異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#349 Juvenile and Garuda 3

凰蓮のその言葉は彼の中にある疑問の全てを端的に表すものだった。哲郎は凰蓮の前に姿を現した時点で既にこのような問いを投げ掛けられる事を覚悟していた。

凰蓮の前に割って入る事は自らの逃げ道を断ち切るにも等しい。最早哲郎()には一歩も引く事は許されていないのだ。

 

「……………分かりました。正直に答えます。

結論から言いますが、僕は鬼ヶ帝国の哲也ではありません。」

「!!?」

 

そう言って哲郎は身に着けていた変身の魔法具を外した。変身の魔法が解け、哲郎の姿は光に包まれ、帝国民の哲也から元の田中哲郎に戻る。哲郎は帝国に潜入してから入浴時以外はこの時しか魔法具を外していない。ようやく自分の本当の姿を人に見せられた事を心のどこかで安堵していた。

 

「……………!!!」

 

言うまでも無く、哲郎の変化に凰蓮は目を丸くさせていた。帝国にも姿を誤認させる類の妖術(魔法)は存在し、凰蓮もその存在を知っている。しかしそれを哲郎のような少年が使っていた事実に驚いていた。

 

「━━━━僕は田中哲郎。海外(国の外)から来ました。」

「……………たなか てつろう……………。それは《姓名》というものですか。

それで一体、貴方のような年端も行かない子供がどのような理由で此の国に立ち入ったのです? 分かっているでしょうが、私は鬼門組の総監(・・)です。言っている意味が分かりますね?」

「……………!!」

 

凰蓮の言わんとしている事は帝国の不法入国についてである。そして凰蓮は帝国の警察組織である鬼門組の総監である。即ちその気になれば何時でも哲郎を逮捕する事が出来るのだ。

しかし哲郎もその状況に対して全くの無策だった訳では無い。帝国に潜入してから今まで温存していた切り札をここで切る。

 

「……………凰蓮さんの言いたい事は分かります。ですが僕は正当な理由(・・・・・)でここに来たんです。」

「正当な理由?」

「はい。これがその証拠です。」

 

そもそもの話、哲郎が帝国に来た理由は国王ディルドーグの依頼である。そして哲郎はそれを証明するものを持っている。それを凰蓮に手渡した。

 

「……………これは、蝋印ですか。」

「はい。それは僕が依頼を受けた国のお城の中でしか出回っていないものです。」

 

哲郎が凰蓮に手渡したのは国王から受け取った証明書である。それに貼ってある蝋印(シーリングスタンプ)がその証明だ。証明書を一通り確認した凰蓮はそれを哲郎に返した。

 

「…………これに関しては後程裏を取っておくとしましょう。ですが不可解ですね。

一国の王とあろう者が何故貴方のような子供にそのような依頼をしたのですか?」

「!」

 

凰蓮の更なる問いは正鵠を得るものだった。凰蓮の目にはまだ哲郎の姿はただの(・・・)人間の少年にしか見えていない。最早全てを包み隠さず白状する他無いと思い直し、口を開く。

 

「…………それとも貴方、唯の少年では無いのでしょうか。」

「………はい。実は━━━━━━━━」

 

*

 

「━━━━成程成程。貴方は《転生者》という存在であると。貴方のその手が治っているのもその能力故である と。

此の解釈でよろしいのですね?」

「……………はい。」

 

哲郎は《転生者》というものの存在、自分がそうである事、《適応》の能力の詳細を順を追って話した。哲郎にとってこの情報は自身が持つ有力なの武器の一つである。それをこの場で開示する事は非常に重要な意味を持つ。

 

「━━━━其の話を聞いた私が荒唐無稽と笑い飛ばしたとしたら、貴方はどうしますか?」

「正直、そう思われても仕方ないとは思っています。ですが後になって後悔しないようにするなら信じるべきだとも思ってます。」

「…………御伽話のようだとは思いますが貴方のその両手、その能力によるものだと言うならば納得出来るのもまた事実です。今は問題にしないとしましょう。

━━━━何より、其れは最早私には関係ありませんからね。」

「!!?」

 

瞬間、哲郎の目には凰蓮の顔から熱が引いたように見えた。そのような錯覚を覚える程に凰蓮の表情から感情が消え、そこに冷徹さが浮かび上がった。

 

「貴方には即刻本部に戻ってもらいます。組の中でなるべく速い馬を用意しますので、其れに乗ってお帰り下さい。」

「!! ま、待って下さい!!!」

「何ですか? 言っておきますが理由も無く私を言いくるめる事など出来ませんよ?

それとも、貴方をこのまま我々の作戦に参加させる理由があるのですか?」

 

凰蓮の表情には冷徹さの中にも哲郎の身を案じる善なる感情が含まれていた。それを理解しても尚哲郎には一歩たりとも引き下がる選択肢は無かった。そして哲郎は凰蓮を説得する為に最後の切り札を切る。

 

「……………実はそうなんです。

このままだと凰蓮さん、鳳巌とぶつかりますよね? 実はそれを狙っている人が居るんです。」

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