異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#333 Freezing Prison

哲郎は己の目を疑った。一瞬、自分は夢でも見ているのではないかと、そんな荒唐無稽な錯覚すらする程に目の前に広がる光景は現実離れしていた。そこに立っている人間が事情を知る彩奈や虎徹であったならばまだ理解は出来たかもしれない。哲郎の身を案じ援軍に来る可能性は十分にあるからだ。

 

しかし今、現実という今、哲郎の目の前に立っているのは他でも無い鬼門組の総監(トップ)の凰蓮である。それ程の男が何故(表向きは)帝国の一国民に過ぎない自分を助けに来たのか、哲郎はその理由を理解出来ずにいた。

 

「…………………ふむふむ。状況はやはりあちら(・・・)と同じようですね。見に着て正解でした。」

「お、凰蓮さん……………!!? どうしてここに…………………………!!?」

「今はそれどころではないでしょう。状況の鎮圧が最優先事項です。」

「そ、それはそうですけど━━━━

!!!」

 

哲郎が言葉を切った理由は、男の一人が凰蓮に襲い掛かったからだ。しかし哲郎が恐れたのは凰蓮の身ではない。今までの情報から判断しても彼が不覚を取る可能性は皆無であると確信している。

 

「ま、待って下さい!!! きっとその人は操られているんです!!! 下手に傷付けては━━━━」

「いえ、その必要はありませんよ。」

『ズガァンッ!!!!』

「!!!!!」 「!!!」

 

凰蓮は手に持っていた薙刀を逆手に持ち、石突という刃が付いている部分と反対の部分で男の鳩尾を貫いた。言うまでもなく男の身体は吹き飛び、地面を転がって意識を失った。哲郎はその一連の出来事に少なからず衝撃を受けた。そして凰蓮の下に駆け寄り、抗議の言葉を吐く。

 

「なんて事をするんですか!!!! 」

「何がですか?」

「決まってるでしょ!!! あの人は操られてるだけの被害者です!!! あんな事しなくても捕まえる方法なんていくらでも━━━━」

「操られているだけ ですか。確かにそうでしょう。それは勿論分かっています。

ですが我々はあの男の身元も把握しています。その上でこの方法を取りました。」

「!!?」

「今の男、名は《御禎(みよし)》という連続窃盗犯です。ですから多少痛めつけた所で誰も文句など言いませんよ。

何より傷付けない事に拘って本来の目的が達成できないのでは本末転倒です。」

 

凰蓮の話を聞き終える頃には哲郎は既に返す言葉を失っていた。哲郎の甘さを指摘する凰蓮の言葉は正鵠を得ていた。

 

「……………た、確かに。でもこれ以上下手に動かない方が良いですよ! さっき、僕が追い詰めたら一人の足が爆発したんです! だから━━━━」

「其れも既に把握していますよ。無論、対抗策も講じて此処に来ました。」

「えっ!?」

 

瞬間、哲郎の鼓膜を斬る音(・・・)が震わせた。その音が聞こえた方向に視線を向け、哲郎は激しく驚愕した。残る三人の男が倒れ、その向こうに刀を握った初老の男性が居たからだ。哲郎は刀を持った男性が男達三人を斬り殺したと思い、再び言葉を発しようとしたが直前でそれを止めた。

目の前の光景に違和感を覚えたからだ。

 

(き、斬った…………のに、血が出てない………!!?

峰打ち!? にしては音がはっきりしてたし━━━━━━━━)

「!!!!?」

 

次の瞬間、哲郎は信じられないものを見た。男達三人の身体が瞬時にして凍り付いたのだ。

 

(氷!!!? 魔法の類か!!?)

「こうすれば爆発の心配もありませんよ。驍梔(ぎょうし)さん、上出来です。」

(!? ぎょうし!? その名前、どこかで━━━━

あっ!!)

「お褒めに預かり光栄に御座います。」

 

驍梔

目の前の白髪を逆立てた男の顔を見て哲郎はその名前の正体を理解した。陸華仙 三番隊隊長(交通課)という肩書きを持つ男が彼だ。哲郎はその情報を彩奈の口から聞いていた。

 

「陸華仙の内部でも捕縛した男達(全員逃亡中の犯罪者)の何人かの四肢が破裂しました。」

「!!!」

「しかし我々は直ぐに対処法を見つけました。現在では既に内部での騒ぎは鎮圧されています。」

「対処法。それがあの氷だと言うんですか。」

 

哲郎は凰蓮の理屈に半ば納得がいかなかった。目の前の男達は完全に凍り付いている。どう見ても死亡或いは重傷は免れないと、哲郎の目にはそう見えた。

哲郎の疑問に答えたのは驍梔だった。

 

「何か納得がいかない様子ですね。轟鬼族の肉体はあの程度ではびくともしませんよ。申し遅れましたが私、三番隊隊長 驍梔です。」

「……………哲也です。今のは魔法(妖術)ですか?」

「妖術です。しかし私のものではなく、この刀によるものです。妖具の刀、謂わば妖刀ですね。

総監殿。見ての通り、この場の鎮圧に成功致しました。軽く見ましたが、男の足の負傷も蕺喬殿の手に掛かれば完治するでしょう。」

「そうですか。では早速戻るとしましょう。

……………と言いたいところですが、その前に哲也さん、一つ聞きたい事があります。」

「!?」

 

「……………哲也さん、先程確かに『彼等が操られている』と言いましたね。それも我々が言及する前に。」

「!!!」

「つまり貴方は自力でそれに気付いた事になります。どうしてそれが分かったのですか?」

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