哲郎達は簸翠と接触し、彼から得た情報によって鳳巌の根城がこの豪羅京の中にあるという推測を殆ど確実なものとした。秘密裏の行動を終えた哲郎達は話を次の段階に移す。それは帝国を狙う敵の《転生者》についての話だ。
「ならば先ず一番に考えるべくは其奴が如何にしてこの国を討ち取ろうとしておるかという事じゃな。」
「………そうですね。やっぱり一番ありえそうなのはその人と鳳巌が組んでいるって可能性じゃないですか? ほら、鳳巌の力というか、武力というか、とにかく手を借りればどうにか出来そうじゃないですか。」
「いや、それはありませんよ。」
『!』
哲郎はそう言って虎徹と彩奈の仮説を否定した。それは自分が得た情報に基づく確信に近い考えだ。
「確かに僕もそう考えていました。そもそもその可能性に賭けて《転生者》にぼろを出させる為に鳳巌にさらわれた訳ですからね。それで、訳あって鳳巌に直接その事を聞いたんです。すると彼はその事を完全に否定しました。」
「……其れを根拠とするのは些か薄いのではないのか。奴が嘘をついている可能性は考えなかったのか。」
「それも考えましたが、可能性は低いと思いました。
理由としては二つ、さっきも言ったように鳳巌の行動が《転生者》の目的とかけ離れている事ですね。」
「其れはつまりどういう事じゃ。」
「虎徹さんも分かっている通り、鳳巌は僕を拉致しました。もし敵の《転生者》がその事を知り、それでいて鳳巌と接触出来る立場にあったなら、
それをしなかった、いや、
「成程な。ならば二つ目の理由とやらを話してみろ。」
「はい。実は鳳巌は━━━━」
哲郎は二つ目の根拠を話し始める前に目を閉じて一呼吸を置いた。彼の脳裏には鳳巌の余りにも無機質な表情が浮かぶ。あれ以上に感情が籠っていない顔を哲郎は生涯で見た経験が無い。
「実は鳳巌は、帝国が討ち取られてもどうでもいいと言ったんです。」
『!?』
「正確に言いますと、《転生者》の思惑通りに行ったとしても国が滅ぶのではなく『首が挿げ変わるだけだ』と言ったんです。《転生者》の目的から考えると、この言葉は少し違和感があると思ったんです。」
《転生者》と鳳巌が関わり合っていた場合、鳳巌は《転生者》の目的を知り尽くしている事になる。そして《転生者》の目的から推測した帝国の結末は『首が挿げ変わる』程度では済まされない事は容易に想像できる。それが哲郎が立てた二つ目の理由だ。
「…………確かに筋は通っておるな。その可能性は五分五分と考えるのが良かろう。
ならば次に考えるべくは其奴が
「………………はい。」
凰蓮はつい先程、今夜鳳巌の根城を襲撃すると言った。それは言うまでも無く帝国の根幹を揺るがす事態であり、その混乱に乗じて敵の《転生者》が何かしらの行動を起こす事は火を見るよりも明らかである。
それが何であろうとも帝国を破滅たらしめる事なのはまず間違いない。
「して、其の
「!! 魍焃…………………………!!!」
魍焃
哲郎はその名前を丸一日ぶりに聞いた。哲郎は最初にその名前をラミエルの口から聞いた。彼女は『転生者には転生者でしか太刀打ちできない』というルールにも似た持論を立てた上でその例に漏れる存在を四人挙げた。そしてその中の一人が魍焃である。
哲郎はラミエルの口から《転生者》の目的が魍焃の首を取る事であるという推測を聞かされた。しかし哲郎は現状においても虎徹にその事を話そうとはしなかった。
(ラミエルさんは
それ程の力を得るか、もしくは皇帝に近付く人脈的な何かを手にするのか、何にせよ正体を暴いてそれをさせない事が最優先だな……………。)
哲郎は武道会に出た時に《転生者》の正体は武道会を観ていた国の重要人物の内の誰かでは無いかという推測を立てている。
(確か候補は《
哲郎は心の中でそう呟いた。
哲郎の予測は当たっている。その八人のうちの誰かに成りすました《転生者》は現在も皇帝 魍焃の首を虎視眈々と狙っている。