異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#32 The princess of ogre

「暴力? それはまた野蛮ですね。」

哲郎は少し驚いた様子で言葉を返した。

 

「ええ。これがその生徒の写真です。」

 

ファンは懐から写真を出し、哲郎に手渡した。

その写真にはゴツゴツとした女性の顔が写っていた。恋愛感情の類を持ち合わせない哲郎の目にも別にブサイクには映らなかったが、人相はかなり悪いと感じた。

 

目はかなりつっているし、鼻もまたゴツゴツとしている。そして口には猛獣と錯覚するほど鋭い牙が生えていた。

 

顔つきからも全身が筋肉に覆われているのが分かる。

 

「名前はグス・オーガン。

僕らより3歳上の生徒です。」

「種族は何ですか?」

「「はい?」」

 

「種族は何ですかと聞いてるんです。

亜人族も細分化するとかなり細かく別れると聞きました。

肌は黄緑だし、髪もかなり明るい茶色だ。

おそらくは………」

「そうです。彼女は【オーク族】です。」

 

哲郎の質問にアリスが返した。

 

「それで、この女がいじめをやっているという確かな証拠はあるんですか?」

「証拠はちゃんとあるんです。ただ………」

「ただ 何ですか?」

 

ファンが重々しく口を開いた。

 

「彼女のバックに何やら大きな陰謀(・・)があるとかないとか言われていて………。」

「陰謀? どういうことですか?

詳しく聞かせてください。」

 

 

***

 

 

ファンの話はこうだった。

 

彼女、グスという女はとある学園内の組織の下っ端を務めており、彼女を敵に回すことはその組織を敵に回すも同然である。

だから何者も彼女のいじめに言及できない ということらしい。

 

あくまでも噂の域を出ていなかったが、現実味 という観点で言えばかなり有り得る話だと哲郎は感じた。

 

また、彼女の親もかなりの権力者だが、その素行の悪さでいつ勘当されてもおかしくない状態なのなという。

 

「…そうですか。では、先にその噂の真意を確かめなければいけませんね。

間違いならそれでこちらが出やすくなるし、本当なら、その組織がどれほどのものなのかも知らなければならない。」

 

哲郎は立ち上がり、ファンとアリスに質問を投げかける。

 

「彼女、そのグスという女はどこに?」

「えっ!!? まさか1人で行くんですか!!?」

「もちろんです。この依頼は僕一人で受けたんですから。」

 

それだけを言って哲郎は再び2人に答えるよう催促した。

 

 

***

 

 

哲郎が今いる所はパリム学園の高学年校舎。

その教室の一角にその女はいた。

 

彼女、グスという女は教室のど真ん中で机に行儀悪く膝を組んで座り、友達と思われる女性数人とくちゃべっていた。

 

哲郎が思った通り彼女の五体はかなり筋肉に覆われており、あの馬鹿力に任せて暴力を振るっていたと言われても十二分に納得出来た。

 

服装は制服のシャツの袖をまくっており、そこから丸太のような太い黄緑の腕が見えた。

哲郎はそこから昔 田舎で見たギャル という女性達を連想した。

 

「んじゃ、アタシこれから用事あるから。」

 

そう言ってグスは唐突に立ち上がり、教室を出ようとした。

哲郎は咄嗟に消火栓の裏に隠れてその場を凌ぐ。撒いたことを確認すると、直ぐに行動を尾行に移す。

 

 

グスはしばらく廊下をぶらぶらと歩いていた。ただ普通に尾行していたのではいずれ気づかれるのがオチである。だから哲郎は工夫をして彼女を尾行した。

 

(……どうしたんだ?もう廊下の突き当たりに入るぞ。)

 

そう思いながら懐から学園の見取り図を取り出した。

 

逆さまの状態で(・・・・・・・)

 

そう。哲郎は魔界コロシアムの決勝戦で【飛べない状態】に『適応』して空中に浮くことを覚えた。

 

それを応用して天井スレスレを飛び、擬似的に【天井に張り付いて尾行する】状態を作り出すことに成功した。

 

そして、その尾行も終わりを告げることになる。

 

「グス・オーガン! 失礼します!」

「!?」

 

グスがそう言うと、突如何も無い廊下の床から巨大な扉が出現した。

 

哲郎は まずい! と咄嗟にその閉じかけた扉に飛び込んだ。

間一髪中に入ることに成功したが、そこには既にグスの姿はなかった。

 

とはいえ扉の向こうは下りの階段が1つあるだけなので、哲郎のやることはすぐに決まった。

 

哲郎が階段を降りた先で天井裏に通じていそうな穴を見つけ、これはいいとそこに入った。

 

やっぱり空を飛べるようになっておいて良かった と思いながら、耳を澄ませて状況を確認する。

 

自分がこの空間に入ってきた痕跡は残っていないはずだ。たった今入ってきた穴も踏み台は使っていない。

 

(どうやらこれは、噂は本当らしいな……)

 

哲郎は漠然とそう感じた。でなければ学園内にこんな空間がある説明がつかない。

 

なら、重要なのは彼女のバックにいる組織がどれほどのものなのかということだ。

 

哲郎は天井裏を進み、何か手がかりは無いかと辺りを模索した。

 

そして、彼はその確信を掴むことになる。

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