鬼門組支部長経験者 宰淙
彼の最後の仕事は林の中で起こった未解決の通り魔殺人事件である。一人の少女が林の中で遺体で発見された。通報者は偶然山奥まで猟に来ていた男である。鬼門組が駆け付けた時には死後数日が経っていた。通報者が利便な連絡手段を持たず、最寄りの支部に来るだけで数時間を要した事が主な理由だ。
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「……………はいそうです。年端も行かない少女が殺されていたんです。
ええ。こう首を、刃物で一太刀でした。死亡推定時刻はさっきも言ったように、死後数日と言った辺りです。
でね、奇妙な事に、大きな荷物を背負っていたのに、それが荒らされていた形跡が微塵も無いんですよ。つまりです、あれは物取りじゃなくて、ただ
え? 被害者の身元ですか?
………これは他言無用でお願いしたいんです。というのもこれは何の裏付けも無い不確かな情報なのでね。公には身元不明で処理されましたが、被害者の関係者だと名乗る人物は一人居たんです。」
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殺人事件の現場検証を行っていた時、一人の少年が現場に踏み込んで来んばかりの勢いで詰め寄って来た事を宰淙は記憶している。遺体の顔を確認し、その少年は『確かに自分の友人だ』と言った。
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「ええ。その少年は自分を《鳳巌》だと名乗っていました。そして彼は事件の被害者を自分の友人の《鶯蘭》だと言っていました。しかし決定的な確証は得られなかったので、公にはしませんでした。
被害者の身内ですか? 勿論探しましたけど見つかりませんでした。彼女は天涯孤独だったんです。
……………そしてここからは私の罪滅ぼしだと思って聞いて欲しいんですが。実は私達は犯人に辿り着いていたんです。その犯人は非常に凶悪で強大な人間でした。それこそ、鬼門組にすら圧力を掛けられるほどにね。
言っても大丈夫なのか ですって? 勿論ですよ。だって、その犯人はもう死んでいるんですから。」
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「捜査を打ち切れですって!? 本気で言ってるんですか!!?
もう少しで真実にたどり着けるっていうのに、こんな凶悪な事件を揉み消せと言うんですか!!!」
「上からの命令だ。そもそも揉み消すなど人聞きの悪い事この上ない。あの鶯蘭(仮)という少女の死は目的地に向かう途中で林の中の獣に襲われた不幸な事故死だ。」
宰淙達が辿り着いた犯人は一矻地方に本部を構える富豪の息子 《
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「はい。私達は確かに証拠を掴もうとしていました。令状を取り、後は家宅捜査を残すだけという所で上からそう言われました。後で分かった事ですが、その富豪は露骨に辺境や貧民を見下していました。きっと自分達は優れていると思い上がり、自分達の役に立って死ねる事を有難く思えとか考えていたに決まっています。でなきゃ今頃あいつらは檻の中で、私もこんな所には居ませんよ。
それで、結局私は従ってしまったんです。私に直接命令してきた、私の当時の上司だったのですが、その人に『家族を養えなくなるぞ』と半ば脅しを掛けられ、それに屈してしまいました。それが間違いだったんですよ。
間違いだと気付いたのはそれから数年経って、ある事件を聞いた時です。誤解の無いようにして欲しいんですが、私は当時鳳巌に鶯蘭は獣による事故死だと言いました。しかし、鳳巌は自力で真実に辿り着いたんです。知ってるでしょう? その富豪の家が襲われ、吽侏とその家族が殺害されたあの事件を。私はそれをやったのは鳳巌だと考えているんです。
それを知って私は激しく後悔しました。言い訳でしかありませんが、私は直ぐに鬼門組を去り、家族とも別れを告げました。因みに私に命令をした上司もそれ相応の罰を受けたそうです。どうでもいい事ですがね。
……………後これは、誰にも言っていない事なんですが、実は鶯蘭の関係者を名乗る人間は鳳巌の他にもう一人居たんです。
当時は刹喇武道会での実績が認められ、鬼門組の一隊員であり今現在は鬼門組総監をしている《凰蓮》です。」
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凰蓮は鶯蘭の死について一頻り話し終えると、星を見上げながら一つ息を吐いた。彩奈は彼の顔に確かに『やるせなさ』を見た。鳳巌がそうであるように、彼もまた鶯蘭の死よりも我が身を優先した宰淙を悪く思って然るべき人間なのだ。
「……………私が宰淙さんから聞いた鶯蘭の死についての話は此れで以上です。それから話は十五年前まで進みます。」
「!! きゅ、十五年前って確か……………!!!」
「ええ、貴方が虎徹さんから聞いている通りです。寅虎さんの御両親が殺され、繪雅の屋敷が血の海に沈んだ日、そして私が再び鳳巌の存在を認知した日です。」