異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#336 Go to the Shambles

鬼門組 陸華仙を襲った謎の襲撃事件の後、哲郎達は本当に(・・・)自分の部屋で大人しく待機していた。しかし何もしていなかった訳では無い。今までに得た情報を統合し出来る限り敵の《転生者》の正体を解き明かそうと努めた。しかしそれも情報から漠然とした概観が浮かんでくるだけで決定的な確信には全く至らない。

その現状に哲郎は焦っていた。何故なら今夜、凰蓮達鬼門組が敵の《転生者》を刺激する行動を起こすからだ。それは鳳巌の根城に奇襲を掛けるというものだ。

 

そしてその時は始まった(・・・・)

 

*

 

「…………………………」

 

哲郎は部屋に備え付けられた布団(ベッド)に横になり、思考を巡らせていた。しかし今はそれも左程意味の無い事では無いかと思い始めていた。どれだけ考えても結論には至らず、漠然とした考えを巡っているだけだ。

少しづつ哲郎は自分が望む結論に至るにはまだ情報が足りないと思い始めていた。

 

そして哲郎は窓の外に視線を向け、眉間にしわを寄せた。窓の外の景色が赤く染まっていたからだ。

 

(……………そろそろか…………………………。)

「て、哲郎さん!!」

「!」

 

外に出ていた彩奈が血相を変えて部屋に飛び込んで来た。哲郎は彩奈の話を聞くまでも無くその理由を察知した。これからの状況を変える事態が始まる時が来たのだ。

 

「ついに始まりましたか。すぐに行きます。どこからならそれ(・・)が見えますか!?」

「は、はい!! ここを出て突き当りの窓から見えます! 大勢集まってますよ!!」

「分かりました!!」

 

哲郎は布団から跳ね起き部屋を後にする。今は思考を後に回しそれ(・・)の始まりを見届ける事が最善策だと理解していた。

 

*

 

「…………………………!!!

確かに大勢いますね……………!!!」

 

哲郎と彩奈は窓の外に広がる光景に圧倒されていた。そこには数十人とも数百人とも思えるような大人数の隊員が居た。しかし彼等は奇襲の要員ではない。要員は彼等の前に居る馬(のような生物)に乗った凰蓮達鬼門組の隊長だ。

そして凰蓮がその場全体に響き渡るような大声を発する。それは彼以外の隊長達に向けられた言葉だ。

 

「皆さん!! 遂に此の時が来ました!!! 今夜此の日、我々鬼門組が鳳巌という帝国に蔓延る巨悪を打ち滅ぼすのです!!!!

敵の総力は未知数!!! 故に全員を捕らえる迄倒れる事を許しません!!!! 此の帝国の明日をより明るくする為に皆一丸となって戦うのです!!! 貴方方の後ろにはこの凰蓮が付いていますよ!!!!!」

『オォーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!』

 

鳳巌の根城への奇襲は凰蓮と隊長数人という少数精鋭で行われる。しかしその場に居た全員が一丸となっていた。哲郎は知らない事だが、鬼門組の若い隊員の中には寅虎がそうであるように鳳巌が起こした事件の被害者も少なくないからだ。

それでなくとも彼等の気持ちは一つだった。帝国の治安を守る使命を負う彼等にとって鳳巌を捕らえるこの任務は帝国の未来を左右する最重要事項だからだ。

 

湧いた声が一頻り落ち着くと凰蓮の目の前に居た一人の男が啓礼と共に声を発する。遂に出発の時が来たのだ。

 

「凰蓮総監殿!!! 我々隊員一同、日々の任務に邁進すると共に総監殿方の生還を心から願っております!!!!」

「ありがとうございます。では皆さん行きますよ!!! 此の鬼ヶ帝国の明日を希望の光で照らすのです!!!!」

 

その言葉と共に凰蓮と隊長達は鬼門組の門を潜って外へ向かった。それを見届けた哲郎は『遂に始まった』と思った。鳳巌が捕らえられるか否かというのは無論の事重要事項だがそれ以上に凰蓮のこの行動によって敵の《転生者》が何かしら行動を起こす可能性が極めて高いと思っていた。

 

「……………い、行っちゃいましたね…………………………」

「はい。じゃあ僕達も動くとしましょう。」

「えっ!? 動くってどこに!?」

「凰蓮さんが鳳巌を攻撃する事で敵も動くでしょう。これは敵の正体を暴くまたとないチャンスなんですよ!!」

「確かにそうじゃな。じゃがどこに向かうか決めておるのか?」

『! 虎徹さん!!』

 

哲郎と彩奈が話している所に虎徹が横から入ってきた。

 

「……………どこに向かうか ですか。そうですね。鳳巌の根城と思われる所に行ってみようと思っていますけど。」

「戯けが。其処は凰蓮の奴に任せておけばよかろう。其れに鉢合わせでもしたら如何にどやされるか分かっておるじゃろうが。」

「! 確かにそうかもしれませんけどそんな事言ってる場合じゃ━━━━」

「其れにじゃ。儂は其処以上に行くべき場所があると思うておる。」

「あそこ以上に行くべき場所?」

「そうじゃ。奴等が鳳巌の根城へ向かい其の不届き者を刺激すると言うならば儂等は別の方向(・・・・)から圧力を掛ければよい。」

「別の方向? どういう意味ですか? はっきり言って下さいよ。」

「物分かりの悪い奴じゃな。決まっておるじゃろう。《皇居》に向かうんじゃよ。」

『!!!』

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