異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#335 Manipulate The Outsiders 2 ~Haziness~

突如として陸華仙に降りかかった謎の襲撃事件は一旦の決着を見せた。哲郎は凰蓮の移動手段である馬車に同乗しその上で様々な情報を聞いた。

まず、陸華仙の敷地内でも森の中と同じような事が起こっていた。隊員達は下手に手を出す事が出来ずにいたが、襲撃者である男達が犯罪者と分かると戦況は一変し、隊員達は攻勢に出てこれを鎮圧した。すると襲撃者の男の一人の足が破裂し隊員が傷を負った。

しかしその予想外の攻撃も身体を凍らせてしまえば無力化できるとすぐに見抜き、氷属性の妖術(魔法)で完全に対応して見せた。

 

凰蓮からそれらの事を聞いた哲郎は自分が乗っている馬車の後方に視線を向ける。そこには荷台があり、氷漬けにされた男達が無造作に乗せられていた。誰がどう見ても凍死体以外の何物にも見えない彼等だが、凰蓮曰く解凍し回復妖術(魔法)を掛ければ即座に完治するらしい。哲郎はそれまでに幾度も見て来た轟鬼族の身体の頑丈さを鑑みてその言葉を鵜呑みにする事にした。

 

「……………それで、本部の方の状況はどうなっているんですか?」

「少なくとも私が出た時には既に殆ど襲撃は鎮圧出来ていました。取り分けて負傷者も居らず、最小限の被害で対処出来たと言って良いでしょう。恐らく今頃は既に事後処理に取り掛かっている頃かと。

補足しておきますと其の襲撃で解放された受刑者も負傷した保護人も居ません。言うまでも無く貴方のお仲間も傷一つ無く。出来る事なら貴方もそうあって欲しかったのですけどね。」

「!!」

 

哲郎は男達との戦闘で負傷はしていない(あったとしても《適応》で回復出来る)。しかし凰蓮の言葉に異を唱える事が出来なかった。凰蓮は言外に哲郎が独断で戦場に身を投じた事を非難している。無傷である事は幸運以外の何物でもないと、少なくとも凰蓮はそう考えている。

だからこそ哲郎は凰蓮の言葉を飲み込むしか無かった。いくら敵の情報が欲しいという大義名分があったとしても今回の行動はいささか軽率だったと言わざるを得ない。

 

(………結局、僕が手にした情報は僕が本部で大人しくしてても分かった事ばかりだったな。この森の事にしてもそうだ。僕が出てこなくてもこの人達が森に来ていれば、それでなくてもあの人達が本部に来た時点で同じ結果になってただろう。

………つまり僕が出て来た意味はほとんど無かったって事だ。戻ったら虎徹さん達に謝らないと)

「……………とは言いつつも私個人の意見としては貴方の行動に助けられたと思っていますがね。」

「え!?」

「貴方が第二陣である彼等をあそこで足止めしていてくれたからこそ私達は迅速に対応する事が出来ました。数分か数秒かは分かりませんが、貴方が稼いでくれたその時間で彼等が罪無き人々に手を出していたかもしれない。

その可能性が一分一厘でもあったなら、其れを防いだ貴方を非難するような真似は私はしたくありません。

尤もこんな事、総監の立場ではなかなか言えませんけどね。」

 

凰蓮は苦笑しつつそう言って馬車を加速させた。因みに驍梔は『私は何も聞いていない』と言わんばかりに目を閉じていた。

 

 

 

***

 

 

 

「……………随分とまぁ、無茶をしおったものよのう。」

「……………はい。」

 

陸華仙へ戻った哲郎を待っていたのは冷めた目をした虎徹だった。哲郎はそれを甘んじて受け入れる姿勢だった。異常事態を報せる半鐘の音を聞いた者は本部で待機していなければならないにも関わらず独断で行動した哲郎を案じる気持ちがそうさせていると分かっているからだ。

 

「じゃが主の目的は分かっておる。此度の騒ぎが敵の仕業と見て情報を得ようと動いたのじゃろう。して、何か得られたものは有ったのか。」

「はい。全く無いとは。」

 

哲郎は襲撃者の男達が明らかに操られている挙動を取っていた事、凰蓮曰く男達は犯罪者である事、それらの事に違和感を覚えた事を順を追って話した。

 

「成程。操られている云々という結論には彼奴等も至っておった。じゃが其れに違和感を覚えたというのはどういう事じゃ。」

「はい。わざわざ犯罪者(悪い人)達を操って襲わせる理由が無いと思うんです。そうじゃないと思い込んだからこそ僕達は下手に手出しが出来なかった訳ですし、何より犯罪歴があるような人を探す事自体が大変な事だと思いましたから。」

「そうか。其処迄分かっているならば敵の大まかな全体像も浮かんでおるのじゃろう。主の口から一つ言ってみろ。」

 

虎徹の言葉に哲郎は一拍間を置いてから答える。帝国に来て長い時間が経っているが未だに敵の《転生者》の全貌は見えていない。しかしそれでも少しづつ前進しているという強い確信をもって虎徹に自分の見解を話す。

 

「━━━━はい。敵がそうした理由はやっぱり身近に(・・・)犯罪者が居たからだと思います。」

「やはりな。即ち敵は此の国の裏社会に精通しておると、主はそう言いたいのじゃな。」

 

哲郎は一つ頷いた。この推測にも確証は無く、敵の正体はまだ朧気である。しかしそれは直ぐに明らかになるとその場に居た全員がそう確信していた。

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