「~~~~~~~~~~~~ッッ!!!!
一体何がどうなってんだよォ!!!!」
凰蓮が住む屋敷の部屋で、そう叫んだのは鳳巌だった。その絶叫と共に彼は手に持った新聞の記事を床に叩き付けた。本来何の非も無い筈の新聞記事がそのような仕打ちを受けた理由は、その記事が鶯蘭が出場した料理大会の試合の結果が載っている記事だからだ。しかし、鳳巌は決して記事の
「落ち着くんだ。今ここで僕達が暴れても何にもならないだろ。」
「これが落ち着いてられるか!! こんな馬鹿な事があるか!!!
お前も分かってるだろ!! 何でここに鶯蘭の名前が無い!! それにもうとっくに大会は終わってる筈なのに当の本人も帰って来てない!!! これが異常事態じゃなくて一体何だ!!!?」
「……………!!」
鳳巌は昂る感情に任せ凰蓮に掴みかかって問い詰めた。しかし凰蓮は鳳巌の狼狽を当然の成り行きと認めて受け止めた。
現在は鶯蘭が料理大会へ出場する為に村を出た日から数日後である。凰蓮達が住む茨辿地方の村から料理大会が開かれる一矻地方へは最低でも一日以上は掛かる。しかし今は凰蓮達の手元に件の料理大会の結果を報じる記事がある。つまり今は料理大会が終わって数日が経っているという事である。
だというのに記事に鶯蘭の名前は無く、それどころか今頃健闘の結果を持ち帰って来る筈の鶯蘭 本人すらが全く姿を見せない。誰がどう見ても異常事態だ。
「クソッ!!! クソクソッ!!!!
こんな事になってんのに連絡する方法すら無いなんておかしいだろ!!! 馬なり鳥なり妖具なり何かしら方法があんだろ!!!!」
「馬鹿言っちゃいけない!! 僕達みたいな平民がそんな贅沢なものを使える訳が無いだろ!!
「~~~~~~~~~ッ!!!」
鬼ヶ帝国には連絡方法が大きく分けて二つある。馬や鳥などの動物を利用する方法と、妖具、即ち
「じゃあどうするってんだよ!!! 鬼門組は碌な戸籍も持ってない、しかも管轄外の俺達の事なんざ取り合っちゃくれねぇぞ!!!!」
帝国では行方不明などの事件の捜査は鬼門組に一任されている。しかし凰蓮達の村から一番近い鬼門組の支部は数キロは離れており、運悪く村はその支部の管轄外である。実際、村の者が支部に被害を訴えた時も様子見という意味合いの言葉で門前払いを食らった。
「分かっている!! だから村の皆が人探しの張り紙を作ってるんじゃないか!!」
「お前こそ馬鹿を言うな!! 大会に出てない鶯蘭は俺達以外誰も知らないんだぞ!!! そんな奴等に鶯蘭が見つけられると思ってるのか!!!」
「!!!」
鳳巌の言い分は正しい。料理大会に
「……見つけられるのは俺達しかいないだろ!! 明日だ!! 明日の朝、鶯蘭を探しに行く!!!」
「!! な、何を馬鹿な!!」
「止めるな!!!! 邪魔するならたとえお前だろうと容赦はしねぇぞ。さもなければ刹喇武道会の試合を此処でやる!!! 真剣の斬り合いだ!!!!」
「……………!!!
分かったよ!! 君に見つけられるものなら、気が済むまで探すと良い!!!」
「………お前は来ないのか?」
「僕は君の様に無鉄砲の馬鹿じゃない!! もっと堅実な方法で鶯蘭を探すさ!!」
その言葉を最後に、鳳巌は凰蓮の屋敷を出た。そして翌朝、鳳巌は漁村を出た。そしてそれが鳳巌と村との今生の別れとなった。
***
ここに一人の老人が居る。名前を《
かつて一矻地方にて鬼門組の支部長を行っていた男である。しかし、彼は十数年前に自らの職を退いている。彼の最後の仕事は
一線を退いた今も彼は自分が知る情報を全て記憶している。
「…………何故、私が鬼門組の職を自ら退いたか ですか。
……………私はね、取り返しのつかない過ちを犯してしまったんですよ。下らない権力に屈し、正義を捻じ曲げてしまった。その所為でこの帝国にとんでもない悪魔を産み落としてしまったのです。
ほら、貴方も知ってるでしょう。鳳巌という男を。彼が殺した人間は、最早私が殺したも同然なんですよ。」