異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#329 Battleform of Crab

哲郎は走った。彼が目指しているのは今居る陸華仙の外だ。本来彼等の庇護対象にある哲郎が外を目指している理由は大きく分けて二つ、内部は自分以外の面々に任せて問題無いと考えた事と自分が今求める事は陸華仙の()にあると考えたからだ。

 

(もしこの騒ぎが敵の《転生者》の仕業なら、こんな程度で終わらせる訳が無い!! 絶対に第二、第三と援軍が来るに決まっている!! それを僕が止めなくちゃならない!!!

それにもしかしたら、外に出れば《転生者》の情報を何か掴めるかもしれない!!

 

……………だけど、そうだとすると分からない事が増えるな……………。)

 

哲郎は心の中でこの一件が敵の《転生者》の仕業であり、何かしら状況が好転する事を望んでいた。しかし、その仮定に基づくと説明出来ない事が出てくる。

 

(あの暴れていた大男、どこからどう見てもまともじゃなかった。まるで何かに操られている(・・・・・・)みたいな……………!!

いや、みたいな(・・・・)じゃない!! これが《転生者》の仕業なら絶対にあの人は敵に操られてここに来たんだ!!!

………だけどやっぱり分からない。これが《転生者》の仕業だとして、一体どうやったら人を操るなんて事が出来るんだ…………………………!?)

 

哲郎は敵の《転生者》の能力をそれまでに起こった現象から『高速移動』と『人体を撃ち抜く』という二つの事が出来る能力だと推測した。しかしこの二つの芸当に関連性は無く、果たして一つの能力でこれら二つが出来るのか、哲郎は猜疑心を抱いていた。

そして現在にて更なる謎が増えた。加えて『人を操る』などという更に無関係の現象が増えたのだ。走っている途中にも関わらず、哲郎の頭の中には得体の知れない不気味な印象を覚える疑心が増えるばかりだった。

 

(どう考えてもおかしい。確かに僕だって『回復能力(ダメージへの《適応)》』とか『浮遊(重力への《適応)》』とか『加速(速度への《適応)》』とか、色々な事が出来るようになったけど、それにしたって敵の能力で起こってる(多分)事に全く関連性が無い。

 

……………まさか、敵の《転生者》は一人じゃないって可能性は無いか……………!!?)

 

哲郎達は今まで帝国に潜む《転生者》は一人という前提で話を進めていた。しかしそれは根拠の無い唯の推測に過ぎない事を哲郎はこの時点で漸く理解した。

敵が一人という確証は無いという事実に加え、敵の能力によって起こっている(であろう)現象に全く関連性が無いという二つの要素が哲郎の脳裏に現実的にして最悪の可能性を呼び起こさせた。

 

それは敵の《転生者》は複数いるという可能性である。

 

(……………いやいや、これは今気にする事じゃないな。

今の時点じゃ確認する方法が無いし、一人なら万々歳で、何人も居たとしても対応するしか方法が無い。考えても無駄だ。

それに今気にしなきゃいけないのは━━━━━━━━

 

「!!!」)

 

哲郎の思考は途中で中断させられた。それは彼の眼前にその気にしなければいけない事が広がって(・・・・)いたからだ。

 

「やっぱり来たか……………!!!」

 

哲郎の前に五人以上の男達が現れた。その時点で漸く、哲郎は今自分は陸華仙の門を抜け郊外の森の中に居る事、そしてこの騒ぎがやはり《転生者》の仕業である事が殆ど確定した事を理解した。

その根拠は言うまでも無く、その男達が先程と同様の身体的異常が現れていたからだ。

 

(……………身体中に血管が浮かんで白目も真っ赤に充血してる……………!! あれが《転生者》の能力によるものと見て間違いないよな。

……………もしかして、敵の能力は身体に関係するものなのか? ……………いや、それだとやっぱり残り二つの現象が説明出来ない。やっぱり敵は二人以上居るのか…………………………?)

『ウゴオオオオオオオッ!!!!』

「!!!

(ダメだ!! 今は余計な事を考えている場合じゃない!!!)」

 

この帝国に居る以上、帝国に潜む敵の《転生者》の詳細が最重要事項である事は疑う余地も無い。哲郎もそれは十分に理解している。

しかし現状における最優先事項は目の前の暴徒(被害者)達を如何にして無力化させるかという事だ。それを再確認した哲郎は懐にしまった装備を確認した。

 

(……………麻酔針は後十本。縄は後四、五人は縛れる長さが残ってる。これでこの状況を切り抜けられるか━━━━━━━━)

「グガァッ!!!!」

「!!」

 

装備を確認している哲郎の懐へ男の一人が飛び込んだ。しかしそれが自殺行為も同然である事を男は知る由も無い。

自分の技の射程距離に男が入った事を理解した瞬間、哲郎は男の腕を掴み身体を翻した。男の身体はその動きに巻き込まれる形で宙を舞い、地面へ叩き付けられた。哲郎は即座に男の首筋に麻酔針を刺し、その動きを封じた。

 

「━━━━フゥッ!!

(これで残りは四人。こうやって一人一人襲い掛かってくれれば楽なんだけど━━━━)

!!」

 

単身突撃した男が瞬殺された光景を見て、残りの男達は立ち止まり、哲郎を凝視していた。その行動に出方を伺うような慎重さを哲郎は垣間見た。

果たしてその行動が敵の能力によるものなのか男達の本能によるものなのかは定かでは無いが、状況が悪化した事だけは確かだ。

 

(━━━━やっぱりそう上手くはいかないよな。なんにせよ、やるしかないか━━━━!!!)

 

心の中で一言そう呟いて、哲郎は残りの男達に対して構えを取った。

その構えは身体を半身にし、片方の腕は大きく振り上げ攻撃用に、もう片方の腕は胸の付近で防御用に特化させる《(ガザミ)の構え》と呼ばれる構えである。

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