異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#337 The Golden Pandemonium

鬼ヶ帝国皇居 正式名称《逢魔ヶ宮殿(おうまがきゅうでん)》。

それは帝国の首都 豪羅京において鬼門組 最高機関《陸華仙》と双対を成す帝国民の心の拠り所である。その実態は二つの側面で形成されている。

 

一つは皇族、即ち歴代の皇帝(羅王)とその親族が生活する場としての施設。逢魔ヶ宮殿は生活の場であると同時に外敵(いわゆるテロなど)から彼等を保護する堅牢な要塞としての役割も果たしている。

そしてもう一つは政治の運営である。帝国の政治は現羅王(皇帝)を中心に《司法》《立法》《行政》の三つの役割を持った専門の人間達がこれを執り行うのだ。

 

その逢魔ヶ宮殿は外観を除くあらゆる情報が厳重に規制されており、一般の人間では縁もゆかりも持てない(・・・・)事が帝国の暗黙の了解として浸透している。内部の人間以外の例外は鬼門組総監の凰蓮が皇居への立ち入りを許されている。

そして今、その皇居に立ち入ろうとしている者達が居た。彼女達(・・・)は帝国をまだ見ぬ間の手から救い出すという大義名分の下、皇居へ立ち入るという帝国の禁忌を犯そうとしている。

それは帝国に生まれた《転生者》虎徹、そして彼女に助力を求めて外海から帝国に立ち入った二人の《転生者》哲郎と彩奈である。

 

*

 

「……………皇居に潜入する、ですか。」

「そう言ったが、存外に驚いておるな。其処迄荒唐無稽な事を言ったつもりは無かったのだがな。」

 

虎徹の提案に哲郎は怪訝な表情を浮かべ、当の本人は口元に笑みを浮かべていた。外野と化した彩奈は何を言って良いのかわからずおどおどと慌てふためいている。

 

「……………其れとも、主は此れから凰蓮の後を追って鳳巌の根城へ舞い戻ろうと思っておったのか。」

「それが良いと思っていたんですが、虎徹さんの考えは違うんですか。」

「当然じゃ。そもそも何故主は其奴の狙いが鳳巌にあると決めつけておる。」

「え、それはその方が帝国の中枢に入り込めるでしょうし、さっきも言ったようにわざわざ悪い人(犯罪者)を操ったからそう思った訳であって」

「戯けが。其れは其奴の現在地(・・・)の話の根拠であろう。儂が言うておるのは其奴の目的地(・・・)の話じゃ。」

『!』

「漸く儂の言いたい事を理解できたようじゃな。儂は其処が皇居であると睨んでおる。」

 

虎徹の立てた仮説。それは敵の《転生者》は現在は鳳巌の周囲に居るがその最終的な目的地は皇居であるという仮説だ。その仮説は得てして哲郎から反論の言葉を奪うものだった。

虎徹の仮説に基づけば敵の目的は帝国の転覆(≒皇帝の暗殺)という哲郎の仮説とも合致する。彼女の思考回路が自分より優れていると認めざるを得なかった。

 

「━━━━して、どうする。儂は其処へ向かっても向かわんでも良いのじゃ。決めるのは主じゃ。」

「分かりました。行きましょう。

……………ですがどうやって(・・・・・)そこに行くんですか。」

「どうやってとはどういう意味じゃ。」

「決まってるでしょ。ここからどうやって抜け出すか(・・・・・・・・・・)と聞いてるんですよ。皇居に向かうなんて言うならその方法も思い付いてるんでしょ?」

「…………其処迄思いついておるなら容易に想像できるじゃろう?」

「……………やっぱり能力(墨汁)ですか。」

「そうじゃな。儂に付いて来るが良い。主等を皇居へ連れて行ってやるとしよう。」

 

 

 

***

 

 

 

『…………………………』

「何じゃ。驚いて言葉も出んか。」

「ええ。ある意味心の底から驚いていますね。一体これはなんですか。」

 

哲郎達は今、虎徹の案内で人目の無い通路から庭に出て虎徹が用意したそれ(・・)を目の当たりにしていた。哲郎はそれを見て心底怪訝な感情を抱いた。何故ならそれは《組み合わせた材木》以外の何物にも見えなかったからだ。

その材木は四本の支柱で立ち、上部に折れ曲がった柱が付けられていた。それは正に動物の姿だった。

 

「決まっておるじゃろう。今から儂の能力で此れを乗り物へ変える。まぁ見ておれ。」

(……………本当にそんな事まで(・・・・・・)出来るのか……………)

 

虎徹は得意げな笑みを浮かべながら組み合わせた材木へ近づいていく。哲郎は彼女が何をしようとしているのか見当は付いたが、そんなでたらめな事(・・・・・・)が本当に出来るのか半信半疑だった。

その哲郎を尻目に虎徹は爪に溜めた《能力(墨汁)》で材木に《早馬》の文字を書いた。するとそれ(・・)は起こった。

 

『!!!』

「どうじゃ。これ程馬力(・・)があれば皇居迄直ぐに着くじゃろう。」

 

虎徹が文字を書くと材木は後ろ二本の支柱で立ち、前の支柱二本を振り回した。その挙動は正に《早馬》だった。虎徹は自身の能力で材木に『馬になる』事を命じたのだ。

帝国に来てから数日が経ち、未だに本格的な戦闘が起こっていないにも関わらず幾度も虎徹の能力の凄まじさをありありと見せつけられている。

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