼の幼少期(・・・)を知っているのです。」

「……………!!!!」

 

最早彩奈は現実を受け入れる他無かった。ようやく彩奈が目の前の事実を受け入れられた時、凰蓮の話が始まった。

 

 

 

***

 

 

 

時は数十年前、場所は茨辿地方の海沿いに建てられた地図にも載らないようなしがない小さな漁村。これはその村に住まう、帝国の運命に翻弄された三人の少年少女の半生を辿る話である。

 

その村に三人の少年少女が生活していた。二人の少年、名前を《凰蓮》と《鳳巌》。そして一人の少女、名前を《鶯蘭》という。彼等は物心つくより前から知り合った関係である。鳳巌と鶯蘭は他の村から引き取られた孤児であり、村長の息子だった凰蓮の家に居候する形で生活していた。

村での日常は毎日のように昼に漁に出て魚を取り、夜に取った魚を調理して食べ、余った分は乾燥させたり加工したりして他の村で肉や調味料と交換する毎日が続いた。村では金銭という概念はあって殆ど意味を成しておらず、しかしそれ故に村民は皆 生き生きとした毎日を送っていた。

 

凰蓮、鳳巌、鶯蘭の三人もその生活に携わり、漁業に従事する事で漁村の経済の運営に尽力する毎日を送った。しかし、彼等三人の感情は全く変化しない訳ではなかった。年齢を重ねる度に、凰蓮と鳳巌の心には二つ(・・)の変化が訪れた。

 

一つは村の外にあるより高い水準にしてより帝国の中枢に関わる生活への欲求、そしてもう一つは三人の中で唯一の女性である鶯蘭に抱く感情の変化だった。

 

前者への解決策は簡単に見つかった。それは数年に一度行われる刹喇武道会という大会である。これは帝国民の娯楽である一方、権力者達が全国から集められた腕自慢を品定めする為に行われている。優勝すれば賞金が貰えるのは勿論の事、優秀な成績を修めた者は権力者の目に留まり、厚い待遇の下で要職に就ける可能性がある。幸いにも凰蓮も鳳巌も日常的な漁業で培った腕力には自信があり、二人にとっては正に一発逆転の可能性がある魅力的な大会だった。これを知った瞬間に二人はいつの日か大会に出場する事を固く心に誓った。

 

しかし、後者は決して簡単ではない問題だった。三人は幼い頃から家族同然の関係を送っていた。だが年を重ねるに連れて凰蓮も鳳巌も鶯蘭に対し次第に恋慕の情を抱き始めた。二人はその感情を露わにする事を許さなかった。それをしてしまえば今までの関係が崩壊してしまうという恐怖に駆られていた。

しかし、年齢を重ねる毎にその感情は大きくなり、更に凰蓮も鳳巌も互いに相手が自分と同じ感情を抱いている事を悟り始めた。そして悟る。このまま感情を内に押し込み続けてしまえば更に良くない事態を招きかねない事を。故に二人はある方法を取った。凰蓮はこの時の事を今でも鮮明に覚えている。

 

 

 

***

 

 

 

太陽が水平線へと沈み海が橙色に輝く頃、若かりし頃の凰蓮と鳳巌は太陽を前にして立っていた。そして互いの顔を見やり確信に至る。相手も自分と同じ事を考えている と。

そして凰蓮の方から口を開く。彼はその時の言葉を今でも一言一句正確に覚えている。

 

「…………鳳巌君。最後に確認しておこうか。

ここで自分の本心を曝け出すのと、本心をひた隠しにして今まで通りの生活にしがみ付くのだったら、どっちが良い。」

「…………それはやっぱりここで全て口にしておいた方が良いだろうな。下手に押し込めるとぼろが出る。」

「それは良かった。なら僕から言おう。

……僕は鶯蘭の事を好きになっている!!」

「俺もだ。俺も鶯蘭が世界で一番大切だ!!」

 

それは、親友が恋敵に変わった瞬間だった。しかし二人の表情は底抜けに明るかった。相手の本心を知る事が出来た嬉しさもさることながら、この問題を穏便に解決する方法を既に思い付いていたからだ。

 

「……大変な事になったな凰蓮。この関係の始末、どうやってつけるつもりだ?」

「それは君も分かっている事だろ。こんな小さな村に生まれて腕力くらいしか取り柄の無い僕達が取れる方法なんて一つしか無い。」

「………間違いないな。」

 

『━━━━鶯蘭に告白するのは、次の武道会で勝った方だ!!!』

 

水平線へと沈む太陽を背にして二人の声が重なった。この刹喇武道会への出場が二人の運命を大きく変える事になる。

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